行商人と王子様、エレは何も言いません
こんにちは。
前回のおさらい。エレの家は行商人が壊した。以上。では、続きをお楽しみください。
昨日とおんなじ、白と金色と赤のお部屋。
癖毛が愛らしさを出している金髪の少女。顔立ちは、誰もが美人というと思う。
わたしと目が合うと、溜まった涙を引っ込めてパァァと表情を明るくする。
どうして、イシュ……わたしのおともだちがここにいるんだろう。
理解ができない事があっても、動じずにいないと。
鎧を着た人が、王子様に何か言っている。
「……そのお友達は、君がいないから心配になって探していたんだって」
「そ、そう、なんですか」
おともだちが、見るからに上品なドレスを着ている。そこに触れないんだね。できればこのまま触れずに忘れてもらえないかな。
ところで、その、ふくよかな異国の男の人が行商人なのかな。なんだろう。利益しか考えていなさそうに見えるのはわたしだけなのかな。
確実に言えるのは、反省はしていないお顔。むしろ、自分は全然悪くないと思っている感じが滲み出ている。
わたしも、頭ごなしに行商人が悪いなんて言わないよ。ちゃんと状況とか聞かないと、悪いかどうかは言えない。
そんな事ができればだけど。
「殿下、どの商品の取引をお望みでございますか? 」
ここへ招かれたの、商品が欲しいからと思っているの? 呆れるほどの金好きなのかも。
王子様は、笑顔のまま。張り付いた笑顔。全く感情が出ていない。
「悪いんだけど、今日呼んだのは商売に関する事じゃないんだ。先日の事故について、話を聞きたいんだ。何があったのか、嘘偽りなく話してもらえるかな? 」
すごい。なんか圧力みたいなの感じる。これは敵に回したくないの。
「強風で荷馬車が傾いて、荷物が落ちたんですよ。聞けば、あそこはあの家の敷地内らしいじゃないですか。損害賠償を払えとかそこの騎士に言われましたが、こちらが商品にならなくなった荷物の損害を支払ってもらいたいですよ」
それ、わたし悪くなくない? というか、完全に自業自得じゃん。なに被害者面しているんだろう。人の家の敷地跨いだ上に、商品で家壊して、金払って、ふざけているにも程があるよ。
こっちは、住む家が二度と帰らないんだよ。これ、謝罪で済む問題じゃないのに。
しかも「あの家の住民は、一生借金生活ですなぁ。」なんて笑っている。相手が一般庶民だからって、それは有り得なくない?
「そっか。一生借金生活がお望みなのか」
「ええ、そうですよ。私めの大切な商品を壊したんです。そのくらいは、当然の罰ですよ」
なんで、そんなに笑っていられるんだろう。自分の身の安全、口を開くごとに消えているのに。お金の安全かもしれないけど。
「殿下、頼まれていたものを用意して差し上げました」
お姫様だ。頼まれていたもの? なんなんだろう。
見せてきたのは、紙。うっすら透けている、赤い紋章。
お姫様が、王子様に紙を渡した。それが、あの行商人に大打撃与えられるものなのかな。王子様の手腕、間近で見ている。
「おお、私めのために、損害額を計算してくださったのですか。感謝の印として、次回の取引は割り引かせていただきますよ」
うん。損害だよ。損害額。だったよ。書かれていたの。少しみれたけど。とんでもない額の損害。慰謝料とか入っているんだろうから。
ニコニコとした行商人は、これがわたしに下されるものだと疑ってもいない。
王子様は、肯定も否定もせず、にっこりと笑うだけ。
「一生かかっても払えるか怪しいね」
「そうですよね。たかが庶民。貧乏人に、私めの商品の賠償など、一生かかっても払えませんよ」
「一千兆」
おお! という感じで、行商人はキラキラとした表情を浮かべている。そんなお金があれば、一生暮らしてもあまりそう。
この王子様って、もしかして性格悪いのかな? そう思う光景。隣を見ると、満面の笑みを浮かべた王子様がいるんだ。
そして
「君に払ってもらうよ」
と言った。行商人の方を見て。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白いと思いましたら、ぜひ笑顔になってくださるとうれしいです。では、次回もよろしくお願いいたします。




