自家中毒
数日後、徳吉は、みずからつくった資料を、あたらしく入ったメンバーたちに配布した。ソレを読んだときに、ほとんどのニンゲンは、真剣になっていた。ソレと同時に、イキイキとしているようにも見えた。
ソレはおそらく、「はじめて、じぶんのチカラ・のうりょく・さいのう・才覚が、正当にみとめられた。そのチカラをかつようし、いかすコトがデキるばしょを手にいれた」というコトで、よろこびをかんじるのと同時に、かつどう・シゴトにたいして、ヤリガイもかんじているようであった。
「ニンゲン、じぶんの持っているチカラ・ずのう・のうりょく・さいのうを発揮して、ソレをいかす場がないと、鬱屈がたまるらしい」
イキイキとしてシゴトをして、はたらいている光景・ようすを見て、藤柴は、こうつぶやいた。
「どうしたんだ?とつぜん」
近くにいた高井が、こう聞きかえした。
「イヤ、カレら、カノジョらは、今までずっと、すぐれたチカラというか、たかいレベルのずのう・さいのう・のうりょくを持っていたんダロウけど、この第4地区では、ソレを発揮して、いかすコトがデキる場やカンキョウが、なかったんだとおもってね」
「ソレはまあ、ソウなるダロウね。たんじゅんな、アタマをつかわないシゴト、肉体ろうどうのシゴトしか、なかったダロウし」
「オレの見るトコロ、このあたらしく入ったメンバーたちは、このそしきにたいして、忠誠心というか、帰属いしき、参加いしきとかを、つよく持っているように見える」
「ソウいわれてみると、たしかにソウかもしれない」
「士は己を知る者のために死す。っていうコトバがあるけど、『すぐれたチカラ、たかいレベルのずのう・のうりょく・さいのうを持っているのに、ソレをダレからも評価されず、みとめられない』っていう状態は、耐えがたいのかもしれない。
ダレからも評価されず、みとめられない。その上さらに、ソレを発揮して、いかすコトがデキる場やカンキョウがナイ。コレでは、鬱屈するのもアタリマエだし、しかたがナイか」
「もっというと、ナンていうか、自家中毒になってたのかもしれん」
「自家中毒?」
「たかい知能レベル・ずのうレベルを持っているのに、ソレを発揮して、いかすコトがデキない。つかうコトがデキない。
でも、フツウのニンゲンよりも、たくさんのチカラを持っているワケなんダロウ。だったら、ソレを、『ソトにたいして、発揮するコトがデキない』っていうコトは、じぶんのなかに、ソレがドンドンたまりつづける。
となると、腐ってくるっていうか、中毒症状みたいになるんじゃないのか?」
「たしかに」
こういうコトをハナシながら、藤柴も、高井も、ふたりとも、じぶん自身のコトを、かんがえてしまっていた。
ナゼならば、ふたりとも、やはり、フツウのニンゲンよりも、カナリたかいレベルのチカラ・ずのう・のうりょく・さいのうを持っているのである。
そして、今までいきてきて、「ソレを発揮して、いかすコトがデキない」という状態が、ながかった。
だがしかし、今はこうして、ソレを発揮して、いかすコトがデキる場・カンキョウがあるのだ。そのために、あたらしく入ったメンバー、優秀で有能なニンゲンたちの感情・キモチというものが、まるでじぶんのコトのように、イタイほどわかったのである。
(たぶん、このキモチや感情は、徳吉さんも持っていたんダロウ。見たトコロ、あのヒトも、フツウのニンゲンよりも、カナリたかいレベルのチカラ・ずのう・さいのう・のうりょくを持っている。
でも、今までソレを発揮して、いかすコトがデキなかった。強制ろうどう施設にいたときはモチロンだけど、たぶん、そのまえに、支所にいてシゴトをして、はたらいていたときから、ソウだったんダロウ。だからこそ、このあたらしく入ったメンバーたちのキモチ・感情が、よくわかったんダロウ。
でなければ、『無料で提供の医療サービスに、何度もきている』というコトだけで、カレら、カノジョらのホンネのキモチ・感情っていうモノを、見抜くコトがデキるハズがナイ。じぶん自身がソウだったからこそ、わかったんダロウ)
藤柴は、内心において、こうおもった。
「トコロで、こんかいのコトだけど、いちれんのながれ。といってもいいか。まるで知能犯というか、詐欺師みたいなんだよなあ」
と、高井がポロっといった。
「知能犯で詐欺師?一体ナニをいってるんだ?」
藤柴が、不審がって聞きかえした。
「イヤ、徳吉さんのかんがえた、この案というか、策というか。ナンていうか、ニンゲンの心理やら、ココロのうごきというか、キモチ・感情の機微とかを、絶妙につかんでいるというか、ソレをうまくシゲキして、ニンゲンをうごかしているというか」
「どういうイミだ?」
「イヤ、コレ以上は、うまくいえん。深い意味はナイ。わすれてくれ」
(とはいっても、コイツのカンは、よくアタルんだよなあ)
ソウおもいながら、目のまえで、かっぱつにうごき、かつどうし、シゴトをしている、あたらしく入ったメンバーたちを見ていたら、藤柴は、高井のいったコトが、ナンとなく、わかるような気がしてきた。
「オマエのさっきのひとこと、もしかしたら、核心というか、要点や本質を突いてるのかもしれん」
「ナンだよ、とつぜん」
「このあたらしく入ったメンバーたちは、ほんにん自身が気がつかないうちに、コチラのホントウの真のもくてき、ねらい、意図にたいして、みずから積極的に、そっせんして協力し、うごいて、かつどうをしている。
コレって、ぎゃくにいえば、あいてを、『コチラにたいして、積極的に協力させるコトに成功している』といってもいいワケだ。そうカタチになるダロウ。
コチラのホントウの真のもくてき、ねらい、意図っていうのは、つまり、最終もくてき地、ゴールっていうのは、『今のこの国の政治体制や統治機構っていうものを、可能なかぎり、こわしてしまいたい。あるいは、変えてしまいたい』っていうコトになる。
でも、このヒトたちは、ソレをまったくしらない。ナンセ、コチラがソレを、まったくしらせず、つたえていないワケだから。
まあこんなコトを、大っぴらに、たすうのニンゲンにたいして、つたえるワケにはいかない。そんなキケンでリスクのたかいコトを、おこなうワケにはいかない。
もしかしたら、カンのするどいニンゲンというか、アタマの良いヤツだったら、ミライのドコカの時点・だんかいで、コチラのホントウの真のもくてき、ねらい、意図っていうものを察知して、気がつくかもしれない。
でも、もしもソレを察知して、気がついたとしても、ぐたいてきに、ソレを示すようなモノがナイ。ナニもナイ。
つまり、証拠がナイ。ナンセ、コチラはソレを、まったくつたえていないし、書類にも書いていないワケだから。
もっというと、もしもホントウに、コチラの真のもくてき、ねらい、意図がじつげんし、たっせいされたとき。
つまり、今のこの国の政治体制や統治機構にたいしてヒビがはいったり、崩壊したとしたら、あるいは、ソコまでいかずとも、穴を開けるコトがデキたならば、ソコにはおそらく、あるていどのじゆう・権利がうまれる。たぶん、今よりもソレが、手にはいるとおもう。
そしてソレは、優秀で有能なニンゲンにとっては、つまり、このあたらしく入ったメンバーたちにとっては、おそらく、喉から手が出るほどに、ほしいモノになる。
となれば、手を貸した、協力をしたニンゲンからすれば、じぶんたちがおこなったコトで、いつの間にか、今の理不尽な政治体制がこわれたり、弱体化するコトになる。
そして、じぶんたちが、『喉から手が出るほどほしい、じゆう・権利が手にはいる』っていうカタチになる。
というコトであれば、ホントウの真のもくてき、ねらい、意図である、最終的なもくてき地、ゴールにたいして、ホントウに到達し、じつげん、たっせいしたときに、カレら、カノジョらにしても、マイナスはほとんどナイ。ソレどころか、『プラスであり、トクをして、メリットがある』っていうカタチになる。
だから、ホントウに到達し、じつげん、たっせいしたときに、おおきなフヘイ・フマン、あるいは、怒りの感情をいだくっていう可能性・確率は、カナリすくないとおもう。
もしも、そのときに、おおきなフヘイ・フマン、あるいは、怒りの感情っていうものを持ってしまえば、ソレまで味方だったのに、裏切って、敵にまわってしまうリスク・キケン性が、カナリたかくなる。
全員とはいえないにしても、おそらく、ほとんどのメンバーが、最終的なもくてき地、ゴールにたいして到達し、じつげんし、たっせいしたときに、敵にまわるコトがナイ。ソレどころか、むしろ、おおいによろこんで、賛同するんじゃないか?」
「ソレはたぶん、ソウなるダロウね。カレら、カノジョらは、今の状態にたいして、つよいフヘイ・フマン、怒りの感情を持っていた。だからこそ、コチラが用意した策や案に、みずから積極的に、そっせんして、のぞんで参加をしてきた」
「ダロウね。今げんざい、じぶんの持っている、たかいレベルのすぐれたチカラ・ずのう・のうりょく・さいのうを発揮して、ソレをいかすコトがデキない。ソレを、ソトにたいして吐きだすコトがデキない。
そのせいで、じぶんのなかに溜まりつづけて、腐って、自家中毒のような状態になり、鬱屈していたんダロウ。
さらに、じぶんと似たようなニンゲンと、出会うコトもデキなかった。だから、こどく感・こりつ感をかかえていた。
もっというと、まわりのニンゲンから、評価されず、無リカイに苦しんでいた。気をつけないと、ヒドイないようのイジメ・はくがい・さべつの対象になりかねない。あるいは、そういう目に遭っていたニンゲンも、いるとおもう。
そして、たかい知能レベル・ずのうレベルを持っているニンゲンは、ゼッタイ欲のような、即物的な欲求だけじゃなくて、抽象的で形而上的な欲望といえる、『じぶんのチカラ・のうりょく・さいのう・才覚が評価されて、みとめられたい』っていう承認欲求だとか、『じぶんのチカラ・のうりょく・さいのう・才覚を、フルに発揮したい』っていう自己じつげんの欲求や、ちしき欲を、つよく持っている。
これらがすべて、満たされない状況にいた。でも、あるていどなら、それらを満たすコトがデキる場やカンキョウを、手にいれるコトがデキた。
だったら、コチラのホントウの真のもくてき、ねらい、意図である、最終的なもくてき地、ゴールにたいして到達し、じつげんし、たっせいしたときに、コチラにたいして、つよいフヘイ・フマン、怒りの感情を持ってしまい、はんたい・ていこうし、敵にまわるようなニンゲンは、ほとんどいないんじゃないか?」
「とはいえ、ゼッタイなんていうモノは、この世にナイから、もしかしたら、すこしくらいは、そういうニンゲンがでてくるかもしれない。
でもまあ、ヤッパリほとんどのニンゲンは、コチラの敵にまわるようなコトはナイと、オレもおもう」
「ダロウね」
「ソレにしても、ヤッパリ徳吉さんのかんがえた案や策は、つくづく、よくデキてるんだよなあ」




