ハナシがしたい
数日後、ふたたび徳吉は、伊藤とハナシをしていた。先日、伊藤にたいして依頼をした件について、伊藤から、「気がついた点がある」と、れんらくをうけたからである。
「先日、徳吉さんから依頼のあった件ですが、チョット気になる点が見つかりまして」
「ソウですか、アリガトウございます。ゼヒおしえてください」
「どうも、何十回もやってくるニンゲンたちは、じぶんの病状や症状について、『コレを、ナントカして治したい』というよりは、『われわれ医師と、ハナシをしたい』という意思があるようにおもえます」
「ハナシをしたい。ですか?」
「ええ、フツウ、医師と患者とのかいわは、病状や症状についてのコトが、ほとんどなんですよ。アタリマエのコトですがね。
あとはまあ、患者の日常せいかつ、フダンのコトを、われわれは聞いたりします。日常せいかつの習慣が、病状や症状にかんけいするケースがおおいので。ですが、このヒトたちは、どうも、ソレだけでおわらないんです」
「といいますと?」
「ソレこそ、じぶんの気になるコトであったり、興味や関心があるコトを、コチラにたいしてハナシをしてきます。
さらにいえば、コチラにたいして、アレコレと、イロイロなコトを聞いてきます。『知っていたら、ゼヒおしえてください』と、たのまれるコトもあります。
「つまり、伊藤さんたちが持っている、ちしき・情報などを、可能なかぎり、知ろうとする。こういうコトでしょうか?」
「ソウいっても良いかとおもいます。コチラとしては、医師である以上、医療にかんするコトについて、ハナシをする気でいます。
ですが、医療以外のジャンル・ぶんやのコトも、アレコレとハナシをしてきたり、聞いてくるワケなんです。まあコチラとしても、じぶんが知っているコトであれば、知っている範囲で答えますがね」
「となると、ひとりの患者とのハナシが、カナリ長引いたりしますか?」
「そういうケースもあります。ほかにも診なければならない患者さんはおおいので、どこかの時点・だんかいで、ハナシを切り上げますがね。
でも、そういうコトをいうと、あいては、『こんざつしていないときに、また来ます』というワケです」
「つまり、ほかの患者を待たせるコトなく、ジックリとハナシをしたり、しつもんするコトがデキる時間帯を、聞いてくるんですか?」
「ソウなります」
「となると、ほんらいのシゴトではない、医療以外のハナシをながくしたり、しつもんに答えるワケですから、医師の方々は、めいわくをしているワケですか?」
「イエ、ソレが違うんですよ」
「違うんですか?」
(どういうコトなんだ?)
「ワタシだけでなくて、ほかの医師たちも、フシギと、ソレほどイヤがっていません。ソレどころか、むしろ、コチラとしても、たのしいとさえかんじます」
「たのしい、ですか」
「ええ」
伊藤の意外な答えに、徳吉はすこし、戸惑ってしまった。
(じぶんのおこなうシゴトと、まったく無かんけいのコトを、しかもシゴト中に、アレコレとハナシをしたり、聞かれたりするワケなんだから、フツウにかんがえてみれば、イヤがるダロウに)
徳吉が、内心においてかんじたギモンに、伊藤は、気がついたようすであった。
「まあ、フツウにかんがえてみれば、コレは、おこなうシゴト・業務のさまたげになり、ジャマになるワケです。
ですから、イヤというか、めいわくにおもえます。ところが、カレら、カノジョたちとのかいわは、フシギと、コチラとしてもイヤにかんじないし、億劫にもおもいません」
「ソレはまた、ナゼなんでしょう?」
「ハッキリとしたコトは、じぶんでもサッパリわかりません。ですが、まあ、あえていうとすれば」
「いうとすれば?」
「似たようなニンゲンとのハナシ・かいわは、おたがいにイヤでないし、苦痛でもない。むしろ、おたがいに、知的にシゲキし合えるワケですから、たのしいんでしょうね」
「ナルホド」
(類はトモを呼ぶ。っていうヤツか。ニンゲンは、じぶんと似たような視点・発想・かんがえかた・スタンスだとか、ずのうレベル・知的レベルが近いニンゲンとのハナシ・かいわは、スムーズにすすみやすい。
なんせ、おたがいに、共通の話題もおおいし、共通点や類似点もおおい。そういうワケだから、ハナシが途切れない。
となると、しぜんとハナシがススムんだろう。苦痛だとか、不快にかんじるコトもすくない。そういうコトなんダロウか)
ココでふと、徳吉は、藤柴と高井のコトが、アタマにうかんだ。
(良くかんがえてみれば、オレ自身も、たいした用事がないのに、藤柴や高井とは、ついハナシをしてしまう。ソレも何度も。ムダなハナシにしかならないのに、いつの間にか、何度もハナシをしている)
伊藤とのハナシを終えたあとも、徳吉は、まだこのコトが気になっていた。
(ニンゲンが、ナニカ行動をおこすときには、キホン的に、ナニカしらの動機・りゆうがある。まあ、かんがえるコトがデキずに、感情的で、感覚・感情だけで、ナニカをはんだんし、キメるようなタイプのニンゲンだったら、『ハッキリとした動機・りゆうがナイ』というコトもおおい。なんせ『ナンとなく』で、すべてはんだんし、おこなうようなヤツラだから。
でも、ずのうレベル・知的レベルのたかい、医師とハナシが合う。という患者だったら、ハナシはべつダロウ。
医師とハナシが合い、医師のほうも、かいわを苦痛にかんじず、不快にもおもわない。というコトだったら、この患者たちは、バカではない。
すくなくとも、『医師と似たような、ずのうレベル・知的レベルを持っている』と、かんがえて良いハズだ。
となると、『ナニカをはんだんし、キメるときには、ナニカしらの意見・かんがえを持っている』とかんがえても、ムリはナイとおもう。
つまり、カレら、カノジョらなりに、ハッキリとした動機・りゆうを、内心に持っているのかもしれない)
このようなコトを、ボンヤリとかんがえていたら、藤柴がやってきた。




