何故
この日から私の運命が少しずつ狂い始めた
鐘の音が鳴った。起床の合図だろうか、心地よい風を感じながらベッドから起きる
エルナ「ふぁ〜眠っえ、まだ外薄暗いですよ?」
イサナ「おはよう、エルナ。ああ、軍人の朝は早いんだ。よく眠れたかい」
そうだ、上官がいた。恥ずかしい。
エルナ「あ、上官!お恥ずかしいところを…」
イサナ「気にするな。これから毎日共に過ごすのだから、そのくらいのことを気にしていては生活できんぞ」
上官は茶化して言ったのかもしれないが、私にとってはまだ受け止めきれない現実だった。しばらく硬直していると、
イサナ「今日のメニューは朝から晩まで走り込みだ。ご飯はあるから安心しろ。今日も元気に頑張ろう!」
エルナ「あっ朝から晩まで!?それって何時間…」
宣言通り、きついメニューだった。寝ておけばよかったなぁ…
イサナ「朝食をとったら入口で集合だ。期待してるぞ、新人」
上官は楽しそうだが、こちらは気が気ではない。訓練と言っても、1日3時間の運動程度だ。こんな過酷なのは初めてだし、戦場に出る前に死ぬんじゃないか?
とはいいつつも食べ物の誘惑には抗えない。匂いにつられてあっという間に食堂へ
うーむ、やはりいい匂いだ。作っている人は一流の料理人か?レストランで働いた方が良い気がする。
先に美味しそうなご飯を食べている人がいる。こちらに気づいたようだ。早く食べたい。
ミナミ「おっおはようございます…先日はすみません、話すのが苦手で…」
よかった、私が怖かった訳じゃなくてホッとした
エルナ「気にしなくて大丈夫!私もいきなり話しすぎました、反省です☆」
ミナミ「エルナさんって他の人より話しやすいきがする…えっと他の人が話しにくいわけじゃなくって!」
この人は臆病なのか?ちょっとだけチョロそうだ
エルナ「そう言ってくれると嬉しいよ!あ、ご飯ってもしかして、私も同じの食べられる?」
そうだったらいいな…
ミナミ「もちろんできますよー」
エルナ「よっしゃあ!」
ご飯問題解決!
そういえばミナミのポケットに何かが入っている。
エルナ「そのポケットの中身は何?」
ミナミ「えっと、銃の最新型の図案です。極秘情報なので他の人には見せられません…ごめんなさい」
ちぇっ見たかったのに
エルナ「それなら仕方ないですねー」
とワイワイ話していると後ろに人影が
ナギ「新人同士で早速打ち解けているのか、良いことだ」
2人「ナギ上官!」
上官だ、口調を正さなくては...だとしてもこのご飯、美味しい
ナギ「仲良いのはいいことだが、気を緩めるなよ。」
Oh...手厳しい。
エルナ「イサナ上官でこの特訓なら他の上官はもっと厳しいんですか…?」
ナギ「ああ。本当に辛い、茶化せないほどにな」
ナギ上官が笑った気がする。いや、苦笑いだ
ナギ「私はこの辺で失礼するよ、訓練頑張りたまえ。」
ミナミ「ナギ上官って厳しそうに見えるんですけど、仲間思いなんですよぉ」
エルナ「そうなんですね!」
ナギ上官は何か背負ってるのだろうか
その時、とても柔らかく、そして怖ーい声が…
イサナ「おーい、まだか?」
エルナ「すっっっっすぐ行きます!!」
エルナ「ミナミごめんなさい、行ってきます!」
ミナミ「こちらこそ引き止めてごめんなさい、頑張ってね」
走り込み中、上官と軽く話すか。上官との関わりがこれからを左右するだろうし。
エルナ「上官!上官はなんで優しいんですか?」
イサナ「っ過去に部下を失ってな、それで厳しすぎたのかもと反省して優しくするようにしてる」
上官が吃った。いつもハキハキ喋るから意外だ。焦っている?
上官に昔部下が居たそうだ。私よりもエリートだったのだろうか、エリートだったらどうしよう
エルナ「部下はどんな方だったのでしょうか?」
イサナ「優しい奴だったよ。優しすぎたんだ…」
なんとも歯切れの悪い返答。何かあったのだろうか
エルナ「素晴らしい人だったのですね。」
イサナ「そうだな、」
絶対何かあるだろう…まあ、あと5年あるしいつか話せるだろう
しばらく走って
イサナ「調子はどうだ?テンポが乱れてきている。」
なんでそこまでわかるのか、ちょっと怖い
エルナ「少し疲れてきました、お恥ずかしながらこんなに長く走るのが初めてなので…」
イサナ「誰しも最初はそうだろう、昼飯にしようか」
よかった、正直もう無理、逃げ出したい
食堂に着くと、胸が締め付けられるような重苦しい空気を感じて少し後ずさりしてしまった。ナギ上官が暗い表情をしている、今にも壊れてしまいそうなほどに。
エルナ「どうかされたんですか?」
ナギ「俺の部下がもうすぐ出陣なんだ」
エルナ「そうなんですね…」
指示官の時は何も考えていなかった、戦う人形とまで思っていたもの一つ一つに喜びや悲しみがあることなんて
ナギ「すまない、暗い雰囲気にしてしまった。ここのランチは別格だぞ」
エルナ「そうなんですね!楽しみです!」
ナギ「午後からは曇りだ。訓練しやすくなるな」
指示官の時よりも学ぶことが多くて楽しい。訓練が厳しいのはごめんだけど
そういえばミナミが見当たらない、部屋で食べているのだろうか。
少し周りの音が大きく聞こえた。
イサナ「これからは5時まで走るぞ」
エルナ「きっきついっすね、」
イサナ「まだ優しい方だと思った方がいい、私の上官は特に厳しかった」
イサナがふっと微笑んだ
イサナ「さあ、走るぞ!」
これから、不安だ
走っている時、あの重苦しい雰囲気を思い出した。2人の靴の音だけが聞こえ、その音が耳の痛い音に変わっていく。息が上がり、周りが少しずつ灰色になり見えにくくなっていって…
バタンッと自分の倒れた音が聞こえた
イサナ「大丈夫か?初日にもかかわらず少々動きすぎたか。休憩としよう」
イサナはふと目を閉じた。昔の思い出に浸っているのだろうか
その時上官の昔話をしてくれた。
イサナ「私には部下がいたと話しただろう。名前はアキで、アキは誰にでも優しかったんだ。君に似てね。ある時、私が初めてアキに自分のことの相談をしていた。
その時、言われたんだ」
アキ「…その話聞きたくないです」
イサナ「当時の私は少し病んでしばらく部屋に籠っていた。しかし次の日になるとアキはいなかった。そして」
アキは戦死した
イサナ「その日、アキは無謀な特攻隊に任命されていた。アキは私のために拒絶したんだ。上層部は上官の私にもそのことを伝えなかった、わかっていたのだろう」
なんだろう、不思議な感覚だ。ただの戦う人形だと思っていたのに、なんで1人だけでこんなに背負っているのだろうか。私が死なせてしまった人々もこうだったのだろうか?なんで今まで考えなかったのか?
まだ出会って2日目の私に、なぜその話をしたのだろうか
風が少し寒く感じた
イサナ「おっと長話をしてしまったね。訓練再開だ」
それから訓練を終え、食事をし、部屋に戻った。夕食にもミナミは現れなかった
ずっと悩んでいたら、思わず呟いてしまった
エルナ「人間ってなんで複雑なんだろ、人形みたいだったら考えなくていいのに」
イサナ「確かにそうだな、だが複雑だからこそ面白いものだよ」
エルナ「そうなんでしょうか?」
私にはまだ理解できなさそうだ
イサナ「君は何故指示官になったんだ?」
確かに上官が話したのなら私も昔の話をするのが理にかなっている…
エルナ「あれ…?なんでだっけ…」
何も思い出せない、あれほど好きな指示官、なんで思い出せないんだろう。私は記憶力がいいからあまり忘れることは無いはずだ
イサナ「思い出したら話しておくれ」
思い出そうとすると頭に霧がかかったようになり、頭痛がおこる。
何故だろう、何故、なぜ?
〜日記〜
ナギ上官が暗かった。
ミナミが何故か見当たらない、どこか行っている?
上官が元部下、アキのことを話していた。何かあった?
指示官、なんでなったんだっけ
2話をお読み頂きありがとうございます
エルナは表面上では元気なのに心の中では冷たいのが見所だと思っております。これからのエルナの変化を見届けて貰えると嬉しいです
次回予告
上層部からの通達




