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死に戻りする少年は、弱すぎる身体でダンジョンを攻略する  作者: タ・ケル


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第7話「死の一撃」

第7話

ご愛読いただきありがとうございます。

ゴブリン・チーフが棍棒を構えた瞬間、空気が重く沈んだ。

ゴブリン・チーフは俺の肩ほどの身長しかない。

だが、筋肉が異様に盛り上がり、横幅が広い。

まるで“圧縮された巨獣”のような体格だ。

筋肉の塊が皮膚の下で蠢いているように見える。


その体格からは想像できない速度で、ゴブリン・チーフは突っ込んできた。

地面が揺れ、風圧が肌を叩く。

俺は横へ跳ぶようにして避けた。

棍棒が地面を砕き、石片が飛び散る。

(……速い。重い。強い)

胸が苦しい。

呼吸が浅い。

足が重い。

腕が震える。

それでも――俺は距離を取る。

距離を取って、突く。

距離を取って、突く。

距離を取って、突く。

だが、ゴブリン・チーフは怯まない。

浅い傷など気にも留めない。

横幅の広い筋肉の塊を揺らしながら、何度でも突進してくる。

棍棒が振り下ろされるたび、空気が裂け、風圧が頬を切る。

(……怖い。怖い。怖い)

だが、止まれない。

俺は後退しながら、呼吸を整え、タイミングを見計らい――

「ッ!」

短剣を突き出す。

刃がゴブリン・チーフの肩に刺さる。

浅い。 浅すぎる。

ゴブリン・チーフは怯まない。

そのまま棍棒を横薙ぎに振る。

俺は地面を転がるようにして避ける。

肩が岩にぶつかり、激痛が走る。

(……くそっ……!)

息が荒い。

肺が焼けるようだ。

足が鉛のように重い。

腕が震えて、短剣が安定しない。

それでも――突く。

距離を取って、突く。

距離を取って、突く。

肩。 腹。 太もも。

浅い傷が蓄積していく。

だが、ゴブリン・チーフは倒れない。

むしろ――怒りで動きが速くなっている。

(……強すぎる。これ……勝てるのか?)

視界が揺れる。

汗が目に入り、前がぼやける。

足がもつれそうになる。

それでも――突く。

距離を取って、突く。

距離を取って、突く。

やがて―― ゴブリン・チーフの動きが、ほんのわずかに鈍くなった。

その瞬間、俺は胸の奥で小さく希望が灯るのを感じた。

(……いける。ついに弱ってきた……!)

だが―― 次の瞬間、その希望は“罠だった”と理解する。

ゴブリン・チーフの黄色い縦長の瞳が、ゆっくりと細められた。

まるで、「かかったな」 と言わんばかりに。

そして―― 口が裂けるように開き、獣の歯を見せつけながら、ニタァ……と笑った。


その笑みは、 ただの敵意ではない。

人間を嘲笑う知性。

弱ったふりをして誘い込む悪意。

殺す瞬間を楽しむ残酷さ。

そのすべてが混ざった、気持ち悪い笑みだった。


背筋が凍る。

心臓が跳ねる。

足が止まりそうになる。

(……誘われた……!)

気づいた瞬間にはもう遅かった。

ゴブリン・チーフの左手の爪が、俺の腹に深く突き刺さった。

「――ッッ!!」

爪が皮膚を破り、肉を裂き、腹の奥へと食い込む。

熱い。

痛い。

焼けるような痛みが腹を貫く。

呼吸が止まる。

声が出ない。

視界が白く弾ける。

ゴブリン・チーフは、俺の腹に爪を埋めたまま、顔を近づけてきた。

鼻息が荒く、腐った肉のような臭いがかかる。

そして―― また笑った。

ニタァ……と。

その笑みは、「お前はここで死ぬ」 と告げているようだった。

(……死ぬ……!)

腹の中で爪が動くたび、全身が痙攣するほどの痛みが走る。


だが―― ゴブリン・チーフの動きは止まっていた。


俺の短剣が、ゴブリン・チーフの喉元に届く。

最後の一撃。

死と紙一重の一撃。

短剣が深く刺さり、 ゴブリン・チーフは喉から濁った音を漏らし、 ゆっくりと崩れ落ちた。

爪が腹から抜ける。

その瞬間―― 血が一気に溢れ出した。

温かい液体が腹を濡らし、服を染め、地面に滴る。

(……まずい……これは……死ぬ)

視界が揺れる。

膝が崩れる。

呼吸が浅くなる。

ゴブリン・チーフの身体はゆっくりと消えていく。

地面へ吸収されるように。

だが、俺はそれを見る余裕がなかった。

腹の穴から血が流れ続ける。

手で押さえても止まらない。

(……助け……助け……)

そのとき―― 少し先に、何かが落ちているのが見えた。

ガラスの瓶。

透明な液体が入っている。

(……ドロップアイテム……?)

俺は這いながら、最後の力を振り絞ってその瓶に手を伸ばした。

指先が瓶に触れる。

握る。

コルクの蓋を歯で引きちぎる。

そして―― 一気に飲み干した。


液体は冷たく、喉を通った瞬間、身体の奥へ広がった。

次の瞬間―― 俺の身体は光に包まれた。

腹の傷口が閉じていく。

身体中の傷も消えていく。

痛みが消える。

息が整う。

力が戻る。


完全に治った。


完全に回復した。


(……これは……再生薬……いや……某RPG的にはエクスポーションと呼ぶべきか)


俺はしばらくその場に座り込み、自分の腹に触れた。

傷はない。

出血もない。

ただ、血に染まった服が破れているだけだ。

(……生きた……)

薄暗いボス部屋の中で、 俺は静かに息を吐いた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

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