第17話
「相変わらず狭苦しい家じゃの。」
アリシア姫が言う。ただ、声には覇気はない。
「それで、今日はどんな?」
セシルとしては、早く終わりたい訪問。あんなに楽しみにしていたアクタスは、アリシアが来たとたん、部屋に閉じこもってしまった。
ドアの隙間は先ほどから開いているが。
「わらわは忙しいのじゃ。この、わらわが言い寄っておるのに、なびかない男に構っているほど暇ではない。ルイスはそなたにくれてやることにした。」
「はあ・・。」
(これが捨て台詞かあ。)
内心そう思いながら気のない返事を返すと、アリシア姫は咳払いをした。
「それで、じゃ。少し付き合ってもらうぞ。・・入れ。」
彼女の言葉と共に入ってきたのは、姫の侍女とおぼしき5名。
(姫の家じゃないんですけど?)
と心の中でつっこみをいれたセシルに一切構わず、アリシア姫が一言、
「やれ。」
と告げると、
「失礼いたします!」
一糸乱れぬ動きで、彼女たちはセシルの服を脱がせ始めた。
「や、なに、え?」
パニック寸前のセシルの後ろで、バタン、とドアの閉まる音。
(やっぱりアクタス君は信用できるな・・。)
意識の片隅で妙に冷静にそんなことを考えていると。
「あら、意外に着やせするタイプですのね。」
「髪も艶があってウェーブ具合もちょうどよろしいですのね。」
「お肌もふわふわでいい感じですわ。」
「思いきってこれくらいのドレスでいかがでしょう。」
「メイクはナチュラルな感じで良さそうですわ。」
五人の侍女さんたちは、そんなことを口々に言いながら、今度はセシルに持ってきたドレスを着せ、メイクを施し、髪を下ろして整えた。
「「「「「出来上がりですわ!!!!!!」」」」」
(一体何が・・。)
「うむ。まあ、これなら、わらわのプライドもセーフじゃ。」
なにやら、納得した顔のアリシア姫。
「着飾りもせず色気もないそなたのような女に、わらわが負けるはずはない。番だかなんだか知らぬが、男の心をつかむのなら、それ相応の努力があってしかるべきじゃ。・・今晩にでも、そのままペロリといただかれてしまえ。」
(前から思ってたけど、ルイスとアリシア姫って結構似てるわよね?)
思い込みの激しさも、行動力も。言葉のチョイスも似ている。
セシルにはついていけないが。
(私たち、あくまでお友だち、なんだけどなあ。)
だが、王室の侍女だけあって、鏡に映された自分は別人のようだった。
アリシア姫なりに、応援しようとしていることは分かるので、余計なことは言わないことにする。
「ありがとう、ございます。」
「ふん。」
アリシア姫は、そっぽを向くが、口元はにやけている。
(悪い人じゃないのね。ちょっと可愛いし。)
「・・そういえば、先ほどドアの閉まる音がしたの?ルイスはまだ王宮のはずだが、他にだれかおるのか?」
「あ。」
と言うまもなく、アリシア姫が部屋のドアを開け放つ。
その先には、スーツにマントで精一杯正装したアクタスが立ち尽くしている。
(ドアが外開きでほんとに良かった・・!)
アリシア姫は、思い付いてから行動までが異様に早いのである。
「・・いい。」
アリシア姫がぷるぷる震えながら何か言う。
「・・え?」
びくびくしているアクタス。
しばしの沈黙の後。
「可愛いいいいい!!!」
真っ赤になった5歳児姿のアクタスを抱き締めて、我を忘れたかのようにほおずりするアリシア姫に、セシルのみならず、侍女たちも、その場で固まった。




