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案や策

 数日後、藤柴が徳吉にたいして、あつめた情報・じじつを、ほうこくしにきた。

「徳吉さん、高井のちょうさによると、どうやら、斎藤がしょぞくする勢力が、痛みをやわらげるクスリ、つまり、麻酔系のクスリを、大量に購入しているコトがわかりました」

「痛みをやわらげるクスリか」

「ええ、ちなみに、このクスリは、まずしい第4地区では入手がこんなんであり、ソレなりに高価のようです」

「その高価なクスリを、大量に購入している。というコトは、びょうきになったのは、勢力の幹部クラスか、あるいは、トップの可能性がたかそうだね」

「ワタシもソウおもいます。下っ端の構成員にたいして、そこまでして高価なクスリを大量に買う。というのは、可能性がひくいかと」

(勢力の幹部クラスか、あるいは、トップ自身がびょうきになった。コレが、あの言い争いのりゆう・げんいん。というコトだろうか?)

「ほかには、ナニカわかったコトはあるかい?」

「今のところは、コレだけです。まだ高井が、あたらしい情報・じじつがないか、探っています」

(カンのするどい高井のコトだから、断片的なコトであっても、まず見逃さないダロウ)

「斎藤がしょぞくする勢力の幹部クラスか、あるいはトップが、びょうきになった可能性がありますね。

 でも、そもそもの前提として、あらゆる物資が不足しているこの土地では、たくさんの麻酔系のクスリを、そうカンタンに、手にいれるコトはデキません」

「このコトが、あのときの道の先での言い争いに、ナニカしら、かんけいがあるのかもしれない。もっというと、言い争いになってしまった、りゆう・げんいん。という可能性もありそうだね」

「たしかに、その可能性は、おおいにありえそうです」

(一個一個、今までにわかっている情報・じじつを、積みあげてみるベキか)

「今からオレがいうのは、あくまでも可能性というか、仮定のハナシになるけれども、もしかしたら、そのカンタンには手にはいらないクスリを、なんとしても手にいれたかった。

 だから、競合するコトもある、ほかの競合する勢力からも、クスリを手にいれようとしたのかもしれない。

 でも、そのほかの勢力からすれば、可能なかぎり、たかく売りたいダロウし。だから、その量、ねだんをめぐり、言い争いになった。と、こういう可能性もあるか」

「たしかに、ハッキリとあらそい、てきたい的ではないとはいえ、けっして信頼するコトがデキる味方ではない。という勢力があいてであれば、もしかしたら、たかく吹っかけるコトくらい、するかもしれません」

「ちなみに、斎藤は、しょぞくする勢力のなかでは、たしか、幹部だったっけか」

「たしか、ソレなりにたかい地位だったとおもいます。くわしいコトまでは、はあくをしていませんが」

「ソレなりにたかい地位で、いちおうは幹部。というワケか」

「ソウなります」

「だったら、ヤッパリ、びょうきになったのは勢力のトップかもしれない。斎藤としては、じぶんとおなじ階層レベルの幹部にたいして、そこまでしてやる義理はなさそうだよね」

「たしかに、ソウかもしれませんね。『じぶんと、似たような地位の幹部にたいして、ほかの勢力とモメてまで、ムリをしてでも、そのクスリを手にいれよう』というのは、すこしムリがありそうです」

「もしも斎藤が、ナカマの幹部のために、ほかの勢力のニンゲンと、モメてしまう。という事態になれば、トップからしたら、あまりオモシロクはないダロウね。

 よけいなコトで、波風を立てやがって。と、トップから、にらまれてしまうキケン性・リスクもある。

 そういう、じぶんの地位・たちばを、キケンに曝すなんていうのは、フツウのニンゲンだったら、可能なかぎり避けるダロウし」

「じぶんの保身上のコトをかんがえれば、ソウなりそうですね」

「ココまでふまえると、びょうきになったのは、勢力のトップである可能性が、カナリたかくなるか」

「この地区では、十分な医療をうけるコトはデキません。ですから、まあデキるコトといえば、痛みをやわらげるのが限界かもしれません」

「というコトは、びょうきになったのが、もしもトップ自身だったら、もしかしたら、トップの寿命というものは、この先ながくはナイのかもしれない。

 あるいは、たとえ死ぬコトはナイとしても、ケンコウを害してしまい、マトモなかつどうがデキない。と、こういう可能性もあるか」

「トップが死亡するか、あるいは、ケンコウを害してしまい、引退するようなケースになれば、この勢力が、コレから先、一体どうなるのか。コチラとしては、このコトが気になりますね」

「ちなみに、藤柴くんの予想というか、見立てでは、どういう事態になるとおもう?」

「この勢力の後継者の地位をめぐって、はげしい内ゲバ、あらそいが発生し、チョットした非常事態というか、こんらん状態をまねきそうです。

 ばあいによっては、ほかの勢力が、このこんらん状態に乗じて、テリトリー・ナワバリを、うばおうとするかもしれません。

 あるいは、ソコまでいかずとも、この勢力ないでのモメごと、あらそいが激化して、しばらくのあいだ、治安が悪化するかもしれません」

「つまり、コチラにとっては、あまり好ましくない状態になる。と、こういうコトだろうか?」

「ソウなりますね。コチラとしては、あまり治安が悪化したり、モメごと・トラブルが多発する。という状態は、業務に支障がきたします。

 まあそのまえに、もしかしたら、われわれ自身のあんぜん確保についても、ナニカしら、支障がでるかもしれません。

 ナニセ、この地区では、まっとうな司法機関がそんざいしていません。つまり、治安を維持するための機能・そしきが、不十分なワケですからね」

「となると、どういう不測の事態が発生するか、サッパリわからない。と、こういうワケかい?」

「ザックリいってしまえば、そのとおりです」

(過度の無ちつじょ・こんらん状態っていうのは、たしかに避けたい。コチラのシゴト・業務にたいして支障がでるだけじゃなくて、われわれ自身にも、ナニカしらのカタチで、キケンがおよびかねない。

 じぶんたちの身のあんぜんは、まず第一に、まっさきに確保すベキだ。やはりコレが、最優先事項になるダロウ)

「こういうときは、てってい的に、一旦ワルイ方向にかんがえるベキかもね」

「ワルイ方向に、ですか」

「俗にいう、サイアクのケースを想定して、ソレを避けるために、一体どうすればいいのか。コレをかんがえる。というヤツだよ」

「つまり、危機管理というヤツですね」

「そういうコトになる。コレはまあ、オレのけいけん則になるけど、モノゴトは、一旦ワルイ方向にススムと、つまり、悪化すると、かならずといっていいほど、ワルイ方向にススミつづけ、ドンドン悪化をしていく。

 だから、『ナントカなるダロウ』と、さいしょから楽観的にかんがえるのは、避けたほうがいい。そのほうが、長期的にはプラスであり、トクをするとおもっている」

「いやあ、過酷な強制ろうどう施設っていうカンキョウのなかで、11年以上もいきのびた徳吉さんがいうと、なんというか、カナリせっとく力がありますよ」

「どうダロウね」

 徳吉は、苦笑しながらいった。

「斎藤がしょぞくする勢力のトップが、びょうきになり、死んでしまうか、引退をするかもしれない。

 ソウなると、後継者をめぐって、そしきの内ゲバ、あらそいが激化しかねない。さらにいえば、ほかの勢力が、テリトリー・ナワバリをうばうために、抗争をしかけてくるかもしれない。

 こういう状態になると、ひつぜん的に、ドンドン治安が悪化して、無ちつじょ・こんらん状態をまねきかねない。

 そういうカタチになれば、コチラがわにも、ナニカのカタチで、ひがい・そんがいが発生したり、身のキケンをかんじて、あんぜんを確保するコトが、むずかしくなりかねない。と、コレがまあ、サイアクのケースになるワケか」

「ソウですね。今げんざいの時点・だんかいでは、おそらくソレが、サイアクのケースになるかとおもいます」

「こういう状態になったときに、斎藤のたちばに立ってかんがえてみると、もしも、後継者あらそいが発生したのなら、じぶんの野心を満たすために、じぶんが後継者になるために、ひっしにうごき、たたかう。

 あるいは、じぶん自身がトップに立とうとせずとも、後継者の候補のダレかにたいして従い、味方となって協力する。

 さらにいえば、後継者あらそいとはキョリを取って、ダレがつぎのトップに立っても、オトナしく従う。

 もっというと、もしもほかの勢力が、ナワバリ・テリトリーをうばいにきたら、ソレにたいして、はんたい・ていこうし、たたかう。それとも、いっそのこと、そのほかの勢力にたいして協力してしまう。と、大体のところ、こういう選択肢がでてくるワケか」

「でしょうね。ほんにん自身がのぞまず、もとめず、期待せずとも、いやがおうでも、そういう状態に置かれそうです」

「ソレで、この斎藤っていうニンゲンは、どういう性格をしているのか、知ってるかい?」

「くわしくは知りませんが、そういうモメごと、あらそいが発生したときには、じぶんから率先してうごくよりも、まわりの状況にながされてしまい、アタフタするような印象があります」

「つまり、じぶんが主体的になって、自主的に、積極的にうごいて、主導権を取るようなタイプではナイと」

「ハッキリとはいえませんが、そういう印象を持っています。今まで、斎藤がしょぞくする勢力のニンゲンに会ったときに、聞いたハナシをまとめて総合すると、そういう印象となります」

「となると、無ちつじょ・こんらん状態になったときに、ソレを『良し』だとか、『好機やチャンス』とはおもわずに、ストレスをかんじるタイプかもしれないか」

「ソウいっても、けっしてマチガイではナイかと」

「そういうタイプのニンゲンが、しょぞくする勢力のトップがびょうきになり、じぶんの地位・たちば、身のあんぜんが、キケンに曝されるとなると、カナリの不安感というか、ストレスをかんじるダロウね。

 となると、『ナントカして、じぶんの身のあんぜんを図りたい』と、こうかんがえてもオカシクはナイか」

「じぶんの保身をかんがえるのであれば、ソウかんがえるのは、自然な感情・キモチだとおもいます」

(保身感覚がつよいタイプのニンゲンだったら、無ちつじょ・こんらん状態になったときに、じぶんの身のあんぜんを確保するために、ダレか、つよいニンゲンの下に就くか、あるいは、じぶんの勢力をつくろうとする。大体のところ、こんな感じだろうか)

「どうやら、この斎藤が、今げんざい、どういう状態に置かれているのか。そして、一体ナニをかんがえているのか。コレを知るコトが、状況をはあくするのに、たいせつで重要になるかもしれない」

「では、そのコトも、しらべてみますね」


 数日後、藤柴は、徳吉にたいして、しらべたないようをほうこくした。

「どうやら、びょうきになったのは、勢力のトップ自身のようです。高井が、近隣の医者から、情報を手にいれました。

 ココ最近、たくさんの医者が呼ばれているようです。『ゼッタイに、口外をするな』と、つよく口止めをされているようですが、さすがに、何人もの医者が、何度も出入りしているワケですから、どこかしこで、情報が漏れます」

「とはいっても、『口止めをするな』と、つよく警告されているのに、よく高井くんは、情報を手にいれるコトがデキたね」

「まあ正確にいうと、医者自身ではなくて、医療かんけい者からですよ。医者自身がだまっていたとしても、医療かんけい者も、ナニカしらのカタチでかかわりますからね。

 そういうニンゲンが、何十人もいれば、各々からは、断片的なじじつ・情報しか手にはいらずとも、それらを比較照合して、突き合わせれば、カナリのコトはわかります」

「ナルホド、理に適っている」

「アリガトウございます。ソレで,ハナシをつづけますと、どうやら勢力のトップは、もう先がながくナイようです。つまり、余命わずかのようです。もはや、マトモにかいわもデキないらしいです」

「かいわもデキないか」

「ええ、そのために、部下たちは、トップにたいして情報・じじつをつたえたり、そうだんしたり、意見を聞こうとしても、ソレがデキない。そのために、部下たちは、統一した指揮めいれい系統がない。こういう状態のようです」

「ソウなると、いくら口止めをしても、情報がかならず漏れるか」

「ソウなります。そして、もうすでに、つぎの後継者の地位をめぐって、あらい、内ゲバがはじまりそうです。

 このトップは、カナリのワンマンだったようで、じぶん自身にたいして、けんりょく・チカラを集中させていた。そして、つぎの後継者を、キメていなかったようです。

 そのトップが死んだのであれば、空白となったトップの地位をめぐって、内ゲバ、あらそいがはじまり、勢力がぶんれつする可能性もありそうです。

 いかんせん、一個人のチカラ・のうりょく・力量だけに、過度に頼っていたために、その一個人がいなくなれば、重しがとれるカタチになります。ソウなると、配下が各々、じぶんで勝手にうごくかとおもわれます」

「そしき力ではなくて、『一個人のチカラ・のうりょく・力量だけで、けいえいされ、うんえいされていた』というワケか。となると、ヤッパリ、無ちつじょ・こんらん状態になりそうだ」

「ソコで、どうやら斎藤は、『今のうちに、じぶんの勢力をつくりたい』と、かんがえているようです。

 ハッキリと、コレを主張しているワケではありません。ですが最近、斎藤は、妙におカネをあつめたり、イロイロなニンゲンと会って、交流を深めたりしています。コレには、『じぶんの勢力をつくりたい』という意図が透けて見えます」

「ダロウね」

「おそらく、斎藤としては、このコトを、たくさんのニンゲンにたいして、気づかれてしまうのはマズイ。

 と、こうかんがえているのかもしれません。だから、あまり大々的に、オモテ立って、ハデにうごくコトがデキない」

「今後の状況が、どうなるかわからないから、慎重になっている。とういワケか」

「ソレで、コレは高田のカンなんですが。だから部下の後藤が、このジム所にやってきたのではないかと」

「部下の後藤が?」

(ナゼ急に、ココで後藤のナマエがでてくるんだ?)

「ソレは一体、どういうコトだい?」

「高井によると、斎藤は、『コチラがナニカ、情報・じじつを手にいれて、じぶんのかんがえ・意図・事情をはあくして、知っているのかどうか、さぐらせたのではないか』と、こう想像したようである」

「ナルホド」

(斎藤としては、これから先、どういう状況になるのか、サッパリわからない。ミライが読めない状態でいる。だから、ばあいによっては、じぶんで自立するコトすらも、あるていどは、視野にいれている。

 だがしかし、今げんざいの時点・だんかいで、そういうコトを、オモテ立って、ハデにおこなうワケにはいかない。

 今はまだ、トップが生存している状態であり、ウカツにそんなコトをすれば、どんな目に遭ってしまうかわからない。

 とはいっても、まったくナニもせず、手をこまねいていても、これから先、じぶん自身が、フリな状態に陥ってしまいかねない。そういうリスク・キケン性もある。

 だから、可能なかぎり目立たず、水面下で隠密にうごきたい。そのひつよう性がある。そういう状況のときに、たまたま、ホントウにぐうぜん、道でのトラブル・モメごとを、われわれに見られてしまった。

 不あんていな状態にいる斎藤としては、この光景を見たわれわれが、『ナニカに気がついたり、あるいは、ナニカを知ってしまったのか』そして、気がついたり、知ってしまったのであれば、『ナニを知り、気がついたのか』と、こういうコトを知りたがるのは、あるイミで、アタリマエといえるか。

 でも、カオのわれているじぶんが、ちょくせつ的に、コチラにたいして接触したり、会うのは避けたい。どこかでヘタを打って、ボロがでてしまいかねない。

 だから、コチラがしらないのであろう、後藤をジム所に寄こした。と、こういうコトになるのか)

「やはり、高井くんはカンがするどい」

 コウつぶやくと、徳吉は、目をとじて思案顔をした。

(どうやら、ナニカの案や策を、かんがえているダロウ)

 どうも、こういうときの徳吉にたいしては、「ヘタにはなしかけて、思考のジャマをしてはいけない」と、こういうコトを、薄々ながら、藤柴は、感じはじめていた。

(徳吉さんのように、すべてを理詰めでかんがえて、ソレこそ、一個一個、リクツを積みあげてかんがえるタイプには、思考のとちゅうで、ヘタにジャマをするベキじゃないな。

 せっかくの思考がジャマされて、とちゅうで途切れてしまいかねない。ソレではいけない。良い案や策がうまれるのを、ジャマしてしまうコトになる。そうなっては、結局のところ、オレたちにとってマイナスだし、カナリの損になる)

 しばらくして、徳吉は目を開けた。どうやら、なにかの案や策を、かんがえついたようであった。

「どうです、なにか気がついたり、ヒラメキましたか?」

「どうしたんだい、急に?」

「いえ、どうもワタシの見たところ、徳吉さんが、そうやって目を閉じて、ナニやら思案顔をしているときは、『ナニカ良い案や策がないか、かんがている最中ではないか』と、ソウおもっていまして」

「いや、そのとおりだよ。良くわかったね」

 徳吉は、わらいながらいった。

「ソレで、どうですか?」

「良い案や策といえるかどうか、ソコまではわからないけどね。チョットしたコトをおもいついたよ」

 こういうと、徳吉は、そのかんがえついた案や策を、はなしはじめた。

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