第18話
「なんじゃ、この可愛い少年は!?」
(アリシア姫・・目が輝いています・・アクタス君がゆで上がりそう・・。)
「わ、我が輩は、その、セシルの親戚で、・・。」
「アクト君です。」
しどろもどろになるアクタスを、セシルがフォローする。
だが、フォローの必要は特になさそうだった。
「完璧じゃ。ちょうどよい背丈にゴシック調のファッション、少年ボイスに似合わぬ我が輩しゃべり。わらわの理想じゃ!!」
(アリシア姫ってもしかしてショタコ・・)
いや、これは、たぶん触れなくていい案件だ。
「アクト、とは、なにやらどこかで聞いたような懐かしい名前じゃの。なんじゃ?遊びに来ておるのか?」
「身寄りがなくて、今は一緒に暮らしています。」
セシルが答えると、アリシア姫は、一瞬考えて、それから腕の中のアクタスに向かってにっこりと微笑んだ。
「それならば、王宮でわらわと暮らさぬか?」
「へ?」
「・・え?・・えええええ??」
呆けた顔で返事をするアクタスとセシル。
(いや、彼、あなたをさらった魔王ですよ?)
とものすごく引っかかるのだが、言えない。
「身寄りがないのじゃろう?そなたは、ルイスで手一杯のはずじゃ。わらわについてくれば生活には困らぬし、今のわらわには癒しが必要じゃ。」
いや、彼はその癒しに絶対ふさわしくない人物なのだが。
しかし・・
セシルは考える。
(正体はともかくとして、見た目とか様子はまあ、確かに癒されるわよね?闇の魔力もないのだから、問題はない・・のかしら?)
「だめか?」
アリシア姫が潤んだ瞳でアクタスを見つめる。
「アリシア姫は強い男を求めているのだろう?」
アクタスが拗ねたように言う。
アリシア姫はやや目を見開いたが、まっすぐに答えた。
「そうじゃな。わらわは一人娘ゆえ、次の国王にふさわしい強い男を求めておる。一人、いたのだが・・。」
とアリシア姫はセシルをちらりと見た。
「わらわは、わらわを愛してくれる男でなければ嫌じゃ。だからもう少し探すことにした。」
もう、荷物扱いはこりごりじゃ、と寂しげに笑うアリシア姫は、以前よりちょっと儚い。
「・・良いのか?姫の側にいても。」
アクタスは熱い瞳で見つめ返す。
「もちろんじゃ!そうと決まれば準備をせねば。明日、迎えに来るから待っているのじゃぞ?」
「はや!ちょっ!」
アクタスの言葉を聞くや、それを了承ととったアリシア姫の動きは早い。
(準備って何だろう?)
セシルは若干不安に思ったが、アリシア姫が留まるはずもなく、侍女を引き連れてさっさと出ていってしまった。
「・・セシル。」
アクタスが物憂げに呟く。
「我が輩は今、愛とアイデンティティの狭間で揺れておる。」
「・・アクタス君。」
セシルは気遣わしげにアクタスを見た。
「すっごく悩んでいることだけは分かるので、相談にのりたいのですが、もう少し分かりやすく説明してほしいです。」
アクタスは深いため息をついた。




