77.グループ通話
『東北の方でも見つかったわ。しかも大きな神社だけでなく、山奥のただの祠にしか見えないような小さな神社にも例の紋章が刻まれていた』
いま俺は、響、凍華、友里、亜美そしてもう一人‥‥
『こちらも同じく。流石は日本を代表する神の一柱‥‥あらゆる場所で祀られている。春海殿、これら全てに札を設置するのは難しいかと』
そう言ったハイド・アサシンこと夜霧忍を含めた6人でグループ通話をしていた。当然話題は件の八咫烏を祀る神社探しの件である。
『八咫烏は天照大御神の直属の眷属なれば、かの主神が祀られる場所では八咫烏も同時に祀られておりまする。それを全て探し出すのは、時間と労力がかかりまするぞ』
「ええ、だから当初の予定だった日本中で結界を張る案は諦めるしかないわね。となると、もう一つの方法を試しましょうか」
俺はそう言って小さなホワイトボードにもう一つの案を書いてそれを見せながら説明していく。
「まず、八咫烏がいる付近で結界を発動させて八咫烏を攻撃。そしてそれを嫌って逃げた八咫烏を特定の地点で待ち構えて通過するタイミングで結界を発動させて八咫烏を結界内に閉じ込める。そうすれば八咫烏と日本中の神社のパスを切れるわ」
『それにも問題は多いわね』
俺が説明すると、友里が口を開いた。
『まず、八咫烏に攻撃するのは誰がするかだけど私は無理よ。一度戦って勝てる相手と思われてるから逃げることはない。それとどこで奴を待ち構えるかよ。奴を閉じ込める以上、その場所が決戦の場所よ。色々と考える必要があるわ』
「場所については決まってるわ。決戦の場所はここ、港湾都市よ」
『あの‥‥なぜここなんでしょうか?』
恐る恐るそう言った亜美の言葉に、全員が口を閉じて俺の言葉を待っている。
「奴はグルグルと日本中を周回しているみたいだけど、何故か一日に一回この都市の上を必ず通る事が分かったわ。ただ毎日決まった時間で通過するわけではないから、奴を追い立ててある程度通過するタイミングをコントロールする」
『それで、追い立てる役はどうするの?僕は空飛べないし、友里も無理なら誰がやる?』
「それならザシエルにやらせればいいわ。あれなら八咫烏にも追いつけるでしょうし。まあ、頼んでみない事には何とも言えないけどね」
『では、進展し次第また話すという事でいいかしら?私これから飛ばなきゃいけないのよ』
どうやら友里はこの後すぐに偵察任務がある様だ。便利な能力を持つと大変だなぁとしみじみ思う。
「なら、今日はお開きにしましょう。また何かあれば連絡するわ。それじゃあ」
俺はみんなにそう挨拶してから通話を切った。
「聞いてたでしょ?それで、返答は?」
俺はそう言って窓際の方を向くと、若い青年姿のザシエルがアイスコーヒーの入ったグラスを片手に窓際の壁に寄りかかって立っていた。
「ああ、別にいいぜ?それぐらいやってやるよ。正直、あの野郎のせいで自由に飛べなくてムカついてんだ」
ザシエルはそう言ってコーヒーを一気に飲み干した。そしていつもの烏の姿になると窓枠に止まった。
「悪いが俺はもう行かせてもらうぜ。これからまた中国に飛ばないといかん」
「あなたなら大丈夫だと思うけど一応気をつけてね」
「おう!嬢ちゃんもな!」
ザシエルはそう言って窓から飛び立った。そして入れ替わりでゼルが部屋に入ってくる。
「おや?ザシエルはもう行ったのかい?」
「ああ、また中国に向かうらしい」
男に戻った俺がそう答えると、ゼルは多少呆れた表情を浮かべる
「ふむ‥‥相変わらず落ち着きないねぇ‥‥まあいい。秋司、数日ほど店を閉めるから、今度の休みはどこかに遊びに行ってくるといい」
「ん?何でまた店を閉めるんだ?」
「前に、やりたい事があると言っていただろう?実は家の増築をしようかと思ってね」
「増築ぅぅぅぅ!?なんで!?もう既にかなりの部屋数あると思うけど‥‥」
「作るのは上じゃなくて、下の方‥‥地下室さ。最近、かなりきな臭くなってきている上、魔力探知などをされないようなちゃんとした秘密の部屋でも作ろうかと思ってね」
「何か‥‥本格的に変な悪の組織かレジスタンス見たくなってきたな‥‥」
「世界を敵に回してる時点でレジスタンスってのはある意味間違ってないんじゃないかな?」
「何も言えねぇ‥‥」
「とりあえず、地下室を作っておけばいざという時に隠れる事もできるからね。はいお小遣い」
ゼルはそう言って三万円を渡してきた。
「いや、相変わらず多いな‥‥」
「無いよりはいいだろ?それとも、ネルに渡されてるカードを使うかい?一度使ったら大喜びでお代わりを渡されるよ?次は真っ黒なカードかもねぇ?」
「謹んで頂戴致します」
ネルの気持ちは嬉しいのだが、真っ黒なカードなんざ恐ろしくて持ちたくない。
「そういえば、駅前のゲームセンターに君がよくやっている例のゲームが導入されたらしいよ?ショッピングモールが火事になって以降、やる場所も少なくなったんだろ?」
「確かにそうだな、一応学校近くにもあるけど」
すぐ近くでダンジェネが出来る場所があるのはありがたい事だ。今度の休みに行ってみることにしよう。
「本当にあったわ‥‥」
最寄りの駅の近くにあるゲームセンターで、俺は若者達が集まっているダンジェネの前でそう呟いた。そして俺の目線の先には得意げな表情を浮かべる男性と「負けたぁ!」と叫びながらゲームから下りる男性が見えた。そしてそれをギャラリーが周りから囃し立ててる感じなのだろう。
「凄いな、あのプレイヤー‥‥さっきから受けた挑戦に全部勝ってるぜ?」
「ああ‥‥もう5人か?点数も満点近い数字出し続けてるしな‥‥‥」
そう話すギャラリーに対してゲームの上にいる男性は得意げに口を開いた。
「俺に買ったら、自販機の飲み物でもアイスでも奢ってやるよ!他に誰か挑戦する奴いないか?」
「すいません、一曲お願いしていいですか?」
そんな男性に俺はそう声をかけて、ゲーム機にお金を入れた。




