コミュニケーション
「おお、藤柴くんか、ナニカ用かい?」
「いえ、べつだん用はナイんですよ。ただ時間があったんで、チョットきてみました。まあ雑談でもしようかなと」
「ナルホド」
わらいながら、徳吉はいった。
(用もナイのにか。ニンゲン、たにんとハナシをするのは、たしかに、たのしいコトもあるか)
数十分くらいであったろうか、徳吉と藤柴は、取りとめもないハナシをしていた。ココでふと、徳吉はおもった。
(もしかして、何度も診療をうけにくるっていうニンゲンたちも、こんなかんじなんダロウか?)
「チョット聞きたいんだけど」
「どうしました?」
「藤柴くんて、フダン、ダレと一番ハナシをする?」
「ソウですね。今までは高井がおおかったですね。というか、ほとんど高井でした。ほかのニンゲンともハナシをしますが、あっとう的に高井がおおいですね」
「今までというは、今はちがうとか?」
「今は、高井だけじゃなくて、徳吉さんもですよ。つまり、今は高井と徳吉さんです」
「ちなみに、このジム所のスタッフとは、シゴト以外のハナシをするコトはあるかい?」
「ソレはありますね。でも、回数自体はすくないですね」
「ソレはまた、ナンで?」
「ナンでといわれましても」
予想外のしつもんに、藤柴はすこし、かんがえこんでしまった。
「ソウですね、ハッキリとした動機・りゆうは、まあナイんですが。はなしやすいといいますか、スムーズにかいわがススムので」
「はなしやすくて、かいわがススム。か」
「ええ、イチイチ、こまかいコトをいったり、せつめいする手間がナイといいますか」
「ジム所のスタッフとか、ほかのニンゲンがあいてだと、そういう手間がある。と、こういうワケかい?」
「ソウですね」
「いいかたを変えると、前提条件なしに、ハナシをするコトがデキて、かつスムーズにススム。と、こういう感じダロウか?」
「前提条件なしに、ですか。ソウいわれてみると、そのとおりかもしれません。ハナシをするときに、イチイチ、『コレはコウだから』だとか、『ココは、こういうイミだから』とかいった、前提条件をイチイチせつめいするコトなく、スムーズにハナシがデキるんですよね」
「ナルホド」
(伊藤さんのハナシを聞くかぎり、医師たちは、何度もやってくる患者たちとのハナシ・かいわにたいして、イヤとおもわずに、むしろ、たのしい。とまでいっていた。
コレは、前提条件なしに、ハナシするコトがデキており、かいわがスムーズにすすんでいるからなんダロウ。
でなければ、シゴト中に、シゴト以外のハナシをされたり、しつもんをされたら、イヤになるダロウし、不快におもうハズだ)
「どうしたんですか、とつぜん」
「イヤ、じつは」
こうして徳吉は、りゆうも、ひつよう性もナイにもかかわらず、何度も診療にやってくるニンゲンがいるコト。
そして、病状や症状にたいして、なんのかんけいもナイ、べつのハナシをしてきたり、医療にかんけいのナイしつもんをしてくるコト。
かつ、医師のがわも、そのコトをイヤとはおもわず、不快にもならず、むしろ、「たのしい」とまでかんじている。というコトを、藤柴にたいしてつたえたのであった。
「ソウなんですか。何度も診療にくるニンゲンがいるんですね。というか、徳吉さん、よくそんなコトに気がつきましたね」
「イヤ、チョットだけ気になってね」
「でも、ソウいわれてみると、たしかに違和感をおぼえますね。病状や症状がワルイ。っていうワケでもない。初期症状で、すでに診療にくるりゆうも、ひつよう性もない。ソレなのに、何度もやってくる。
そして、医療とかんけいのナイ、べつのハナシをしたり、しつもんをしてくる。その上さらに、答える医師のがわも、フツウだったら、シゴト中に、シゴトのジャマをされるワケですから、イヤがったり、不快になるハズなのに。ソウはおもっていない。
ソレどころか、むしろ、たのしい。とまでかんじている。フツウにかんがえてみれば、ありえないコトでしょうね」
「やはり、ソウおもうかい」
「ハイ、コレはオカシイ。とまではいいませんが、たしかにすこし、違和感をおぼえます」
「フツウにかんがえてみれば、ありえそうにない。そういうコトだけれども、ソレがおきている。このりゆう・げんいんは、一体ナンなのか。チョットだけ、こういうコトが気になってきてね」
(フツウのニンゲンだったら、まったく気がつかないようなコトに、ホントウに、良く気がつくな、このヒトは)
「その気になるコト、というのは、われわれにとって、たいせつ・重要なコトなんでしょうかね?」
「イヤイヤ、ソコまでたいしたコトじゃないのかもしれない。ただ単に、チョットだけ、気になった。というだけのコトだよ」
(でも、このヒトのいう、チョットだけ気になる。っていうのは、どうも無視しないほうが、良い気がするんだよなあ)
「ちなみに、徳吉さんの見るところ、りゆう・げんいんは、一体ナンだとかんがえているんですか?」
「ハッキリと、コレだ。といえるようなモノは、ナイんだけどね。でもまあ、『もしかしたら』っていうコトをいえば、類はトモってヤツかな」
「類はトモ、ですか。ソレはつまり、類はトモを呼ぶ。のコトですか?」
「まあ、ソウなる」
「ニンゲンは、無いしきのうちに、似たようなタイプのニンゲン同士であつまり、近寄ってくる。っていうイミですよね、たしか」
「その類はトモを呼ぶ。のコトだよ」
「つまり、りゆうも、ひつよう性も、まったくナイのに、何度も診療にやってくる患者は、『医者たちと、似たようなタイプのニンゲン』というコトを、おっしゃっているワケですよね?」
「ザックリといえば、そういうイミだよ」
(まあ、この仮説というか想定に、オカシイ点はナイか)
「たしかに、ニンゲンは、良く似たタイプのニンゲンと、仲良くなりますしね」
「もっというと、性格・かちかん、ずのうレベル・知的レベルが近い。といってもいいかもしれない」
「性格・かちかん、ずのうレベル・知的レベルですか」
「アタリマエといえば、アタリマエのコトなんだけど、性格・かちかんが違いすぎるニンゲン同士だと、興味・関心のあるコトが、あまりにも違いすぎる。だから、共通点や類似点が、ほとんどナイ。
ろこつにいうと、共通の話題・ネタがなくて、ハナシがつづかない。だから、コミュニケーションがうまく取れず、ニンゲンかんけいの構築がうまくいかない。
さらにいえば、ずのうレベル・知的レベルの差がおおきいニンゲンとは、思考のうりょくに違いがおおきすぎて、コレまた、あいてとハナシが合わない。
だから、やはり、コミュニケーションがうまく取れず、ニンゲンかんけいの構築が、うまくいかない」
「ナルホド、たしかにそのとおりですね。こうして今、ワタシ自身が、とくになんの用事もナイのに、徳吉さんに会いにきて、ハナシをしているワケですから」
「ソレだ!」
藤柴の何気ないコトバを聞いて、徳吉は、ハッとした。




