節穴
エピソード⑤です
(コチラが当初に予想をした以上に、この未知の感染症は、猛威を振るっていた。というワケか)
医者たちによる、現地でのちょうさがおわり、ほうこくを聞いた徳吉は、ソウおもった。
「ホントウに、アリガトウございました。未知のびょうきがまん延し、一時はどうなるコトかとおもいましたが。おかげサマで、こんごのコトを、ナントカかんがえるコトがデキそうです」
徳吉は、現地でのちょうさを終えて、ジム所に帰ってきた伊藤にたいして、はなしかけた。
「イエ、たいしてお役には立てませんでしたよ。いかんせん、この国ではまだ、発症をしていない感染症でしたので、治療するクスリはありません。ガイコクから、輸入をするコトもデキませんしね。
ですから、ワタシたちがやれたコトは、感染しているニンゲンと、感染していないニンゲンを区別して、未感染のニンゲンを、感染者からとおざける。
そして、感染したニンゲンについては、こんぽん的な治療法がナイので、症状をやわらげるタメのクスリを処方してわたす。というコトしかデキませんでした」
「イエ、ソレでも十分すぎるほどですよ。われわれシロウトでは、ナニをどうすればいいのか、サッパリでしたから。
ヘタにうごいてしまい、感染者にたいして濃厚接触し、感染者をふやしてしまいかねない。そういうヘマをしていたとおもいます」
「たしかに、医療のちしきのないニンゲンが、感染者とおもわれるニンゲンにたいして、ヘタに接触すると、かえって感染をひろげてしまい、感染者をふやしてしまう。という二次災害をまねきかねません。
ソウかんがえてみると、ヘタにじぶんでうごかずに、われわれにたいして依頼をしてきたのは、危機管理の点から見て、正解だったとおもいますよ」
「アリガトウございます」
「ワタシたちにデキるコトは、しょうじきなトコロ、もうありません。こんごの対処方法や対策を、いちおう書いておきましたので、コレをおわたしします」
こういうと、現地でのちょうさ結果と、こんごの対処方法や対策などを書いた書類を、伊藤はさしだした。
「アリガトウございます。こんごの参考にさせていただきます」
こういうと、徳吉は、この書類をうけとった。
「すこしハナシが変わりますが、徳吉さんたちは、ナカナカの慧眼ですね」
「どうしました?ナニがでしょうか?」
「イエ、本田くんたちを雇った。というコトですよ。まえの無料の医療サービスの提供をしたときに、何度もやってきていた、すぐれたレベルのずのう・のうりょく・さいのう・知能を持っているニンゲンたちを、放置するコトなく、みずからの勢力・そしきに参加させた。コレは、スバラシイとおもいます。良いコトですよ」
「たしかに、カレら、カノジョらは、とても優秀で有能なニンゲンですね。ああいうニンゲンが、世にでるコトなく、セケンの片すみでうもれているのは、しょうじきなトコロ、カナリの損失かなとおもいまして」
「こういうコトは、あまりおおきな声ではいえませんが、今のこの国では、第4地区に産まれた時点で、どれほど優秀で有能なニンゲンであっても、高等教育をうけるチャンスや機会は、まずありませんしね。
まあ、たとえソレがあったとしても、そもそものハナシになりますが、おカネを持っていない、まずしいニンゲンがおおいワケですから。
もっというと、たとえ高等教育をうけるコトがデキて、せんもん的で、高度なちしき・技能を身につけて、習得するコトがデキたとしても、ソレを十分にいかすコトがデキるようなシゴトなど、カナリすくないでしょうからね」
「たしかに、おおきな声ではいえませんね。ましては、第3地区以上のばしょでは。でもまあ、ココは第4地区ですので、体制の監視の目だとか、特殊ケイサツもいませんので、すこしくらいは、おもったコトをクチにだしたとしても、ダイジョウブですよ」
「ソウですか、ソレはあるイミで、『言論のじゆう』がそんざいしている。ともいえそうですね」
「言論のじゆうですか。ソコまで大げさなコトはいえませんが、監視の目がないタメに、まあ、あまりカゲキな意見でなければ、ココに住んでいるニンゲンは、意外と、おもったコトや、かんがえたコトを、クチにだしていますね」
こういったあと、徳吉は、ハッとしてしまった。
(ソウか、こんかい医者たちが、こうしてやってきてくれたのは、つまり、リユウ・動機のひとつは、コレなのか)
「スイマセン、差しつかえなければ答えてほしいんですが。もしかして、こんかい、無料の医療サービスの提供期間でもナイのに、こうして、ふたたび無料でコチラにきてくれて、かつ、現地でのちょうさをおこなってくれたのは、そういう監視の目から、すこしにげたい。気楽になりたい。というキモチ・おもいも、あったんでしょうか?」
徳吉がこう聞くと、伊藤はすこし、ドキリとしたような表情をした。
「ちなみに、ココでのハナシやかいわは、ココのナカだけですので、ご安心ください。ないようを、第3地区にたいしてつたえるコトはありません」
徳吉がこういうと、すこしかんがえたあと、伊藤はクチをひらいた。
「イヤ、するどいですね毛利さんは」
徳吉は、ほんらい死んでいるニンゲンである。本名を知っており、かつ本名で徳吉を呼ぶのは、藤柴、高井、桂の4人ダケである。ソレ以外のニンゲンにたいしては、「毛利」と名乗っていた。
「あまりおおきな声ではいえませんが、ニンゲンどうしても、アレコレと、いろんなコトをかんがえてしまいます。
つまり、アタマのナカでは、じゆうな思考っていうものが、ひつよう不可欠なんだとおもいます。そして、じゆうな思考をするのであれば、ソレは、じゆうな意見っていうものが、どうしてもうまれてきます。
でも、ソレをコトバや文章にして、表現するコトはデキない。そんなコトをすれば、特殊ケイサツに睨まれてしまい、『オマエは、反体制分子なのか?』と、あらぬ誤解、うたがいをまねきかねません。そんな自体になれば、ヘタをすると、身の破滅をまねきかねません」
「たしかに、そういう事態になれば、ソレこそ、強制ろうどう施設に、ぶち込まれてしまいかねませんし」
徳吉は、こういいながら、かつてのじぶんコトを、おもいだしていた。
「ソウなんですよ。そういう事態になってしまうと、今の地位もたちばも、すべてうしなってしまいます。
さいわいなコトに、今の私は、医者という肩書き、たちばを手にいれました。ですからまあ、比較的にはめぐまれた状況であり、そういう暮らしをしています。ソレをすべて、うしないかねません」
「まっとうにかんがえれば、そういうリスクやキケン性っていうものを、冒すワケにはいきませんよね」
「そのとおりなんです。でも」
こういうと伊藤は、すこしダケ、タメ息をついた。
「でもニンゲンは、どうしても、アレコレと、イロイロなコトをかんがえてしまう。そういう傾向・とくちょう・性質があります。コレをカンゼンに、禁止するコトなんてデキません」
(ましてや、医者っていう知的なシゴトをしているニンゲンなら、たかいレベルのずのう・のうりょく・さいのう・知能を持っている。ソウである以上、ソレはしかたがナイ。
すぐれた頭脳レベル・知能レベルであるほど、思考のうりょく・チカラが、つよいコトになる。ソウなると、いっぽう的に、ほかからナニカの思想、かんがえかた、意見を強制されたとしても、スンナリとしたがうコトはデキないハズだ)
「ニンゲンであれば、ソレはしかたがナイですよ。伊藤さんにかぎらず、アタマのナカまで、たにんであったり、公的なけんりょくが、ナニカを強制したり、従わせるコトはデキません」
「ソウなんですよ。ニンゲンである以上、アレコレと、じぶんなりの意見、かんがえを、どうしても持ってしまいます。
でも、ソレを一切、オモテにだすコトがデキない。表現したり、主張するコトがデキない。こういう状況にたいして、ときどき、ホントウに苦痛というか、億劫になるというか、イヤになってしまうときがあります」
(ずいぶんと、ホンネをいっているが、その分だけ、コチラのコトを、信用してくれている。というワケか)
「どうやら、フヘイ・フマンだとか、イヤなキモチというか、マイナスの負の感情が、ずいぶんと、溜まってしまっているようですね」
苦笑しながら、徳吉はいった。
「ソウなんですよ。しょうじなトコロ、息が詰まるような感覚に陥ってしまうときがあります。でも第3地区にいるときは、そういうキモチや感情を、オモテにだすワケにはいきません」
「たしかにソウでしょうね。そんなコトをすれば、反体制的と見なされてしまい、どんな目に遭うのか、わかったもんじゃありません」
「体制の監視の目というものは、いたるトコロにありますからね。そして、特殊ケイサツにたいして密告をされてしまえば、ソレはもう、一巻の終わり。というコトになりかねません」
「ナルホド」
「その点、この第4地区には、ナンていえばいいのか、『ある種のじゆう』のようなものが、あるような気がするんです」
「ある種のじゆう、ですか」
「ええ、チョット大げさな表現、いいかたかもしれませんが、じゆうがあるような気がします。じぶんなりに、『ナゼなのか』とかんがえてみると、ソレはもう、きわめてカンタンというか、たんじゅんなんですが、監視者がほとんどいない。というコトが、リユウ・原因だとおもいます。
監視者がいない。つまり、監視の目がナイ。だからこそ、ニンゲンはココでは、まあ限度があるとはおもいますが、あるていどであれば、じぶんのかんがえたコトを、ソトにだすというか、オモテにだして、表現したり、主張するコトがデキているんじゃないか。とさえおもいます」
伊藤にこのようにいわれ、徳吉は、そうだん所のコトをおもいだしていた。
(ソウいわれてみると、このジム所がやっている、そうだん所自体が、ナンていうか、『じぶんのかんがえたコトを、比較的には、じゆうに主張したり、表現をするコトがデキる』という場なのかもしれない。
そうだん者たちは、そのほとんどが、じぶんのフヘイ・フマンだとか、こまりごとがあって、ソレをナントカしたい。というコトを、コチラにたいして主張してくる。
コレはつまり、あるイミでは、じぶんでかんがえたコトや、かんじたコトを、監視の目をあまり気にせずに、じぶんのソトにだしている。ともいえるのか)
「いわれてみると、たしかにソウかもしれません。このジム所がおこなっている、ヨロズそうだん所では、地元のニンゲンが各々、じぶんのシゴト・生活でのフヘイ・フマンだとか、こまりごとを、カナリじゆうに、コチラにたいして発言し、つたえてきます。コレはあるイミで、自己主張ともいえますね」
「ソウなんですよ。おっしゃるとおりです。こういう、住民が公的なそしき、そんざいにたいして、じぶんの意見というものを、あるていとですが、じゆうにつたえるコトがデキる。その上さらに、『ナンとかしてくれ』と、要望するコトもデキる。
このような部署・そしき、あるいは窓口なんていうものは、第3地区にはありません。というか、第2地区にも、第1地区にもありませんよ」
(いわれてみると、たしかにソウだ。オレが第3地区に住んでいたとき、そういうトコロはなかった)
「第2地区や、第1地区にもナイんですか?」
「ありませんよ」
と、伊藤はキッパリといった。
(オレが知っているのは、あくまで第3地区ダケだ。第2地区や第1地区にもナイっていうのは、しらなかった)
「ちなみに伊藤さんは、第2地区や第1地区にも行ったコトがあるんですか?」
「時々、呼ばれるコトがあります」
「ソレは、医者ダカラですか?」
「ソウなります。ワタシは第3地区の住人ですから、身分的に、第2地区や第1地区のニンゲンとは、フダンは会うコトがありません。
でも、そもそもの前提として、医者っていうのは、誰でもなれるワケではなりません。いくら身分がたかくても、ナンていうのか、医学という学問を習得しなければ、医者にはなれません」
「ソウですね。まあ、いくらうまれた身分が高かったとしても、全員が全員、医者になれるダケのアタマ、学力がわるワケではナイでしょうし」
「ろこつにいうと、ソウなっちゃいますね。というか、こういう発言をしているコト自体、この第4地区には、やはり、一定のじゆうがある。という証拠といえそうです」
伊藤がこういうと、おもわず徳吉はわらってしまった。ナニセ、これらの発言は、「いくら身分がたかくても、全員がアタマが良いワケではナイ。バカはしょせんバカだ」というイミなのだから。
こういうコトは、第3地区、第2地区、第1地区に住んでいたら、口が裂けても言えないコトになるであろう。
「第2地区や第1地区で、医者の数がたりなくなる。という時期があります。まあ季節の変わり目に多いですかね。そういう時期は、風邪などが流行りますし。そういう時期は、ワタシたち、第3地区に住んでいる医者も、駆り出されるワケですよ」
「ナルホド。ニンゲン、じぶんがびょうきでツラク、くるしいんだったら、あいてがどんな身分であろうと、ナントカしてほしい。とおもいますからね。
たとえひくい身分であろうと、じぶんのツラさ、くるしさをやわらげて、ナントカしてくれるんだったら、あいての身分なんていうのは、イチイチ気にしないでしょうから」
「徳吉さんは、ズバリといいますね。ソウなんですよ。フダン、ワタシのコトを下に見ている、特権階級のニンゲンなんですが、びょうきに感染し、ツラク、くるしい目に遭っているときは、そういう、さべつ的なイシキ、感覚を、オモテにださないんですよ。
コレは、そういう感覚が、麻痺してるとでもいえばいいのか。ソレとも、さべつ的ないしき・感覚を持つヨユウがなくなる。とでもいえばいいのか。
トニカク、そういう時期になると、ワタシたちも、たかい身分のニンゲンたちと、会ったり、かかわるコトがある。というワケなんです」
「ソレで、第2地区や第1地区にいくコトがある。そしてソコでは、このジム所でおこなわれているような、ヨロズそうだん所のような部署・そしき・窓口は、そんざいしていない。と、こういうワケですね?」
「そのとおりです。じぶんのこまりごと、フヘイ・フマンっていうのは、あるイミで、じぶんでかんがえた、じぶんなりの意見。つまり、じゆうな意見。というカタチになります。
コレをオモテにだす。つまり、『じぶんの内面ダケに押しとどめておかず、ソトにたいしてだす』ともいえますよね。こういう自己主張っていうのは、この国では、体制がわに近いばしょでは、そんざいしていません」
(かんがえてみれば、アタリマエともいえるか。体制がわとしては、今の状態、けんりょく体制っていうものを、ナンとしても維持しておきたい。コレにたいしてフヘイ・フマンをいうニンゲンを、放置するワケがない。
まして、体制がわの中枢だとか、ソレに近いばしょ・位置にいるニンゲンであれば、『今の体制にたいして、フヘイ・フマンをいうな。イチイチ文句をいうな。オマエたちは、今の体制のオカゲで、良い暮らし、せいかつをしている。コレを維持し、まもるコトを最優先にかんがえろ』となるダロウし。
フヘイ・フマンっていうものを、じゆうにクチにださせてしまえば、ソレこそ、アリの一穴になって、今の体制にたいしてヒビだとか、亀裂が入ってもオカシクはナイ。
けんりょく体制、中枢に近いばしょ・位置にいるニンゲンこそ、きびしい監視の目に晒されて、じゆうに意見をいえない。となるのは、あるイミで、しかたがナイ。というコトかもしれんか)
「体制がわに近いばしょ、土地のほうが、ココよりも、良いくらし、せいかつをするコトがデキる。でもその分だけ、じゆうがナイ。というコトなんでしょうね」
「毛利さんのおっしゃるとおりですよ。ですので、こうして第4地区にやってくると、ナンといえばいいのか、ソウですね、息抜きになるような気すらします」
(息抜きねえ。フダンのせいかつが、よっぽど息が詰まる。というワケか)
「この土地は、体制の監視の目がナイせいか、どうしても、無ちつじょ・こんらん状態になりやすいです。
ろこつにいえば、すぐに治安が悪化しやすい。でもその分だけ、じゆうがある。というコトなんでしょうかね」
「ソウともいえますね。こうして、このジム所にたいして、じぶんのシゴト・せいかつでのフヘイ・フマン、こまりごとを、皆さんが主張し、つたえている。
コレはつまり、あるイミで、『じゆうの象徴』といってもいいかもしれませんね。いいかたを変えれば、『じゆうがそんざいする証拠』とでもいえましょうか」
(じゆうの象徴や証拠ねえ)
「住民からのフヘイ・フマン、こまりごとを聞くっていうのは、まあナンといいますか、ワルイないようのハナシを聞くワケです。
そのために、コチラとしても、良い気分にならないコトもおおいです。というか、イヤなキモチだとか、ワルイ気分になってしまいガチです。
でも、伊藤さんがおっしゃるように、『じゆうの象徴や証拠だ』。と、こうかんがえてみれば、プラスの気持ちになるコトもデキそうです」
「ソウかんがえるのは、いいかもしれませんね。モノゴトのプラスのトコロ・いちめん・ぶぶんを見て、ソレにたいして目を向ける。というカタチになりますから。精神衛生上、良いコトかもしれません」
「ソウかんがえておきますよ」
こうして、伊藤とのハナシはおわり、伊藤は第3地区へと帰っていった。
(ココには、じゆうがある。か)
伊藤とのハナシをおえたあと、徳吉は、ついかんがえこんでしまった。
(ココにやってきたとき、辺境の土地にきてしまって、治安もワルイし、まずしいトコロだし、すこし、気が滅入ってしまったときもあった。
でもしばらくしたら、フシギと、そういうキモチはなくなっていた。そのときは、深くかんがえなかったが、今こうして、あらためて第3者からいわれてみると、第3地区にいたときや、あるいは、強制ろうどう施設内にいたときには、ほとんどなかった『じゆう』が、すこしダケ、ココにはある。だからこそ、滅入った気分が、いつの間にか、なくなっていたんダロウか)
「制限されているとはいえ、じゆうがある」
こうつぶやいたあと、徳吉は、ハッとしてしまった。
(ソウか、第3地区以上に住んでいるニンゲンが、ナンで第4地区に住んでいるニンゲンのコトを、ひつよう以上に嫌っていたり、見くだしているのか。そのリユウ・げんいんのひとつが、もしかしたら、『じゆう』かもしれない)
この徳吉の「気づき」というものは、核心・本質を突いているといえるであろう。ニンゲンは、すこしでも、一旦「じゆう」というものを知り、ケイケンすると、そうカンタンには、コレを手ばなすコトはデキない。
こまかいトコロにいたるまで、ナンでもかんでも、すべてを他者から強制されてしまい、じぶんの意思・かんがえ・キボウなどで、ナニカをえらび、選択をするコトがデキない。
そういう状況のなかで、息が詰まるような状態にいたニンゲンが、ほんのすこしでも、一旦じゆうを知り、手にしてしまえば、おそらく、「元の状態にたいしては、もう二度と、もどりたくはない」と、こうかんがえるハズである。
めぐまれた暮らし、せいかつをしている。だがしかし、その代わり、こまかいトコロにいたるまで、体制のけんりょく、党が指導をし、めいれいをし、ソレにたいして、チャント従わなければならない。
コレを良しとする状態。コレをとうぜん、アタリマエとおもっているニンゲンからすれば、監視の目がとどかないコトが、原因・リユウとはいえ、「じぶんの意思で、ナニカをキメたり、おこなったり、主張をしている」というニンゲンがいるコト自体、奇異の目で見てしまいかねない。というか、「キケンなそんざいだ」とかんがえても、けっしてオカシクはナイ。
ソレと同時に、ココロの奥底では、チョットしたあこがれや、うらやましい。というキモチもある。だがしかし、ソレをハッキリと、オモテにだすワケにもいかない。
だから、その反動、裏返しとして、「ヤツラは野蛮だ、下等なそんざいだ」として、バカにしたり、見くだしてしまう。こういうコトは、十分にありえるであろう。
(オレ自身、むかしは、つまり、ココにやってくるまえは、第4地区のコトや、ココに住んでいるニンゲンのコトを、『治安がワルイばしょで、キケンなコトがおおい。じぶんのスキ勝手にかんがえて、意見をいい、うごいている』と、ドコカ危険視していたり、野蛮で、あまり深くかかわりたくない。という印象を持っていた。
でもその反面、『スキ勝手にデキる』というコトにたいして、チョットだけ、うらやましいと、おもっていたトコロもあった。
スキ勝手にしすぎると、ソレはたんなる無ちつじょ・こんらん状態になるし、治安の悪化につながり、身のあんぜん、せいぞん自体を脅かしかねない。
でも、上限や限度の範囲内で、お目こぼし。というか、隅っこのスキマの範囲内であれば、ニンゲンはヤッパリ、じぶんの好きなコトをしたり、えらびたい。こういうキモチ・おもいを、カンゼンに捨て去るコトはデキないか)
第3地区以上に住んでいるニンゲンは、第4地区に住んでいるニンゲンのコトを、見くだしたり、バカにしているが、そのココロの奥底には、もしかしたら、じゆうを持っている。というコトにたいする、一種のうらやましさ。あこがれのキモチがあるのではないのか。こういうコトを、徳吉はおもったのであった。
つぎの瞬間、徳吉は、おもわず、声をだしそうになった。
(商売をしている。というコト自体が、もうすでに、じゆうがそんざいしている。というコトの証じゃないか)
徳吉たちは、斎藤たちの勢力のボスが死んだとき、その勢力で、内ゲバ、内紛になりそうなのをキッカケに、この勢力をぶんかつし、弱小化した。
そして、それらを傘下に収めたのであるが、この勢力は、小キボとはいえ、商売、事業をおこない、りえきを上げている。
また、この第4地区では、ほかにも土着の勢力というものが、いくつもそんざいしており、その各々が、小キボながらも、商売、事業をおこなっている。
つまり、「じぶんの私的なりえき・利潤をだすタメに、各々が、勝手ビジネスをおこなっている」という状態なのである。
このコト自体が、もうすでに、「あらゆる資産を公有のモノとする」という、今の政治体制における原理原則にたいして、おおきく違反をしている。
小キボとはいえ、ソレがおこなわれている。というコト自体、もうすでに、「ココには、じゆうがそんざいしている」ともいえるであろう。
いくつもの土着の勢力同士があらそい、ケンカし、たたかうコトがある。そういう治安の悪さはあるのだが、ココには、制限されているとはいえ、「ニンゲンが、ナニカをおこない、かつどうし、行動するじゆう」というものが、あるていどはそんざいしている。
(ニンゲンが、じぶんの意思・かんがえで、ナニカをおこない、かつどうし、行動するコトがデキる。というか、デキている。
このコト自体が、カナリたいせつで、重要な意味合いを持っているかもしれない。ウカツだった。ココにきてから、ソレがアタリマエのコトだったから、たいして気にせず、イシキもしていなかった。
でも、伊藤さんのハナシを聞いて、『そもそも、ナンでそんなコトがデキているのか」という視点に立ってみると、ココには、上限や制限があるとはいえ、一定のじゆうがある。というコトじゃないのか)
ニンゲンは、水や空気のように、アタリマエにそんざいしているモノゴトは、そのありがたさ、価値のたかさに、気がつかないようである。
(ナンていうコトだ。まったくじゆうがナイ、強制ろうどう施設にいたっていうのに、こんな大事なコトにたいして気がつかないなんて。オレの目は節穴だったか)
じぶんのウカツさ、鈍さにたいして、チョットだけ気落ちしながらも、徳吉は、すぐにコレからのコトをかんがえだした。
(今げんざい、手にしていないモノを、アテにするコトはデキない。でも、ぎゃくにいえば、今げんざい、もうすでに手にしているモノであれば、コレを、アテにするコトはデキる。
というコトは、つまり、コレをざいりょう、原料、基にして、ナニカをかんがえたり、つくったり、おこなうコトはデキるダロウ。
となると、制限や上限があるとはいえ、体制の内部、中枢にはナイ一種のじゆう。というものを、ざいりょう、原料、基にして、ナニカしら、プラスになるコトをかんがえたり、おこなうコトはデキないダロウか)
こうかんがえたときに、徳吉のアタマに、あるコトがうかんできた。ソレは、かつて、斎藤たちがしょぞくした勢力を参加にくわえたときに、この勢力がおこなっていた事業・商売にかんする資料であった。
(オレたちが吸収し、傘下に収めた勢力は、小キボとはいえ、商売、事業をおこなっていた。つまり、そういうコトがデキる、という一種のじゆうを持っていた。といえるか。
そして、コレをおこなっているのは、ひとつダケではない。ほかの勢力もまた、小キボながら、じぶんたちで商売、事業をおこない、カネを稼いでいる。こういうほかの勢力についても、もっと注目するベキかもしれない)
こうかんがえたあと、徳吉は、藤柴を呼んだ。
「どうしましたか?ナニカ用事でも?」
呼ばれた藤柴が、徳吉にたいして尋ねた。
「たいした用事じゃナイんだけど、この第4地区でかつどうし、商売、事業をおこなっている勢力について、ナニカ資料がないかとおもってね。あれば、ゼヒ読んでみたいんだけれども」
「資料ですか。ソウですね、たいしたモノはありませんが、すこしくらいなら、あったかとおもいます」
「ソレでかまわないから、持ってきてもらいたいんだけれども」
「わかりました。いそぎですか?」
「イヤ、いそぎではナイ。だから、時間があるときにでも、ソレを持ってきてもらいたい」
「そういうコトでしたら、時間があるときに、あつめて持ってきますよ」
「ヨロシクたのむよ」




