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フヘイ・フマン・怒り

 しばらくしてから、徳吉たちのジム所の一室は、いわば、図書館のようになっていた。ココには、医者にたいして、何度もやってきており、そして、医者のメガネに叶ったニンゲンが、つまり、医者というフィルターにたいして引っかかり、リトマス試験紙にたいして適合したニンゲンが、やってきていた。

 皆が皆、ソレこそむさぼるようにして、桂からとどけられた書物を読んでいた。そういうニンゲンにたいして、徳吉、藤柴、高井の3人が、ころあいを見計らい、「もしも、ないようがわかり、りかいするコトがデキたんであれば、ワタシたちに、おしえてくれませんか?せつめいをしてほしいんです。じぶんでは、チョットよくわからないんです。ですので、もしも、ないようをわかり、りかいするコトがデキた方がいたら、おねがいいたします」と、下からおねがいする。というカタチで、コレを依頼したのである。

 すると、何人かが手を上げた。そして、ハナシを聞いているうちに、「ないようを、ただしく、深くりかいしている。そして、チャント言語化し、シロウトのコチラにたいして、テキセツに、的確にせつめいし、つたえるコトがデキている」というニンゲンが、何人かいたのである。

 そういうニンゲンがいたときは、あいてのニンゲン性、ないめんの性格・人格・人柄などを知るために、アレコレとしつもんしたり、ハナシをするのである。

 そして、「これらにおおきなキケン・もんだい・欠陥・欠落がない」というニンゲンにたいしては、みずからの勢力・そしきにたいして、参加しないか勧誘をしたのだ。

 この勧誘にたいして、ほぼすべてのニンゲンが賛同し、参加したのであった。コレはつまり、「たにんにホメられ、みとめられたい」という承認欲であったり、あるいは、「じぶんの持っている、ずのう・のうりょく・さいのう・知能を、フルにかつようし、生かしたい。ちしき欲を満たしたい」という、即物的ではない、抽象的で形而上的な欲望というものが、やはり、「ずのうレベル・知的レベルのたかいニンゲンほど、コレがつよい」というコトを、しめしているといえた。

(どうやら、コチラの想定はあたったか)

 予想をした以上に、たくさんの優秀で有能なニンゲンたちを、つまり、じんざいを、かくほするコトがデキた。という成果・結果にたいして、徳吉は、おおきなマンゾク感をおぼえていた。

 今日もまた、ジム所の一室で、一心不乱に本を読んでいるニンゲンが、何人もいた。そういう光景・ようすを、目にするコトが何度かあった。

 そして、あるとき徳吉は、あるコトにたいして気がついた。ソレは、さいしょのうちは、各々が、赤の他人であり、おたがいに、ハナシをするコトはナイのだが、「何度かカオを合わすうちに、知り合い同士になっていく」という光景・ようすであった。

(たしか、このヒトたちは、おたがいに住んでいるところが、まったくちがうし、面識のない者同士と聞いているけど、ダンダンと打ち解けて、仲良くなっているんダロウ)

 と、さいしょのうちは、そのていどにかんじたのであった。だがしかし、よく見てみると、ソレは、たんなる「知りあい同士」だとか、「友人」というカタチの間柄・かんけい性には見えない。というコトであった。

 そういうニンゲン同士は、モチロン、全員がソウではナイのだが、一旦仲良くなると、「とても親密になり、おたがいに、カナリ突っこんだ話をしている」というコトが見て取れた。

(なまじアタマが良いから、じぶんのまわりに、今まで、似たようなタイプだとか、似たようなレベルのニンゲンがいなかったんダロウ。

 でもこうして、じぶんとよく似たニンゲンと、はじめて知り合えて、つながるコトがデキた。そのコトが、ウレシイんダロウ)

 と、おもったのである。だがしかし、その光景・ようすを見てみると、どうも、そうたんじゅんなキモチ・感情には見えかった。

 徳吉がかんじとった感情・キモチは、ある種のつよいフヘイ・フマンだとか、怒りにも似たものであった。

(なんだか、このヒトたちは、知り合って仲良くなって、ハナシをしていうくちに、ダンダンと、フヘイ・フマンだとか、怒りをかんじているように見えるのは、気のせいダロウか)

 優秀で有能なニンゲンであり、ニンゲン性やないめんの性格・ひとがら・人格に、おおきな欠陥や欠落、もんだいのないニンゲンを、コチラのそしきに勧誘し、いれたのである。

 そして、そしきに入ったあと、カレら、カノジョらと、さらによく会い、ハナシをするようになったワケだが、やはり、カレら、カノジョらは、ダンダンと、つよいフヘイ・フマン感、怒りを持っていくように見えたのである。

(このヒトたちは、一体ナニにたいして怒っているんだ?まさか、オレたちにたいして、フヘイ・フマンをかんじて、怒っているのか?)

 と、すこしだけ警戒をしたのであるが、ソレは、コチラのカン違いであると、すぐにわかった。カレら、カノジョらは、徳吉たちにたいして、怒っているどころか、正はんたい・まぎゃくであり、つよい感謝のキモチを示していた。

 ある日、徳吉が、つよい怒りや、フヘイ・フマンのりゆう・ワケを聞いてみると、ほとんどのニンゲンが、おなじようなコトをこたえた。ソレは、「知ったからですよ」と。

(知ったから?一体ナニをだ?)

 この意見を聞いたときに、徳吉は、ナニがいいたいのか、そのイミが、サッパリわからなかった。

(どうにも、アタマの良いニンゲンっていうのは、せつめいがすくない。大事なところをはぶいたり、省略したりして、だんぺん的にしかいわないコトがおおい。主語がナイから、一体ナニがいいたいのか、要領を得ない)

 こうおもい、徳吉は、さらに聞きかえした。

「知ったから。といいましたが、ちなみに、一体ナニを知ったんですか?」

 こういうコトを聞いてみると、これまた、似たような答えが、ふくすうのニンゲンから返ってきた。

「じぶんが今げんざい、いかに理不尽で、不平等で、不公平な目に遭っており、なんの権利も、じゆうも持っていない。というコトを、知ってしまったんです」

 というコトであった。

(知ったから、か)

 ニンゲンは、しらなければ、いしきをするコトはナイ。だから、にんしきをするコトもナイ。「今げんざいの時点・だんかいで、じぶんがどれほど、不公平であり、不平等であり、理不尽な状態に、置かれてしまっているのか」というコトを、知るコトがなければ、ソレが、「アタリマエの状態だ」と、おもってしまいガチである。

 そして、「アタリマエの状態だ」と、心底から、ギモンの余地なくおもいこんでいるのであれば、フヘイ・フマン、怒りなどを、あまりかんじないであろう。ナニセ、ソレがアタリマエの状態なのだから。

 だがしかし、カレら、カノジョらは、知ってしまった。というのである。

(たしかに、このヒトたちは、じゆうも権利も持っていない。教育をうけるコトも、まっとうなシゴトに就くコトも、移動したり、住むばしょをえらぶコトもデキない。

 強制的に税は取られているのに、その見返りとなる行政サービスというものが、ほとんどナイ。取られるいっぽうだ)

 と、カレら、カノジョらが、かんじてしまったというフヘイ・フマン、怒りにたいしては、至極とうぜんであり、まっとうなキモチ・感情であり、「ソウおもうのもムリはなく、アタリマエのコトなんダロウ」と、徳吉はおもった。

 そして、ソレと同時に、

(じゃあ、ナニをキッカケにして、ソレを知ったんだ?)

 と、こうおもったときに、ふとアタマにうかんだのである。

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