ソウはいかない
「どうしたんですか?」
「今君がいったとおりだよ」
(どういうイミだ?)
藤柴は、怪訝そうなカオをした。
「イヤ、こうして君が、用事もナイのに、わざわざオレに会いにきて、ハナシをしているワケだよね。
そしてオレも、ソレを、まったく不快におもわないし、めいわくでもない。むしろ、かいわをたのしんでいる。
コレとおなじコトが、この何度も診療にやってくるニンゲンにも、あてハメるコトがデキるんじゃないダロウか?」
「つまり、ハナシをするコト自体がもくてきであり、りゆう・動機である。というコトですか?」
「ソウかもしれない。と、オレはおもったよ」
(ソレが一体、どうしたんダロウか?)
徳吉のいわんとするコトを、りかいするコトがデキず、藤柴はすこし、とまどってしまった。そのようすに、徳吉は気がついた。
「すこしくわしくいうと、ニンゲンは、じぶんと似た種類・レベルのニンゲン同士では、ハナシが良く噛みあい、コミュニケーションがうまく取れる。
ぎゃくにいうと、じぶんとあまりにもちがうタイプのニンゲン同士では、まったくハナシが噛みあわない。だから、コミュニケーションというものが、うまく取れない。
そして、ずのうレベル・知的レベルのたかいニンゲンっていうのは、アタリマエのコトだけど、その数がすくない。
というコトは、しぜんと、じぶんのまわりには、じぶんと似た種類・レベルのニンゲンがいない。つまり、『じぶんと、ずのうレベル・知的レベルが似たニンゲンが、まわりにいない』というカタチになる。
ろこつにいうと、『まわりはバカばかり』という状態になる。そしてコレは、まわりにたくさんのニンゲンがいても、『じぶんひとりだけが、ポツンといる』という状態になる。つまり、『こどく・孤立』というカタチになる。
こういうとき、ニンゲンは、とてもアブナイし、キケンな状態になる。たんじゅんに、まわりにいるニンゲンと、まったくハナシが噛みあわず、コミュニケーションがうまく取れない。だから、まわりとのニンゲンかんけいが悪化しやすい。
となると、まわりのニンゲンから、ヒドイないようのイジメ・迫害をうけたり、危害をくわえられやすい」
「たしかに、ソウでしょうね。まわりのたすうと、ハナシが噛みあわず、コミュニケーションがうまく取れなければ、どうしても、じぶんひとりだけ、まわりから、ポツンとういた状態になりやすいでしょうし。
そういう少数派というか、異端者にたいして、ヒドイないようの危害をくわえたり、迫害をするっていうのは、ニンゲンが持っている、直しようがない、ワルイとくちょう・性質でしょうから」
「そのとおりだよ。オレもソウおもう。そして、そういう、じぶんの身のあんぜんを、キケンな状態にさらす。というコトだけじゃなくて、この『まわりがバカばかりで、ハナシのあうニンゲンがいない』という状態は、ヒドイこりつ感・こどく感を、もたらすコトになる。
そういう状態になると、ヒドイばあいだと、ニンゲンは、過度に悲観的にやすい。極端ないいかたをすると、じぶんのミライ・じんせい・うんめいに、ゼツボウしかねない。
アタリマエのコトだけど、ダレであっても、ゼツボウ的になってはいけない。ソレではダメだ。じぶんのミライ・じんせい・うんめいに、ゼツボウ的になり、ゼツボウ感をいだいてしまうと、ソレこそ、いきる気力すら、うしなうハメになる」
こういうと、徳吉は、強制ろうどう施設内でのコトを、おもいだしていた。
(あの施設にいたとき、オレもまた、まわりのニンゲンと、ハナシがまったく噛みあわず、ヒドイこどく感・こりつ感におそわれた。
こういうとき、生きるキボウや気力が、うしなわれていくのをかんじた。ナントカして、じぶんのキモチや感情を鼓舞して、モノゴトのプラスのいちめんを、ひっしにさがして、見るようにしていた。
ソウやって、じぶん自身を鼓舞して、キモチや感情が、ひつよう以上にさがるのを、ナントカしていた。あるいは、さがったとしても、ナントカして、上げるようにしていた。
そういうときに、じぶんと良く似た性格・かちかん・かんがえかたや、似たずのうレベル・知的レベルのニンゲンが身近にいたら、どれほどたすかったダロウか)
「ニンゲン、こりつ感・こどく感っていうものを、一度たいけんしてしまうと、コレを克服するコトは、そうカンタンにはデキないもんらしい」
「ソレは、ご自身のたいけんから、ソウおっしゃるんですか?」
「そのとおりだよ。強制ろうどう施設にいた時期、オレも何度か、ヒドイこりつ感・こどく感をあじわい、かんじるコトがあった。
そういうときに、じぶんと似たような性格・かんがえかた・かちかんや、ずのうレベル・知的レベルが似たニンゲンが身近にいたら、どれほどありがたかったコトか。ソレを今、おもいだしたよ」
「ナルホド」
「おそらく、何度もやってくるという患者は、そういう、こりつ感・こどく感っていうものを、フダンから、つよくかんじているのかもしれない」
「ソウいわれてみれば、たしかにソウかもしれませんね。たかいレベルのずのう・のうりょく・さいのう・知能レベルを持っている。
でも、そういうニンゲンは、いつの時代、どこのばしょでも、あっとう的に数がすくない。 少数派であり、気をつけないと、異端者のレッテルを貼られたり、まわりのニンゲンから、変人あつかいをされたり、白眼視されやすいですし」
「変人あつかいや白眼視どころか、ばあいによっては、『アイツは、一体ナニをかんがえてるのか、サッパリわからん』だとか、『アイツは、アタマのオカシイ、キケンなヤツだ』とされて、キケン視されるケースだってありえるダロウし」
「たしかに、ソレはありえますね。ひとりだけ、まわりのニンゲンと、ハナシがまったく噛みあわない。
そして、まわりの意見だとか、空気にたいして迎合せず、合わせるコトがなく、オカシイないようのコトをいっている。
と見られて、嫌われたり、はくがいの対象になったり、危害をくわえられるケースだって、十分ありえそうです」
「ろこつにいうと、ヒドイないようのイジメや、さべつの対象になりかねない。村八分にされて、追いだされるケースだってありえる」
(追いだされるか。ソウいわれてみると、オレも高井も、似たような目に遭ったコトがある。というか、桂さんも、おそらく徳吉さんも、似たような目に遭っているのかもしれん)
「ご自身も、そういう目に遭ったコトがある。というワケですか?」
「あるといえばある。というよりも、コレはオレの想像だけど、キミや高井くん、桂さんもじゃないかい?
まわりのニンゲンたちと、まったくハナシが噛みあわず、いつの間にかういてしまい、ひとりになっていた。というコトが、今までに、あったんじゃない?」
「あったといえば、ありましたね」
「でも、オレも君たちも、そして桂さんも、ダンダンと、まわりのニンゲンにたいして、合わせるコトをおぼえていった。
おそらく、ガッコウなり、しょくばとかで、ソレをおぼえていったとおもうんだけど、どうダロウ?」
「ソウいわれると、ひていはデキません」
「ところが、この第4地区に住んでいると、ソウはいかないかもしれない」




