廻天
雨はザアザアと降り続け、まるで僕を嘲笑うかのようだった。
僕は街の片隅の裏路地で座っていた。ルシアさんとノージスは死んだ。死んでしまったんだ。
握りしめた宝石は滲むような光を放ちぼんやりと僕の額を照らしていた。
「ヒイラギくん。」
ツァイトの声がした。
「頭を上げろとは言わない。天使は孵化した。限りなく完全体に近い姿で。カルナはどうしたんだ?」
……………
「そうか。死んだのか。」
雨はより一層強まる。
「ヒイラギくんその握りしめた手を出してくれ。」
僕はルシアさんの残した宝石を持つ手を前へ突き出し、開いた。
「聞いてくれ。」
そう言いながら、ツァイトさんは僕の手に手を重ねる。
「これは。カルナが残してくれたんだろ?」
僕は頷く。
「彼女の加護は転生。多分これは残る加護を全てこの宝石に注いだんだろう。」
重ねた手のひらから光が漏れ出す。
「………ツァイトさん……何を……?」
「カルナと同じことをした。」
ツァイトの髪は黒く染まり、光輪は崩れ落ち、翼は朽ちていく。
「なんで……そんなことを………」
ツァイトは微笑んだ。
「やっと顔を上げてくれたね。君にしか頼めないことなんだ……………カルナを………救ってくれ。」
「………だって、ルシアさんはもう………」
「僕の加護は時間なんだ。この時間を中心として君が転生する少し前までは戻れる。君の手で、因果律を歪めるんだ。これは神の複製である。人間の君でないとできない。」
「助けられるんですか? ルシアさんをノージスを。」
「あぁ。」
「……………やります。」
「ありがとう。ヒイラギくん…………ごめん…そろそろ時間みたいだ。」
「任せてください。ツァイトさん。ルシアさんを助けて見せます。」
「じゃあ。最後に…………少しダサいかもだけど。決意ができたらこう唱えるんだ………
“廻天”
第一章 完




