影響力
第3地区の医者にたいして文書を提出してから、数日後のコトである。返答があったのであるが、そのないようは、徳吉が予想したとおりのものであった。
ソレは、「未知のびょうき、感染症の可能性がある以上、医学のちしきがない者を、現地に派遣すベキではナイ」というものであった。
ソコで、徳吉たちが、「では一体、どうすればいいのでしょうか?」と、ぎゃくに聞くカタチで、ふたたび文書を送ったのであった。
そして、少し経ったあと、返事が返ってきた。ソコには、「何人か医師を派遣するので、しばらくのあいだ、待ってもらいたい」というものであった。
(ホントウに、徳吉さんの予想したとおりになった)
いちれんのコトを見ていた藤柴は、内心においてこうおもった。
(まるで、ほそい糸を手繰り寄せるようにして、ニンゲンだったり、モノゴトを、じぶんのほうに、うまく引っ張ってくる。しかも、最小限のリスクやキケンで)
「うまくいきましたね。徳吉さんの予想したとおりのカタチ、ながれになりそうです」
「運がよかった」
「イエ、運というよりも、徳吉さんの予想や想定が、あたっていたからですよ。策というか、案というか」
「ソレはアリガトウ。でも、ニンゲンがわかるコトだとか、デキるコトなんてのは、しょせんは限界がある。ニンゲンがやるコトは、さいごのさいごは運次第だよ」
「謙虚ですね」
「イヤ、コレは謙虚だとか、謙遜じゃナイ。オレの本心であり、ホンネだよ」
徳吉は、真顔でこういった。
「さいわいなコトに、運がよかった。だから、事前にかんがえて、予想した想定のとおりになってきた。でも、せっかくなら、ココから先も仕込んでおきたい」
「仕込んでおく。ですか。一体ナニをです?」
「医師がくるまえに、シロウトではんだんはデキない。でも、状況証拠からかんがえるに、このあたらしい症状や病状のびょうきは、ガイコクから入ってきたかもしれない」
「ガイコクからですか?」
「もしかしたら、キミや高井くんは、すでに知っているか、想定しているかもしれないが、この第4地区では、ガイコクとのあいだで、密貿易がおこなわれているんじゃないかい?」
徳吉にこういわれ、藤柴は、ドキリとしてしまった。
(おどろいた。ナゼこのヒトは、ソレを知っている?)
「おどろきました。徳吉さんは、ナゼそのコトを知っているんですか?」
「ヤッパリか。というか、知っている。というよりは、ソウかもしれない。という、コレまた憶測というか、予想だったんだけどね」
「イエ、ソレでもオドロキですよ。このジム所のなかに、ソレを記した資料なんて、まったくナイですし。ソレに、ココの事務員だって、コレを知っているニンゲンなんて、いないハズです。
まあウワサていどだったら、知っているかもですが、でも、ソレをハッキリと知っているニンゲンは、いないハズです。
ソレに、ほうもん者、そうだん者のなかにも、ガイコクとの密貿易にかんするコトを、そうだんするニンゲンはいません。
だから、ほうもん者のそうだんごと、ないようのキロクにも、そんなコトは、まったく書かれていません。一体ナニをキッカケに、そんな想定をしたんですか?」
このように聞かれたタメに、徳吉は、本田のあんないで、じっさいに現地を見にいったときのコト。そして、そのあとに、斎藤たちがあつかっていた、ガイコクの商品や製品のコト。さらに、本田が、ほんらい知っているハズのないコトを、知っていたコト。これらのコトを話したのであった。
そして、これらのコトから、「ガイコクのフネが、この第4地区の沖合に、コッソリと漁にきていたり、このフネにたいして、第4地区のニンゲンが、ナニカを売ったり、ぎゃくに、あいてから、ナニカを買っているのではないか」という想定をしたコトを、せつめいしたのであった。
(このヒトは、断片的なコトから、モノゴトの本質や核心、要点や真相をつかむのが、ホントウにウマイ)
「徳吉さん、まるで名探偵みたいですよ。そんな断片的で、わずかな情報・じじつから、そんなコトにまで気がつくなんて」
「運がよかったダケだよ。トコロで、今までキミにしろ、高井くんにしろ、この手のハナシをしたコトがナイ。というコトは、まあカンタンにいえば、『われわれにとって、ちょくせつ的に、かんけいがナイから』というトコロかな?」
「おっしゃるとおりです。われわれのシゴトや業務にたいして、まったくナンのかんけい性もありませんしね。ですので、コチラから、コレにかかわるようなコトは、今のトコロはナイです。そのひつよう性も、リユウ・動機もナイですし。
ソレに、ワタシにしろ、高井にしろ、じっさいに、そのゲンバを見たコトはナイです。まあ『風のウワサていどで、ときどきミミにする』というていどのハナシなんです。ですから、あえてこのコトは、徳吉さんに言ってはいません。
風のウワサていどですし、ハッキリとした証拠やこんきょ、ウラづけもナイ。そして、われわれに、ちょくせつ的なかんけい性もナイ。
ですから、『ナニカしら、かんけい性のあるジケン、モノゴト、デキゴトが起こったら、そのときに、すこしハナシでもしようかな』というていどで、かんがえていました」
「ダロウね。オレがキミたちでも、ソウするとおもう。キッカケがまったくナイのに、ほとんど無かんけいのコトを、イチイチいうのもどうかとおもう。
でもまあこんかい、こうして、かんけい性というか、かかわりのあるジケン、モノゴト、デキゴトが起こったともいえる。
だから、キミたちが知っているかぎりのコトを、おしえてほしい。風のウワサていどでもかまわないから、すべてを知りたい」
「わかりました」
こういうと、藤柴は、徳吉にたいして、ガイコクとの密貿易にかんして知っているコト、今までに手にいれた情報・じじつを、すべてつたえた。
とはいっても、あくまでもソレは、断片的なモノであり、また、「どれがただしくて、まちがっているのかもわからない」というていどの情報・じじつであった。まさに「風のウワサ」というレベルのコトである。
「コチラの業務やシゴトにたいして、ちょくせつ的にかかわりあいや、かんけい性がナイのに、イロイロと、よくあつめたもんだ。感心するよ」
「あつめたとはいっても、『コチラから、積極的にあつめた』というワケではナイです。『ナニカのキッカケで、そういうコトをミミにしたり、知るコトがあったときに、ソレをあつめた』というレベルのコトです」
「ソレでも、たいしたもんだよ。ほんらいだったら、カンゼンに無視してもいいコトなのに。たとえ断片的とはいえ、コレだけあつめたのはスゴイとおもう。
フダンから、いかに情報・じじつの収集にたいして、モンダイ・もくてきイシキというものを、つよく持っているのか。このコトが、あらためてよくわかった」
「アリガトウございます」
(やはり、藤柴クンにしろ、高井クンにしろ、カナリ優秀で有能なんダロウ)
と、こうかんがえるのと同時に、ふと徳吉は、アタマにうかんだコトがあった。
(イヤ、チョット待てよ。ふたりがアタマが良くて、優秀で有能なのはみとめるが、かといって、ただソレだけで、イチイチ、こんなコトにまで気がつくダロウか?)
というギモンが、湧いてきたのであった。
(そもそもニンゲンは、どれだけの大天才であっても、まったく気にしておらず、イシキせず、にんしきしていなければ、ソレがそんざいする。というコト自体に気がつかない。たとえ視界に入っても、道ばたの草や石なんて、イチイチおぼえていない。
ほんらいの業務やシゴトにたいして、まったく無カンケイで、かんれん性がナイのに、第4地区でのガイコクとの密貿易について、断片的で、不正確なモノがおおいとはいえ、ココまで情報・じじつをあつめていた。というコト自体、ふたりについての、ナニカを示しているんじゃないのか?じゃあ、そのナニカ、とは、一体ナンなのか)
このようなコトを、徳吉は、アタマのナカでかんがえていた。
(何ダロウ。とつぜん、だまってしまったけど、ナニカあったのか?)
とつぜん、だまってしまった徳吉のようすを見て、藤柴はすこしダケ、とまどってしまった。
「どうかしましたか?ナニカ、ワタシのいったコトに、不審な点でもありましたか?」
「イヤ、キミのいうコトに、不審な点があったっていうワケじゃないよ。チョット気になってしまってね」
「気になるコトが、ナニカありましたか?ちなみに、ソレは一体ナンでしょうか?」
「些細なコトかもしれないけど、キミたちふたりは、ちょくせつ的なシゴトや業務にたいして、まったく無カンケイで、かんれい性がナイのに、ナンでまた、ガイコクとの密貿易にかんする情報・じじつを、あつめていたのか。というコトが気になってね。
モチロン、『たまたま、ホントウにぐうぜん、ソレを知るコトがあった』というケースもあるとはおもう。でも、ソレだけだったら、せいぜい1回か2回であって、キミから聞いた分量にはならないとおもう。
いくら断片的で、不正確かもしれないし、風のウワサていど。とはいっても、「ソレなりの分量の情報・じじつを、チャントあつめていた」と、オレはかんじた。
つまり、あるていどは、モンダイ・もくてきイシキっていうものを、つよく持っていないと、あつめるコトはデキないとおもう。どうダロウか?」
「徳吉さんは、ホントウにするどいですね。コチラの内心というか、アタマやココロのなかを、ズバリと見抜くといいますか、気づくといいますか。
おっしゃるとおり、今げんざい、ワタシたちには、ちょくせつ的なカンケイ性やかんれん性はナイですが、『いずれは、ナニカのカタチで、かかわるかもしれない』というコトを、ワタシも高井も、ほんのすこしダケ、まえから、かんがえてはいたんです。
このまま、われわれが、勢力を拡大するコトがデキたら、ヒッソリおこなわれているという、ガイコクとの密貿易にたいして、『ドコカの時点・だんかいで、ナニカのカタチで、かかわりあいになるかもしれない』というコトを、すこしダケ、想定をしていました。
ですからまあ、『チャンスがあれば、そういう情報・じじつを、あつめておこう』というカタチで、イシキをしていました」
「スバラシイ。ミライは予測するコトがデキない。とはいっても、可能なかぎり、イロイロなパターンや選択肢を、じぜんの時点・だんかいで、想定し、かんがえて、予測をしておくに越したコトはナイ。
たとえソレがハズレても。というか、ミライなんていうのは、ゼッタイに予測したとおりにはならない。
だけどソレでも、たとえハズレたとしても、じぜんの時点・だんかいで、イロイロなパターンや選択肢をかんがえておくのは、カナリたいせつで重要なコトだと、オレはおもう。
たとえハズレたとしても、『ソレに近い状況になる』っていうケースは、十分にありえる。そのばあい、じぜんの時点・だんかいで、かんがえておいたパターンや選択肢、案や策を応用するコトで、役にたつケースだってあるダロウし」
「アリガトウございます。とはいっても、ワタシも高井も、ガイコクとの密貿易にたいして、『いつ頃に、どういうカタチや状況で、どのていどかかわるのか』っていうのは、サッパリ予測がデキていません。
あくまでも、『まあ将来、ナニカのカタチでかかわるかもしれない。だったら、今の時点・だんかいで、デキる範囲内で、手にはいる情報・じじつを、あつめておこうか』というていどのハナシですが」
「イヤ、ソレでも十分スゴイとおもうよ。ヤッパリ、0と1はちがう。ぜんぜんちがう。0からナニカを生みだすコトは、カンタンじゃナイ。
でも、たとえちいさくとも1があれば、その1にたいして、べつのナニカを付けくわえて、ふやしていくコトはデキる。
もっとろこつにいうと、どれだけおおきな数でも、0に掛け算をすれば、0にしかならない。でも1だったら、掛けた数は、そのままのこる。この違いはおおきいと、オレはおもうよ」
「となると、ワタシや高井が今までに、すこしダケあつめた、これらの密貿易にかんする情報・じじつは、『ちいさくとも、1がそんざいしている』と、こういうコトでしょうか?」
「比喩的ないいかたや表現になるけれど、ソレで合っているとおもう。というか、ソレなりの分量の情報・じじつを、こうしてあつめたワケだから。1ではないくて、4とか5くらいにはなっているんじゃないかい?
だったら、掛け算をすれば、元の数にたいして、4倍・5倍に膨らまし、ふやすコトがデキる。ともいえるか」
「4倍・5倍ですか。たしかに、ソレがデキれば、あるていどは、おおきな成果や効果、結果を手にするコトがデキそうですね。ですが、ぐたいてきに、どういうコトがデキるとおかんがえですか?」
「ぐたいてきに、どうなって、こうするコトがデキる。とまでは、今は言えないけれどね。まあ、『すこしでもプラスになって、トクをするかもしれない』という可能性や確率があるならば、そして、リスクやキケン性がすくないならば、アクションや行動を、おこすベキかとおもえてね」
「といいますと?」
「医者がこの地区にやってきて、ちょうさをして、もしもホントウに、『ガイコクから入ってきた伝染病、びょうきだ』というコトが判明したときに、『われわれが、ガイコクとの密貿易にたいして、かかわる機会というか、キッカケになるかもしれない』とおもえてね」
「われわれが、ガイコクとの密貿易にたいして、かかわる機会やキッカケですか?」
(どういうコトなんダロウ?ガイコクから入ってきた伝染病、びょうき、と判明したら、ソレは、『この第4地区で、密貿易がおこなわれているコトの証明になる』と、こういうコトなんダロウか?
でもソレが、『われわれが、この件にかかわる機会やキッカケになる』というコトと、一体どうつながるんダロウ?)
「もしもホントウに、医者が、『こんかいの症状や病状のびょうきは、ガイコクから入ってきた伝染病である』という診断を下したのであれば、ソレは、この第4地区において、『ガイコクとのあいだで、ナニカしらのカタチで接点があり、接触をしている』というコトになりますね。
つまり、『ガイコク人と会ったり、かかわっている』というコトの証明になります。コレはつまり、『ガイコクとの密貿易が、おこなわれている』というコトを示しています。
コレが、『われわれが、この件にかかわる機会やキッカケになる』というコトであれば、『ほうりつ違反を見つけたから、ソレを罰する』というコトでしょうか?」
「イヤ、われわれはべつに、ケイサツじゃナイからね。だから、ソレを罰するチカラもナイし、そういう権限も持っていないよ」
「ソウですよね。ですから、ソレを罰するコトはデキません。となると、密貿易をおこなっているニンゲンや勢力にたいして、『ナニカのカタチでかかわり、われわれも、密貿易をおこなって、ソレに一枚噛む』というコトでしょうか」
「ソレもあるとはおもう。われわれ自身は、べつに商売人じゃナイが、斎藤たちの勢力を傘下にいれており、ココでは、ビジネスをやっているワケだから。
だから、『密貿易にたいして、われわれの傘下の勢力が参加して、りえきを上げる』というコトは、選択肢のひとつとして、かんがえていいとはおもう」
(しかし、今げんざい、密貿易をおこなっているニンゲン・勢力は、コレを利権にしているワケだから、われわれが、ココにはいりこむとなると、ソイツらとのあいだで、トラブル・モンダイ・モメゴトがおきそうだけど)
と、ココまでかんがえて、藤柴はハッとした。
「あ、ソウか。今げんざい、密貿易をしているヤツラは、びょうきに感染している。というコトは、密貿易をおこなうニンゲンや勢力がすくなくなり、へっているワケですよね。だったら、われわれが、そのあいた穴にはいるコトも、デキるかもしれませんね」
「そういうコトになる。フツウの状態だったら、密貿易にたいして、コチラがはいりこもうとしても、『よそ者が、新参者としてはいりこむ』というカタチになるワケだから、カナリむずかしいダロウね。ムリがある。ヘタをすれば、カナリの大ごと、トラブル・モメゴトになりかねない。
でも、今げんざい、密貿易をおこなっているニンゲンが、びょうきに感染し、ニンゲンや勢力がすくなくなり、へっている。だったら、その開いた穴にたいして、コチラがはいりこむコトは、可能になるかもしれない。
ソレに、そもそものハナシとして、いちおうこの国は、ガイコクとのあいだで、私的な貿易っていうものを禁止している。つまり、密貿易という行為自体が、ほうりつ違反であり、ルール違反になる。
そして、われわれは、いちおうは体制側のニンゲンになる。だから、コチラとしては、さいしょは、『このルール・ほうりつ違反にたいして、あからさまに一枚噛む』というワケにはいかない。
ソレよりも、ケイサツや司法機関じゃナイが、『この違法行為を、だまって見のがすワケにはいかない』というスタンスで、さいしょは接するベキだとおもう。ソレが良いダロウね」
「たしかにソウですね。でも、ソレだと、『コチラが密貿易にたいして参加する』っていうコトは、デキなくなりますが」
「まあソコは、今後のハナシの持っていきかた次第じゃないかとおもうよ。いくら体制側のニンゲンだとしても、そもそもケイサツではナイし、この第4地区にいる以上、『ろこつに密貿易を厳格に禁止する』というスタンスまでは取らない。あえてアイマイにしようとおもう」
「アイマイですか」
「そう、アイマイ、グレーゾーンといってもいいか。リユウ付けとしては、『密貿易で生計を立てているニンゲンがいる以上、シゴトをうしなって、ケイザイ的に困窮するニンゲンをだすワケにはいかない。だから、お目こぼし。というか、あえて目をつぶる』というカタチにする。
でも、密貿易をするニンゲンが、びょうきで死んだりした以上、どうしても穴があく。となると、密貿易が衰えるかもしれない。こういう状態になると、ガイコクがわとしては、『貿易あいて、商売あいてがいない』というカタチになる。
となると、コチラにやってくる数がへるかもしれない。ソウなるとこまる。生計を立てれないニンゲンがふえかねない。だから、コチラが傘下にいれた勢力を、その穴にうめる。というカタチにすれば、一枚噛むコトがデキるかもしれない」
「ナルホド。たしかにソウすれば、今げんざい、密貿易をおこなっている、生きのこっているニンゲンも、はんたい・ていこうは、カナリやりずらいでしょうね。
ヤツラとしては、コチラにたいして、あからさまにはんぱつし、はんたい・ていこうをすれば、密貿易がバレてしまった以上、コレを第3地区にたいして通報され、全面的に禁止されるかもしれない。そういうリスクを冒したくはナイ。
そして、そもそも密貿易をするニンゲンがへってしまった以上、密貿易というビジネス自体が、成りたたなくなるリスク・キケン性・可能性すらありえる。
だったら、よそ者が、新参者として入ってくるのも、しかたがナイ。と、あきらめがつくかもしれません」
「そういうコトだね。密貿易をしている。というコト自体が、そもそもルール違反であり、ほうりつ違反になる。
つまり、『やましいコトをしている』というカタチになる。『コレをだまっている代わりに、コチラにたいして従え』というコトにする。
ろこつなまでに、ハッキリとはんたい・ていこうし、反抗的なたいどを取れば、『だったら、この密貿易自体を見のがすコトをせず、第3地区にたいして通報する』と、やんわりと脅す。
そして、密貿易をおこなうニンゲンがへってしまった以上、そもそもの前提として、密貿易というビジネス自体が、成りたたなくなるリスク・キケン性・可能性すらある。ヤツラとしても、そういうケースは、ナンとしても避けたいダロウし。
こういう視点・発想・かんがえかた・スタンスに立ってみると、こんかい、『第3地区からやってくる医者』というそんざい自体が、『われわれにとって、カナリ有力なカードになる』ともいえるか」
「医者が、有力なカードですか?」
(医者自体に、そういう効果があるんダロウか?)
藤柴は、フシギそうなカオをした。
「ナンせ、医者は第3地区からくるんだよ。そして、カレらが、ガイコクからの伝染病だとはんだんすれば、ひつぜん的に、『この地区において、ガイコクとのあいだで、交流があった』というコトを、知ってしまうカタチになる。
つまり、この地区で密貿易をおこなっていると、知るコトになる。だから、密貿易をおこなうニンゲンにたいして、『医者は、コレを知ってしまった。カレらが第3地区に帰ったときに、コチラが、特殊ケイサツにいわず、だまっているように抑える。だがしかし、もしもコチラにたいして反逆し、さからえば、医者が特殊ケイサツに言うのを止めない』というカタチで、やんわりと、脅すコトだってデキるダロウし」
「ソウいわれてみると、たしかにソウですね。第3地区からやってきたニンゲンが、コレを知ってしまえば、ヤツラとしても、気が気でナイでしょうし」
「こういったカタチで、うまくいけば、『われわれが、密貿易をおこなって、一枚噛む』というコトだけではなくて、『密貿易をおこなうニンゲンや勢力を、コチラがわの傘下にいれる』というコトだって、もしかしたらデキるかもしれない。斎藤たちの勢力のようにね」
「コチラの参加にいれる。ですか」
(そんなカタチに、持っていくコトがデキるのか?一体どうやって?)
「ソウなれば、コチラとしては利点がおおきいとおもいます。ですが、ぐたいてきに、どういうカタチでそういう方向・ながれに持っていくんですか?ぐたいてきなダンドリ・けいかくが、サッパリ見えないんですが」
「われわれは、いちおう、体制がわのニンゲンであり、一定の権威を持っている。そして、『第3地区にたいして、だまっている』というカタチになる。
コレはつまり、ヤツラからしたら、『かくまってもらえる』というカタチになる。今げんざいの時点・だんかいでは、ヤツラはまったくの非合法であり、公的なそんざいではナイ。だから、とても不あんていで、不安感もあるダロウ。
ソコで、『体制の端クレとはいえ、コチラの傘下にはいれば、かくまわれる』というカタチになり、一種のあんてい感を手にいれる。とかんがえるかもしれない。コレならば、コチラの傘下にはいる動機、リユウ付けにならないダロウか?」
「まったくの非合法という状態・たちばでなくなり、後ろ盾がデキた。と、かんじさせるワケですね?」
「そういう、一種のあんしん、あんてい感をもたせるコトがデキれば、勝算というか、成功する確率は、カナリ上がるんじゃないダロウか。
そして、うまくいけば、行く行くは、この密貿易という行為自体を、丸々すべて、コチラの傘下というか、監視下、コントロール下にいれるコトも、デキるかもしれない」
「丸々すべて、ですか。ソレはチョット、飛躍しすぎではないでしょうか?」
「モチロン、カナリの飛躍がある。でもまあ、『もしかしたら、そうなる可能性も、将来、あるかもしれない』というていどのハナシだよ。
さっきもいったとおり、たとえハズレたとはいっても、イロイロなパターンや選択肢は、かんがえておくに越したコトはナイ。
だからまあ、コレは、確証のある予想じゃナイが、たとえば、『密貿易という行為がおこなわれる場を、コチラで整備し、整えてしまう』というイミだよ」
「場を整備ですか?」
「ソウ、場というか、カンキョウとでもいえばいいのか。ソコを、コチラでチャント整備してしまう。
とはいっても、あまり大々的におこなうワケにはいかない。ハデにやって、特殊警察に目をつけられるワケにはいかない。だからまあ、ちいさなキボには留めるベキだけれどね。
まずさいしょは、セカイ有数の漁場である、沖合の漁場で、漁をしているガイコクの船から、カネをとり、漁を許可するベキだとおもう。
ガイコクのフネは密漁をしている。カレらも、この国が、半鎖国の状態だと知っている。つまり、キケンを冒している。
ソコで、『コレにたいして目をつむる代わりに、カネを払えば漁がデキるようにする。はらわなければ、漁のジャマをする』とつたえる。
カレらも、たかすぎないカネだったら、はらうとおもうよ。今さら、この漁場での漁がデキなくなるのは、避けたいダロウし。
そして、つぎに、カレらにたいして、ほしいモノがあれば売る。とつたえる。ながい航海をしている以上、イロイロと、ほしいモノがあるダロウし。
カレらも、カネをはらい、漁のキョカを得ることで、あんぜんに漁がデキるようになり、そして、ほしいモノを買うコトがデキる。となれば、コチラとの貿易にたいして、多少は乗り気になるとおもう。
ガイコクのフネが、陸に近いトコロに来たら、一定の量のモノを売れるよう、コチラが品物を用意しておく。
今の時点では、コチラがわの密貿易をするニンゲン・勢力は、カンゼンなカタチでの非合法になっているワケだから、あまり商品を用意するコトはデキない。つまり、売るモノがすくない。となれば、あいても、買いたいモノがすくない。となる。
われわれは、斎藤たちの勢力を傘下に収めたワケだから、ソレなりに、商品を用意するコトがデキる。だから、用意するコトがデキる量も種類も、今よりは、おおくなるとおもう。
さらに、斎藤たちの勢力をつかえば、ガイコクから仕入れたモノを流通させたり、売るときも、コチラで行うコトがデキる。
つまり、『ガイコク人がほしがるモノを聞いて、ソレを用意する』という点で、今の密貿易のニンゲン・勢力よりも、われわれのほうが、よりスムーズに、効率よくおこなえるとおもう。
ソレに、われわれは、一応は体制がわの勢力である以上、第4地区の土着の勢力よりも、合法的に、正式に、広い範囲で活動するコトがデキる。もっというと、第3地区にも多少のツテがある。
だから、今げんざいの状態よりも、密貿易というものを、よりスムーズに、効率的に、かつキボもおおきくして、おこなうコトがデキるダロウし、りえきも上げやすくデキるとおもう」
「つまりソレが、『密貿易という行為自体をおこなう場を整備し、整える』というカタチになるワケですね」
「そういうコトになる。とはいっても、コレはまあ、もしかしたら、ソウなるかもしれない。というていどのハナシだよ。カナリ楽観的で、つごうの良い想像にすぎない」
(でも、ハナシを聞いていると、ホントウにソウなるかもしれない)
ココロのなかで、藤柴は、感心したようにおもった。
「徳吉さんのおっしゃるとおり、われわれが、密貿易という行為自体に参加するダケじゃなくて、ソレをおこなうための場というか、カンキョウ自体を整備するコトがデキれば、われわれの影響力というものを、今よりも、たくさんのニンゲンや勢力にたいして、さらにいえば、よりひろい範囲にたいして、およぼすコトがデキそうですね」
と、ココまでいってから、藤柴は、ふと気になるコトがでてきた。




