やってみる価値
「すこしまえに、本田くんのあんないで、ゲンバを見に行ったあの地区で、病人が発生した。というワケか」
「ええ、ソウらしいです。ソレで、あの地区に住んでいるニンゲンが、ナントカ医者を派遣してほしい。という要望をするために、そうだん者としてやってきました。丹羽というニンゲンです」
「その丹羽というニンゲンのハナシを聞くかぎり、『今まで、そういう患者というか病人は、その地区では発生していない』というコトだよね?」
「ソウらしいです」
(ナンでまた急に、そういう病人がでたんダロウか?)
「今まで、何十年間も、そういう症状の病人はいなかった。にもかかわらず、こんかい、はじめて登場した。というワケか」
「ソウなります」
「となると、ドコカから、そのびょうきがつたわってきた。とかんがえるコトがデキるかもしれない。でもいかんせん、シロウトのはんだんにすぎない」
「ソウですよね。ワタシたちでは、いかんともしがたいというか、はんだんがデキません」
「ヤッパリ、せんもん家に見てもらわないと、テキセツなはんだんはデキないか」
「でも、そのせんもん家は、今この地区にはいません」
(前回の無料の医療サービスのときは、桂サンにおねがいして、医者を派遣してもらうコトがデキた。
でも、こんかいもおなじように、派遣を依頼したとして、はたして来てくれるだろうか。ソレに、呼ぶにしても、どのていどカネがかかるのか、サッパリ検討もつかない。
とはいっても、もしも伝染性のたかい、キケンなびょうきなら、放置をしておくワケにもいかない。ヘタをすれば、コレがひろまって、たくさんの死人がでるような事態は、ナントカして避けたい)
「ダメ元で、桂さんに、もう一度、医者を派遣してもらえないか、依頼をしてみるか」
「成功するかわかりませんが、依頼をしてみる価値は、あるかとおもいます」
「わかった。じゃあ、桂さんに依頼をしてもらいたい」
「了解しました」
こうして藤柴は、桂にたいして、「ふたたび医者を派遣してくれないか」と、依頼をしたのであった。
桂からの返事は、「医者にたいして、この件をつたえてみるが、あいて次第だ。コチラから強制や、めいれいはデキない。ソレに、こんかいは無料の医療サービス期間をすぎており、カネがかかるかもしれない。その金額も、あいて次第だ」というコトであった。
(まあ、こういう返事になるよなあ)
この桂からの返事というものを、藤柴は、徳吉につたえた。
「聞くかぎり、予想したとおりというか、ハッキリしない返事になったか」
「ソウですね。桂さんとしても、さすがに医者にたいして、『また第4地区に行って、無料で医療サービス・診断をしろ』とは、めいれいや強制はデキないでしょうから」
「ソウだよなあ」
と、徳吉はいったのであるが、ソコで、ふと気になるコトがでてきた。
「アレ?ソウいえば、まえに無料の医療サービスをおこなったとき、ナンでコレが、スンナリとまかりとおったんだ?」
「どうしました?」
「イヤ、よくかんがえてみれば、まえに、『無料の医療サービスをおこないたい』というコトを、桂さんにつたえたとき、あいては、つまり医者たちは、コレにたいして賛同してくれた。
無料であるにもかかわらず、何人かやってきてくれた。そしてコチラからは、報酬をはらうコトなく、ホントウに無料だった」
「ソウですね」
「じゃあ、ナンでこのときは、あの医者たちは、無料での医療サービスなんて、承知したんダロウか?」
「ナルホド、いわれてみると、たしかにソウですね。じぶんたちのシゴトがあるにもかかわらず、ソレを一旦止めてまで、無料でコッチにやってきてくれました。
コチラとしては、まあ最低限の食事だとか、滞在するトコロは用意しましたが、ソレ以外は、ホントウに無料でした。タダばたらきです。
たしかに、ナンでまた、カレらは、無料でやってきてくれたんでしょうね。あらためていわれてみると、違和感をおぼえます」
「カレらの動機だとかリユウは、一体ナンだったんダロウ。ナニカ聞いてないかい?」
「う~ん、医者たちにたいして、『ナンでこんかい、タダできてくれたのか』なんていうコトを、イチイチ聞いてはいませんからね」
「ソレはまあ、ソウなるダロウね。オレもイチイチ聞いていない」
「あえて楽観的になれば、カレらが前回、一体ナンで、どういうリユウや動機で、無料の医療サービスを引きうけてくれたのか。その動機・リユウがわかれば、こんかいも、何人か、きてくれるかもしれませんね」
「そういうコトになる。でも、その肝心の動機だとかリユウが、サッパリわからない」
「同感です」
(カレらは医者という、しゃかい的に、たかい地位にいる。上位階層といってもいい。そして、一定の報酬だとか、待遇をうけている。
だったら、もしも有料だとしたら、カナリたかい金額をはらわないと、やってきれくれないダロウ。でも前回は無料でやってきた。ココに、ナニカしらのヒントがあるんダロウか?)
こうかんがえたときに、徳吉は、無料での医療サービスをおこなっていたときの医者たちの表情、たいど、ふるまい、発言、言動などを、アレコレとおもいだしていた。
(医者たちは、あのとき、妙に興味津々というか、つよい関心、興味を持って、この第4地区の風景やようす、さらに、住んでいるニンゲンのコトを、知りたがっていた気がする。
そして、この第4地区にかんする資料を読んでみたい。と、のぞむニンゲンがおおかった。たんじゅんに、『医療をおこなうときに、住んでいるニンゲンのカンキョウが、重要になるから』というイミのコトを、コチラにたいして言ってはいた。でも、もしかしたら、ソレだけではナイのかもしれない)
「もしかして、じぶんの好奇心だとか、ちしき欲を満たすために、あのときは、無料で引き受けたんダロウか」
「どうしました?」
「イヤ、ナンで前回、医者たちは、無料での医療サービスの提供を、引きうけたんダロウか。その動機・リユウをかんがえてみると、たんじゅんに、『びょうきでくるしみ、こまっているニンゲンをたすけたい』っていう、いわゆる、職業上の倫理観だとか、道徳心だけじゃナイかもしれない。と、こうおもえてね」
「ソレがつまり、好奇心、ちしき欲。っていうコトを、おっしゃりたいんですか?」
「ああいう高学歴で、アタマの良いニンゲンっていうのは、ゼッタイ欲みたいな、即物的なよくぼうじゃなくて、抽象的というか、形而上的なよくぼうが、フツウのニンゲンよりも、カナリつよいかもしれない。
だから、『じぶんがまだしらない、見たコトがない、あたらしい未知のコトを知りたい』っていう好奇心だとか、ちしき欲についても、カナリつよいんじゃないかとおもえてね」
「好奇心、ちしき欲がつよい。ですか」
(第4地区にくるコトと、ソレを満たすコトに、一体ナンのカンケイ性があるんだ?)
「コレはカンゼンに、オレの想像になるワケだけど、この国は、ガイコクとの貿易や交流にたいして、カナリきびしい制限をくわえている。だから、フツウのニンゲンは、ガイコクにたいして旅行したり、行くコトがデキない」
「たしかに、ソウですね。となると、ガイコクという未知のコト、あたらしいコトを見たり、知るコトはデキません。つまり、好奇心だとか、ちしき欲を満たすコトがデキないでしょうね」
「その上さらに、国内も、じゆうに旅行したり、移動するコトがデキない。いわば、鳥カゴのなかにいる。そういう状態といってもいいとおもう。
となると、ああいう知的なニンゲンとしては、鳥カゴっていう状態にある以上、今のじぶんの身のまわりと、ちがうカンキョウやばしょに旅行したり、移動するコトがデキない。つまり、見るコトも、知るコトもコトもデキない。
コレは、フツウのニンゲンよりも、カナリつよい好奇心だとか、ちしき欲を持っている。それのに、これらを、ほとんど満たすコトがデキない。そういうカンキョウにいる。というカタチになるとおもう」
「いわれてみると、そのとおりかもしれません。でも、ソレが第4地区と、一体ナンのカンケイ性があるんですか?」
「第3地区以上に住んでいるニンゲンは、キホン的に、第4地区にいくコトはデキない。コレはつまり、第4地区自体が、じぶんがフダン、見るコトも、知るコトもない、未知のコトになる。とはいえないダロウか」
(ナルホド)
徳吉の指摘を聞いて、藤柴は、唸ってしまった。
「ソウかんがえると、カレらが、じぶんにとって、おカネやケイザイ状態に、まったくナンのトクもナイし、プラスがナイのに、第4地区での医療サービスの提供に、ナゼ協力をしたのか。このコトについて、なっとくのいく動機・リユウになりそうですね」
「国内とはいえ、フダンは禁止されている地域・ばしょに、合法的にいくコトがデキる。そして、『ガイコクにいけない以上、せめて国内のなかで、フダンいけないばしょに行ってみたい』とおもおうのは、好奇心だとか、ちしき欲のつよいニンゲンからしてみたら、フシギではナイ。だから、みずから手を挙げたとしても、けっしてオカシクはナイ気がする。
その証拠とまではいえないが、無料での医療サービスをしていたとき、医者たちは、妙にこの第4地区のコトについて、アレコレと、コッチにたいして聞いてきた。資料も読みたいといってきた。
そのときは、たんじゅんに、『患者がフダン、どういうカンキョウにいるのか。というコトが、診断をする上で、たいせつ・重要になるんダロウ』とおもっていたが、どうも、ソレだけじゃナイかもしれない」
「つまりソレは、未知のコトを知りたい。という好奇心だとか、ちしき欲を満たすために、コチラにたいしてアレコレ聞いてきたり、資料を読んでいた。というワケですね?」
「ソウじゃないかとおもう。でなければ、ナンで無料での医療サービスという、いわゆるボランティアなのに、みずから積極的に、参加してきたのか。
そして、アレだけ興味津々なカオつきで、つよい関心、興味を持っていたのか。っていうコトについて、せつめいがつかない気がする」
「となると、こんかいも、そういう『知的な好奇心・ちしき欲を、満たせるんじゃないか。と、あいてがおもうようなカタチで、協力を依頼する』というコトですね?」
「ハナシがはやくてたすかるよ」
(ホントウに、よくそんなコトに気がつくな、このヒトは)
「まえにきたときに、医者たちが読んでいない資料は、さがせばまだあるハズです。ちなみに、どういうジャンル・種類の資料をあつめましょうか?」
「医者たちが、各々、どういうジャンルに興味・関心を持っているのかは、サッパリわからん。まあ各々、違うダロウしね。
だからまあ、可能なかぎり、ひろい範囲やジャンルの資料をあつめよう。もっというと、あたらしい情報・じじつがないか、さがしてみよう。
ソウかんがえてみると、このジム所のそうだん業務は、カナリ役にたつかもしれない」
「ナルホド、そうだん者のいっているコト。つまり、ないよう自体が、もうすでに、『この第4地区にかんする情報』といえますからね。
でしたら、そうだん者のいっているコト、ないようを記した資料も、整理しておくベキですね」
「ソレが良いね。広く浅くになるかもしれないけど、ひろいジャンル・範囲のちしき・情報が書いている資料を、可能なかぎりたくさん、用意しておくベキだね。
モチロン、今まで言ったコトが、アタリであり、正解であるとはかぎらない。そういう保証なんていうものは、まったくナイ。オレのたんなるカン違いかもしれない」
「でも、徳吉さんのいう仮説が、たとえ間違っていて、ハズレだったとしても、コチラとしては、とくべつに目立つような、おおきな損やマイナス、キケン・モンダイ・トラブル・モメゴト、ヒガイ・そんがいは、ナイとおもいますよ。まあ『医者がきてくれない』という事態にはなりますが。
もしもあたっていれば、また無料で、医者がきてくれるかもしれません。ソレならソレで、コチラとしては、プラスになりますし。
まあホントウに、医者がココにやってきたトコロで、病人が治る保証はナイですが。でも、タチのワルイ伝染病がまん延するリスクを、へらせるコトがデキるかもしれません。
そんなモノがまん延すれば、われわれ自身が、ソレに感染してしまいかねません。そういうリスク・キケン性っていうものは、ヤッパリ可能なかぎり、じぜんにはいじょして、つぶしておきたいですし」
「やってみる価値はあるか」
「ソウおもいます」
ソウいうと、藤柴は、じゅんびに取りかかるため、その場をあとにしようとした。そのときである。
ふと徳吉のアタマに、無料での医療サービスの提供のときにやってきた、伊藤のコトが頭にうかんだのであった。




