撒き餌
(どうしたんダロウ。ナニカ間違えたかな?)
「正確にいうと、トリプルチェックにしたいとおもう」
「トリプルチェックですか?つまり、3回かくにんし、チェックをすると?」
「デキるコトなら、ソウしたい」
(しかし、一体どうやって?)
「一番さいしょに、医者がチェックをするワケですよね。その後、ジム所にやってきたあと、コチラがあいてをハナシをしたり、しつもんを聞いたりして、あいてのコトを評価し、はんだんをする。とういうカタチ・ながれですよね?」
「ソウなる」
「だったら、3回ではなくて、2回のかくにん・チェックになるとおもうんですが。3回目は、一体ダレがやるんですか?」
藤柴がこのように聞くと、徳吉は、すこしニヤリとわらった。
「ニンゲンが、ソレをおこなうりゆう・ひつよう性は、ナイとおもうよ」
(一体どういうイミだ?)
「スイマセン、おっしゃるイミが、チョットわからないのですが」
藤柴がこう聞くと、徳吉は、いちまいのメモをわたした。そのメモには、第3地区にいる桂にたいする、依頼ないようが書かれていた。
「可能なかぎり、たくさんのジャンル・ぶんやの学術書、せんもん書、資料などを、可能なかぎり、たくさん送ってほしい。そして、デキるコトならば、ないようレベルのたかいモノを。そう書いてあるワケですが、コレがナニカ?」
「バカで無能なら、コレを読めないダロウ」
「ナルホド、たしかに」
(この手の本や資料、書類を、チャント読めるかどうかで、そのニンゲンの知的レベル・ずのうレベルは、たしかにわかるかもしれない。
バカで無能なら、そもそも、コレを読むコトがデキないし、読んでもないようがわからず、りかいするコトもデキない。だから、『読もう』という気もおきない)
「こういうレベルのたかい本や資料、書類を、みずから好んで、そっせんして読もうとするのか。そして、読んだあと、ないようを聞いてみれば、あいてがどのていど、ないようをりかいしているのか、わかりそうですね。でも、チョット気になる点があるんですが?」
「気になる点というと?」
「しつもんをするコチラとしても、せんもん的でレベルのたかい本、資料、書類を、チャント読みこんで、ないようをりかいする。そのひつよう性が、あるかとおもいます。
でも、ワタシも高井も、ナニカのジャンル・ぶんやのせんもん家ではナイです。ですから、あいてにたいして、テキセツなしつもんを聞くコトがデキるのか。チョット自信がありません」
「ソレは、オレもまったくおなじだよ。というか、オレ自身、せんもん的でふくざつ難解、高度なコトは、サッパリわからない」
「となると、あいてが『チャント本を読んでいて、かつ、ないようをりかいしているのか』っていうコトが、わからないとおもうんですが」
「ナルホド、ソレは一理ある。というか、オレのいいかた、せつめいが悪かったかもしれない。ナニもコチラが、面接官や試験官なるっていうワケじゃないよ」
「といいますと?」
「むしろ、コチラが下になって、『わからないので、もしないようをりかいし、わかったのであれば、おしえてください』と、聞いてみるんだよ」
こういわれ、藤柴はすこし、こんわくしてしまった。だがしかし、ダンダンと、徳吉のいいたいコトがわかってきた。
「ナルホド、もしもあいてが、書いてあるコトを、ないようを、チャントりかいし、わかっているのであれば、そのないようを、チャント言語化し、コチラにたいして、めいかくに、テキセツにせつめいすることがデキる。というワケですね」
「そのとおり、わかったフリをしているかどうか。というコトだったら、たぶん、シロウトのわれわれでも、わかるとおもう。ソレくらいの評価、はんだんは、デキるとおもう。
もしもホントウに、ないようを深く、そして、チャントりかいしていれば、おそらく、シロウトのコチラにたいしても、あるていどであれば、わかりやすいカタチで、せつめいがデキるダロウし。
コレがデキているのなら、そのあいては、やはり、一定以上の知的レベル・ずのうレベルを持っている。もっというと、モノゴトのりかい力が、カナリたかい。といってもいいか」
「つまり、おしえてください。と、下から聞いて、しつもん者のフリをしながら、じっさい的には、あいてのコトを、つまり、あいての知的レベル・ずのうレベルが、一体どのていどなのか。というコトを、はんだんし、評価をしてしまう。と、こういうワケですか?」
「まあ、そういうコトになる」
(ホントウにこのヒトは、とんでもない角度の視点でモノゴトを見たり、かんがえたり、発想をする。
おそらく、あいても、まさかじぶんが、しつもんをされながらも、『じぶんのコトを評価され、はんだんされている』なんて、ユメにおもわないダロウ)
徳吉のかんがえた、あるイミにおいて、悪知恵ともいえる案や発想に、藤柴は、唸ってしまった。
「まあコレは、撒き餌でもある」
「撒き餌ですか?」
(一体ナニをいいだすんだ?)
「3回目のかくにん・チェックっていうのは、わかるんですが、撒き餌となると、おっしゃりたいコトが、サッパリわかりません」
「ソレはモチロン、優秀で有能かもしれないニンゲン。つまり、じんざいのこうほ者にたいする、エサのコトだよ」
「エサを蒔くベキ対象者というのは、じんざいのこうほ者になるワケですよね。でも、撒き餌っていうコト自体が、どういうイミになるのかが、どうにも、ピンとこないんですよ」
「ちしき欲を満たすコトがデキる。っていうのは、知的レベル・ずのうレベルのたかいニンゲンからしたら、ソレだけで、ココにきたがる、十分なりゆう・動機になるとおもうんだよね」
このようにいわれ、藤柴は、ダンダンと、徳吉がいわんとするところが、わかってきた。
「ナルホド、たしかにソウですね。この第4地区では、高等教育機関がナイ。そのために、せんもん的なちしきを知るコトがデキない。そういう場が、そんざいしていない。ソレどころか、図書館すらありませんからね」
「だから、ずのうレベル・知的レベルのたかいニンゲンは、つね日ごろから、ちしき欲に飢えている。この『ちしき欲にたいする飢餓感』というものは、相当なものであり、カナリつよいとおもう」
「だからこそ、『アタマの良い医者と、ハナシをしたい』だとか、『医者から、せんもん的なちしきを聞きたい』とかんがえて、コレをりゆう・動機にして、ケンコウなのに、こうして何度もやってきている。そういう想定ですもんね」
「ソコでさらに、せんもん的な本を、タダで、合法的に読むコトがデキる。という場があれば、みずから率先して、この場にくるとはおもわないかい?」
「おもいます」
「ニンゲンの持っている欲求・よくぼうは、カンタンに消すコトはデキない。まして、ずのうレベル・知的レベルのたかいニンゲンが持っている、ちしき欲っていうのは、フツウのニンゲンよりも、カナリつよい。
だがしかし、この第4地区では、ソレを十分に、満たすコトがデキない。そういうカンキョウだとか、場がそんざいしていない。
ソコで、この場があれば、どうダロウか。ソレこそ、撒き餌を蒔いた後に、たくさんのサカナが寄ってくるようにして、このばしょに、みずからのぞんで、そっせんしてやってくる。と、オレはこうおもんだけれども、どうだろうか?」
「いわれてみて、なっとくですよ」
「ソレに、今までかんがえたコトが、想定したコトが、たとえカンゼンにハズレており、おこなってみて、ミス・しっぱいをしたとしても、コチラとしても、たいした損も害もない。だったら、やってみる価値はあるとおもう」
「ワタシもおもいます」
こうして、この案は実施された。




