準備
毎日戦い、撃ち、倒れ、訓練してきた。最初は持つだけで震えた銃は、だいぶ様になってきていた。気づけばあれから5ヶ月過ぎていた。最近はここの生活も慣れてきている。あの後ミナミは元気に''無傷で''帰ってきた。元気なのはよいことだ。ミナミとは打ち解けて今となっては姉と妹みたいになれた。相変わらず上官の訓練は辛く、苦しい。ほぼ毎日ベッドに倒れ込む日々だ
そんな日々を断ち切るかのように、上層部から通達が来た
上層部「イサナとエルナ、他20名で1ヶ月後にチームとして戦場に立ってもらう」
全員がフォークとナイフを置き、その場で硬直していた。ミナミとシア、私を除いて。
イサナ「上層部、いきなり過ぎないか!?」
エルナ「命令なので従うしかありませんね」
イサナ「それはそうだが、君は理不尽と思わないのか?」
理不尽、考えたこともなかった
エルナ「命令ですのであまり…」
上官はふっと笑った
イサナ「君は不思議だな」
不思議?''当たり前''じゃないのだろうか。
イサナ「そういえば22人のチームだから今回は4〜5人編成で5部隊に分けた。一応仮なので何か改善点でもあれば教えてくれ」
上官は地図とともにチームのメンバーを教えてくれた。今回はナギ、ミナミ、エルナ、イサナ、そして新しく来たシアの5人らしい
エルナ「シアがいるのが意外でした。どんな意図があるんですか?」
イサナ「近接武器で主に戦うのが私とナギだけだからな。シアは元王族直属の騎士団長だから近接に向いていると判断した」
エルナ「元騎士だったんですね、知らなかったです。しかし、本当に戦えるのでしょうか?シアはいつも幼いというか、シアが戦うインスピレーションが湧きません」
イサナ「私も不安だったが、上層部が断言していてな」
上層部が言うならきっと理由があるのだろう
エルナ「私の疑問点はこれだけです。近接でお力になれなくてすみません」
イサナ「いいのだよ、人には向き不向きがあるんだ」
''人''には向き不向き、その言葉が私の胸に引っかかった。私は本当に戦闘に向いているのだろうか
そんなことを考えながらいつもの食堂に着く、しかし目的は食事とは別にある
シア「エルナ上官!」
シアはさも嬉しそうにレイピアを手入れしていた。
エルナ「ああ、シアね。通達のことは聞いた?」
シア「聞きました!やっと私もエルナ上官もついに初陣ですね!私いっぱい活躍しちゃいます!」
エルナ「相変わらずの元気だねー」
見てるこっちが疲れるくらいに。
ナギ「私も同じグループなので、私の足を引っ張らないように」
2人「わかりました上官(!)」
そうか、上官だけじゃなくナギ上官も同行するのか。言葉遣いが難しい…
ミナミ「みっ皆さんよろしくお願いします…」
イサナ「さて全員揃ったことだし、作戦会議と行きますか」
イサナ「まずは全員の主な武器と補助の武器の確認からとしよう」
4人「把握!」
イサナ「まずはナギ。君は近接武器が得意なのでグレートソードで合っているな?」
ナギ「ああ。」
3回くらいナギ上官の練習を見たことがある。人間離れした怪力を持っている。初めて見た時は思わず目を疑った。
イサナ「次に私。私は盾使いでもあるのでアーミングソード。」
上官はなんでもこなせてしまうから盾と剣2個持ちの方がよいと会議で満場一致で決定した。恐るべし上官
上官は私の援護の役割も兼ねている
イサナ「そしてミナミ。ミナミは遠距離型だからスナイパーライフルだったな」
臆病なミナミなので近接には向かないらしい。確かに銃の設計士なら銃の扱いに慣れているからいいだろう
高所からナギ上官の補助だ
イサナ「次にエルナ。エルナはアサルトライフルだ」
私は射撃が得意で、状況判断も早い。そのため前線にも援護にも回れるアサルトライフルがいいと上官に言われた。戦術以外でももう少し褒めて欲しいものだ
私はナギ上官の右側で戦う
イサナ「最後にシアだ。シアはレイピアだったな」
シア「はい!」
シアの訓練は1度だけ見たことがある。
シア「やぁっ!えいっ!」
あの幼い声からは信じられないくらい精度が高く、可憐な動きをしている。高度すぎて私には真似出来ない。
シア「エルナさん!今のどうでした!?」
エルナ「とても良かった。これからも精進するように」
とてもで済むレベルではないが、一応上官だ。威厳を保たなければ
シア「はい!」
とにかくシアは強い。さすが元王族直属の騎士団長だ
イサナ「認識のズレはあったか?」
4人「ありません」
イサナ「では、次に補助の武器を…」
その後確認し終わり、イサナ上官の「絶対に持ち場を離れるなよ」という言葉で会議は締めくくられ、いつもの生活に戻…れなかった
イサナ「…。」
エルナ「戦うとは、そんなに怖いことでしょうか?」
イサナ「当たり前だ。自分が死ぬかもしれない、だが、周りのみんなを失うことの方が私は怖いんだ」
周りを失うことはそんなに怖いのだろうか?
私には理解できない
この頃の私は、変わりがない''人''のことをまだ分かっていなかった、いや、理解したくなかった
エルナ「自分が生きていればすぐ代わりが見つかりますよね」
上官は苦しそうな、そして悲しそうだった。
長い沈黙の後、上官は言った
イサナ「君がそんな奴だとは思わなかった」
上官は後ろを向いて、震えた声で言った
イサナ「……アキはそんなこと言わなかった」
何を期待していたのだろう
その後、上官は静かに部屋を出た。
いつもは力強いその足取りが、少しだけ竦んでいた気がした。
上官はそれから私を避けるようになった。それは1ヶ月後の戦場へ向かう日になっても変わらなかった
〜日記〜
上官の口数が減った
ミナミとシアは通常運転だ
戦いが間近になってきた
失うって何?
3話をご覧頂きありがとうございます!
今回はイサナとエルナのすれ違いが起きてしまっている話でした。これからの展開に期待してください!
次回予告
戦いの始まり




