クスリの不足
すこしあと、ジム所の一室で、3人がそろい、藤柴と高井のふたりは、徳吉にたいして、斎藤と後藤がしょぞくする勢力について、知っている情報・じじつのほうこくをはじめた。その結果、いくつか、わかった点があった。
ソレは、「どうやら斎藤は、べつの勢力と言い争いった。という件について、じぶんがしょぞくする勢力のニンゲン。というか、じぶんの上長にたいして、ほうこくをしていない」というコトであった。
「ヤツラのしょぞくする勢力ですが、何人か、接触をしているニンゲンがいます。スパイというほどじゃありませんが、時々、会ってハナシを聞くていどです。
ソチラの勢力は、今はどういう状態なのか、ナニがあったのか。っていうレベルのハナシです。日常かいわの延長線上です。あまり突っこんだハナシだとか、ないぶ事情とかを聞くと、あいても警戒しますからね。
ですから、まあ、『さいきん、調子はどうだい?こまったコトでもあるかい?』というていどです。
ソレで、このまえ、われわれが、このジム所に向かうとちゅう、斎藤が、べつの勢力のニンゲンと、ナニやら言い争ってたが、ナニカのトラブル、モメごとでもあったのか?
と、ハナシを振ってみたら、『一体ナンのコトですか?』と、ぎゃくに聞きかえされてしまいました」
このハナシを藤柴がしたとき、高井が、すこし反応をした。
「そのハナシは、じぶんも藤柴から聞いていましたが、そのときは、あまり気にしませんでした。でも、今こうして、あらためてハナシを聞いてみると、チョット気になりますね」
「ナニがだ?」
と、藤柴が聞きかえした。
「いや、オレがこのハナシを、オマエから聞いたのは、後藤がジム所にやってくるまえだったよな。たしか」
「たしか、ソウだとおもう」
「でも、今こうして、わざわざ斎藤が、『コチラがしらないダロウ』とかんがえている後藤を、わざわざ、このジム所にたいして寄こしてきた。この件をふまえると、チョット気になる」
ふたりのかいわを聞いていた徳吉が、ココで、クチをひらいた。
「高井くんのいうとおりかもしれない。ハッキリとしたウラづけ、こんきょ、確証はナイが、オレもチョット気になる」
「徳吉さんもですか。高井と徳吉さんのふたりが、気になるっていうコトは、チョット引っかかりますね。
オレ自身は、ちょくせつ的にハナシを聞いたニンゲンですから、つまりまあ、当事者になりますので、あまり気になりませんでした。
でも、第3者であるニンゲンふたりが、こうして気になるっていうのは、チョット引っかかります」
「岡目八目っていうくらいだし、当事者は、意外と気にならないけれども、第3者は気がつく。っていうコトは、カナリおおいとおもうよ」
徳吉は、こういうと、すこしかんがえだした。
(斎藤は、言い争いの件を、じぶんがしょぞくする勢力にたいして、ほうこくをしていない。コレはつまり、『いいたくない、しられたくない』っていうハナシのないようだったか。
あるいは、『些細で些末、カナリちいさなコトだから、イチイチほうこくは不要だ、いらないダロウ』と、こうかんがえたか。このふたつのどちらかになるダロウ。
で、ソコで、ナンでわざわざ、コチラにたいしてカオが割れていない。とおもった後藤を、このジム所にたいして送りこんできたのか)
「斎藤は、言い争いの件を、じぶんがしょぞくする勢力のニンゲンにたいして、ほうこくをせず、しらせなかった。
コレは、『しられたくない』というコトか、あるいは、『しらせるほどのコトじゃない』と、はんだんした可能性がたかいか。
まあコレだけだったら、そんなに気にするほどじゃない。でも、そのあとに、なんでわざわざ、このジム所にたいして、後藤を寄こしたのか。
しかも、この人選っていうのは、『コチラがしらないダロウ』とおもうニンゲンを、わざわざ寄こしている。ココに、チョット引っかかるよ」
「徳吉さんのおっしゃるとおりですね。オレも同感です」
高井も賛同した。
「となると、べつの角度、視点から、見てみるベキかもしれない」
「べつの角度、視点からですか」
「そう、デキるコトならね」
「でしたら、やはり、言い争っていた、もうかたほうの勢力っていうのが、チョット気になりますね」
「高井くんのいうとおりだ」
こういうと、徳吉は、先ほどもらった、もうかたほうの勢力についての資料を手に取って、読みはじめた。
「ちなみに、ふたりの見解では、このふたりの勢力の間柄というか、かんけい性っていうのは、どう解釈しているか、言ってもらえるかい?」
「ふたつの勢力の間柄。ですか」
「ソウ、まえに、『ちょくせつ的に、ハッキリとあらそい、ケンカをしているワケじゃない』っていうイミのコトを、聞いたコトがあるけど。もうすこし、くわしいコトが知りたい。まあ、デキる範囲で良いけどね」
「ソウですね。おわたしした資料には、あまりくわしいコトは書いてありません。まあ、コチラとしても、くわしい情報がない。っていうのもありますが、確証のある情報でなければ、おはなしするコトはデキますよ」
と、藤柴が答えた。
「ソレでかまわないよ」
「わかりました」
こういうと、藤柴が、この勢力について、ハナシをはじめた。そのあとに、高井もまた、ハナシをはじめた。
(表面上は、ハッキリとてきたいし、たいりつをして、あらそっているワケじゃない。でも、水面下では、意外とトラブったり、モメているのかもしれない)
ふたりのハナシを聞いて、徳吉はそうおもった。
「どうやら、ふたりのハナシを聞くと、表面上は、ハッキリとあらそっているワケじゃないが、コチラのしらないところで、水面下では、意外とトラブルになったり、モメている可能性もあるワケか」
「ソウですね。まあ、コチラにたいして、ちょくせつ的にかかわる件ではないので、ワタシも高井も、今までは、あまり気にしていませんでした。
しょうじきなところ、『手にはいる情報だから、ムリのない範囲で、手にいれておいた』といった感じですかね」
「今までは、か」
「ソウです、今までは。でも、こんかい、こうしてあらためて、イロイロと掘りさげて、アレコレとがんがえてみると、たしかに、もうすこし、くわしくしらべたり、はあくをしても良いかもしれません」
「なにせ斎藤が、わざわざ後藤を、ココにたいして寄こしたくらいだしね」
「ええ」
(向こうのほうから、わざわざアクションをおこしてきた。コレは、コチラにとっては、たいしたコトじゃないが、向こうにとっては、『ソレなりに気になるというか、注意したい』というコトになるワケか)
「すこし、タネを蒔いてみよう」
「タネ、ですか。ぐたいてきに、ナニを蒔くんですか?」
「後藤にたいしてだよ」
「後藤に、ですか?」
「もしも、つぎに後藤がやってきたら、それとなく、『コチラが、言い争いのないようを、すこし掴んでいる』という感じで、ハナシを振ってみても良いかもしれない。
もっというと、『言い争いっていた、もうかたほうのコトも、ソレとなく、後藤にたいして匂わせる』というカタチで」
「ソレで、後藤が、一体どういう反応をするのか。ソレを見る。というワケですね?」
「そうなる。後藤の反応を見て、ソコから、なにかあたらしい情報・じじつだとか、あるいは、あたらしい意味合いや解釈を、手にいれるコトがデキるかもしれない」
「つまり、コチラが見落としていたり、気がついていないコトが、わかるかもしれない。と、こういうワケでしょうか?」
「さすが、飲みこみがはやいね」
「では、つぎに後藤がきたら、ワタシか高井が、ヤツのたいおうをしましょう」
「ソレがいいかもしれない。こういうコトは、ニブイというか、バカにやらせると、かえってウラ目にでてしまう。
カンのするどいニンゲンでないと、瞬時のテキセツなはんだんや、反応とかがデキない。だから、君たちのどちらかが、ソレをやるのが良いかもしれない。
オレは、そういう瞬時のはんだんや反応っていうモノが、どうにもニガテでね。ソレに、やってきたばかりのニンゲンだから、まだ第4地区の事情にうとい。
だから、どこかでボロがでるかもしれない。こうかんがえると、君たちのどちらかが、後藤のたいおうをするのが、ベストだとおもう」
「わかりました。では、つぎにやってきたとき、ワタシと高井のどちらかが、たいおうをします」
「ヨロシクたのむよ」
こういうと、藤柴、高井のふたりは、ヘヤをでていった。
(さて、コレをやって、吉とでるか、凶とでるか)
数日後、ふたたび後藤が、ジム所にやってきた。そして、ソコに居合わせた高井が、たいおうをしたのであった。
数十分後、そうだんをおえた後藤は、ジム所をあとにした。
(アイツ、反応しやがった)
こうおもうと、高井は、藤柴と徳吉のふたりにハナシをするために、その場をあとにした。そして、数分後、3人が、ジム所の一室にあつまった。
「以上が、こんかい、後藤とハナシをしたないようです」
高井のほうこくを聞いた徳吉は、目を閉じていた。なにやら、思案顔のようすであった。
「オマエがハナシをしたとき、どういう感想を持った?」
「すこし引っかかったのは、オレが、言い争っていた、もうかたほうの勢力のナマエをだしたら、後藤は、ほんの一瞬だけ、すこし表情が硬くなった。目が真剣というか、わらっていなかった」
「ソウか、カオにでたか」
「ああ、触れてはほしくない。とおもったのか、それとも、『言い争っていた、もうかたほうの勢力のコトについて、コチラが、なにか知っているのか知りたい』とおもったのか。
はたまた、『言い争いのないようについて、どこまでコッチが知っているのか、気になる』とおもったのか、ナゼなのかはわからんが、内心のホンネが、一瞬だけだが、ヤツの表情にでた気がする」
「となると、やはり後藤は、というか、斎藤は、コチラのコトを、探ろうとしているのかもしれんか」
「ソウかんがえても、オカシクはないとおもう」
ふたりのハナシを聞いていた徳吉が、クチをひらいた。
「表情が、一瞬だけ真顔になった。っていうコトは、斎藤が、言い争いの件を、じぶんの上長にしらせず、ほうこくしなかったのは、その動機・りゆうは、『些細で些末、どうでもよいコトだから』っていうのは、ナイかもしれんか」
「ソウですね。もしもホントウに、どうでも良いコトだったら、コチラのコトバに、真顔になるりゆうも、ひつよう性も、まずナイでしょうし。
というか、もしもソウだったら、そもそも、このジム所にたいして、後藤がやってくるコトはナイでしょうね。コチラのコトを、探るりゆうも、ひつよう性も、まずナイかとおもいます」
「藤柴くんのいうとおりだ。わざわざ後藤が、このジム所にやってきた。そして、言い争っていた、もうかたほうの勢力のナマエをだしたら、ほんの一瞬だけとはいえ、ヤツの目が真剣になり、真顔になった。
コレはつまり、ヤツラにとっては、真剣にならざるをえない事情・りゆうで、言い争っていた。と、こういうカタチでかんがえるほうが、ムリがない気がする」
「となると、やはり、その言い争っていた事情・りゆうが、一体ナンなのか。っていうコトが、気になってきますね」
「でも、ソコまでは、コチラもつかんではいない。オレはまったくしらない。オマエもダロウ」
と、高井が藤柴にたいして聞いた。
「そのとおりだ。オレもしらない」
ココで、ハナシは一旦おわってしまった。「もうコレ以上は、ざいりょうがない以上、予測・推測をするコトがデキない」という状態になったといえるであろう。
「チョット聞きたいんだど」
今までだまっていた徳吉が、ココで、ハナシに入ってきた。
「斎藤がしょぞくする勢力のトップっていうのは、どういうヤツなのか、知っているかい?」
「ワタシも高井も、ちょくせつ的に会ったコトはありません。でも、小キボな勢力とはいえ、ソレなりのチカラを持っていると解釈しています。
一定の範囲の土地を、じぶんたちのナワバリにしており、ソコで農業だとか、簡易な製造業とかをおこない、ソレなりの収益・りえきを、だしているハズです」
「そのトップの性格、ひとがら、ニンゲン性についてはどうダロウか」
「ソウですね、コチラがはあくしているのは、まあ、典型的なワンマンというか、トップダウンでモノゴトをキメたり、おこなったりするタイプだとおもいます。中小キボのそしき・勢力に、おおいタイプかとおもいます」
「ワンマンで、トップダウンか」
「ハイ」
「ワンマンでトップダウン。コレはつまり、専制的で、どくさい者的ともいえるか」
「ソウ表現しても、あながち、マチガイではナイとおもいます」
「そして、言い争っていた、もうかたほうの勢力は、斎藤・後藤がしょぞくする勢力とは、トナリ同士であり、テリトリー、ナワバリが隣接している」
「ハイ、ソウなります」
「その、もうかたほうの勢力も、農業だとか、簡易な製造業をおこなっている。と、こういうワケだよね」
「そのとおりです」
「となると、言い争っていたのは、ナワバリ、テリトリーの範囲をめぐってか。あるいは、農産物、工業製品とか売るときに、ナニカしら、トラブルやモメごとがおきたか。
たとえば、商売の競争あいて同士だから、売る商品をめぐってだとか、あるいは、とりひき先や、お客をめぐってか。イロイロと、かんがえられる可能性がおおいか」
「たしかに、シゴト、商売で競合している間柄というか、かんけい性なワケですから、商売をめぐってだとか、あるいは、テリトリー、ナワバリをめぐってトラブったり、モメていた可能性を、カンゼンにひていするコトはデキません。
いかんせん、この土地は、まっとうな法治がありません。チャントしたケイサツ、司法機関がナイので、些細なコトがキッカケでも、おおきなトラブル、モメごと、あらそいごとに発展しかねません」
この藤柴の意見を聞いて、ふたたび徳吉は、かんがえこんでしまった。
「どうかされました?」
「イヤ、もしもだよ。今まではなした想定というか、想像が、あたっているんだとしたら、斎藤は、競合しているべつの勢力と、言い争っていた。というコトになる。しかも、まっとうなケイサツ、司法機関がナイ、この土地で。
というコトは、些細で些末、ちいさな言い争いでも、もしかしたら、おおきなケンカ、あらそいごと、トラブル、モメごと、もんだいの火種になりかねない。そういうリスク・キケン性っていうモノが、カナリたかいカタチになる。
ちいさな火の粉だとおもっていたけれど、気がついたら、いつの間にか、大火事になってしまった。というコトだって、十分にありえるワケだよね。
この第4地区で、シゴトや商売というカタチで、かつどうをしているニンゲンだったら、こんなコトは、おそらく、百も承知だとおもう」
「ソレはソウでしょうね。斎藤は、あの勢力のなかでは、たしか、ソレなりの地位の幹部のハズです。
つまり、十分すぎるほど、けいけん値を積んでいるハズです。もう何十年も、この土地で、かつどうをしているワケですから」
「だったらナゼ、その大火事になりかねない火ダネを、じぶんの上長にたいして、チャントほうこくしないのか。ましてや、ワンマンで、トップダウンなんだよね。ヤツの上司は。
そういう上司だったら、あとになってから、大事になってから、つまり、大火事になってから、『じつは、ワタシの言い争いが、りゆう・げんいんでした』なんていったとしたら、ソレこそ、じぶん自身がヒドイ目に遭ってしまう。
だから、上にたいして、ナニもいわず、だまっているっていうのは、すこしヘンといえるかもしれない。違和感をおぼえる」
「たしかに、ソウですね」
「まあ、ワンマンで、トップダウンの上司なんだから、ヘタなコトをいうと、機嫌をそこねる。だから、『つごうのワルイ情報を、上司・トップにたいして、わざといわず、だまっている』っていう可能性も、なくはない。でも、コレはすこし、ムリがある」
「といいますと?」
「なにせ、こんかいの件は、斎藤が言い争っていた対象・あいては、ヤツがしょぞくする勢力にとってみれば、じぶんたちと競合し、競争する間柄、かんけい性となっている。
コレは、ろこつにいえば、『じぶんが、ナニカしらのミス・しっぱいをした』っていうワケじゃない。
もしも、『じぶんがシゴト・商売で、ナニカのミス・しっぱいをした。だから、コレをトップにしらせると、じぶんがヒドイ目に遭ってしまう』というコトだったら、じぶんの身をまもるために、保身感覚から、だまっているっていうのも、可能性としては、十分ありえるとおもう。
でもこんかいは、『シゴト・商売で、じぶんたちと競争し、競合している勢力があいて』っていうワケだから、チョット事情がちがうとおもう。
つまり、『じぶんが、ナニカのミス・しっぱいをした。だから、ソレをトップにいいづらい、ほうこくをしにくい』というワケじゃない。
まあ、もしかしたら、『斎藤自身が、ナニカのミス・しっぱいをして、言い争いになった』という可能性もあるけどね。
でも、モノはいいようで、あいてがいる以上、じぶんのミス・しっぱいを、うまく隠して、『あいてのほうが、理不尽なコトをいいだして、コレがりゆう・げんいんで、言い争いになった』というカタチで、ほうこくするコトはデキるダロウし」
「つまり、じぶん自身のミス・しっぱいであっても、『競合している勢力のせいで、キケン・もんだい・トラブル・モメごとが発生した』と、いいわけの余地がある。というワケですね」
「もっとろこつにいえば、『その競合している勢力が、コチラのかつどう・シゴト・商売にたいして、ジャマ・ぼうがいをしてきた。だから、言い争いになった。その結果として、コチラが、ひがい・そんがいをうけた』というカタチで、上長にほうこくする。と、こういうコトもデキるダロウね。
なんせ、言い争いのあいては、じぶんたちと競合しているワケだし。斎藤の上長としても、その言い争いのあいてにたいして、『ホントウのところは、一体どういう事情なんだ』とは、なかなか聞けないダロウし。
こういうコトを、ほかの勢力・そしきにたいして聞くっていうのは、かんけい性が良好でないと、まずムリだとおもう。
つまり、じぶんたちと競争し、競合している以上、そのあいてにたいして、こういうコトを聞くっていうのは、フツウにかんがえて、まずデキるとはおもえない」
「いままでのコトをまとめると、斎藤が、トップにたいして言い争いになった件を、ほうこくしなかった。というコト自体が、チョットした違和感というか、不自然さをかんじますね」
「ほうこくをしなかった。のではなくて、ほうこくするコトがデキなかった。というコトだろうか」
「ほうこくするコトが、デキなかった。ですか」
ふたりのかいわを聞いていた高井が、ハッとした表情になった。
「そういえば、さいきん、このあたりで、とくていの種類のクスリが、急に品不足になり、手にはいらなくなった。っていうコトを、そうだんにきた客がいました」
この高井のコトバを聞いた藤柴もまた、ハッとした表情になった。
(ナンだ?ふたりとも、急にカオつきが変わったようだが)
「とくていの種類のクスリ?」
(ソウいえば、そんなコトが書かれた、キロク書類があったかな?)
「ソウいえば、まえに読ませてもらった、そうだん時のないようをキロクした書類に、そんなコトが書かれていたかな。でも、ソレが一体、どうしたっていうんだい?」
「いえ、徳吉さん、そのキロク書類には、ソレ以上のコトは、たしか書かれていませんでした。なにせ、そうだん者は、『ここさいきん、品不足でこまっている。食料品や衣料品、せいかつ必需品だけじゃなくて、クスリも品薄になり、手にはいらない。だから、びょうきになったり、体調をくずしたときに、とてもこまる。しかも、ナゼか、とくていの種類のクスリだけが、急に品不足になった。なにか、製造や流通とかで、もんだい・トラブルが、おきているんじゃないのか』といったカタチで、ハナシのながれで、すこしいっただけなんです。
しかも、ぐたいてきに、『どこのばしょで、どういう種類のクスリが不足しており、手にはいらないのか』とまでは、くわしく言っていないんです。
ですが、このハナシのなかで、『ナゼか、とくていの種類のクスリだけが、急に品不足になった』というのが、引っかかりました。
せいかつ必需品などが不足している。というハナシなのに、『とくていの種類のクスリだけが、急に』っていうのは、今こうしてかんがえてみると、すこしヘンな気がします。違和感というか、不しぜんかと。
ソレで、この件をおもいだしていたんですが、そうだん者の住んでいる地域っていうのが、たしか、この斎藤がしょぞくする勢力のナワバリ、テリトリーなんですよ」
「となると、ヤツラのナワバリ、テリトリーでは、とくていの種類のクスリを、急にダレかが買い占めたり、どくせん的に手にいれて確保している。と、こういうコトになるワケか。
ソレにしても、そんなコトがデキるのは、一定以上のチカラ・けんりょくを持っているか、おカネを持っている。というニンゲンにかぎられる」
ココまでいうと、徳吉もまた気がついた。
「ナルホド、斎藤がしょぞくする勢力のトップか、あるいは幹部クラスが、急に買い占めたり、どくせん的に手にいれて、確保をしている。と、こういうワケか」
「おそらく、そういうコトだとおもいます」
「そして、たった今、アタマのなかでつながったんですが、斎藤がしょぞくする勢力が、『ここさいきん、近隣のニンゲン・勢力にたいして、とくていの商品を、妙に買いあつめている』っていう情報を、どこかで聞いたコトがあります。たいした情報ではなかったので、まったく気にしていませんでした」
徳吉と藤柴がハナシをしているあいだ、高井は一旦、その場をあとにしていた。そして、すこし経ってから、資料を持ってきたのである。
「コレです。ここ数か月、イロイロな商品が品不足になり、ねだんが上がってしまった。そのなかにはクスリもふくまれており、ナントカしてほしい。ナントカして、クスリを手にいれるコトはデキないか。と、そのときのそうだん者のはなしたキロクが、コレになります」
ほうこく資料を読んだ徳吉は、アレコレと、アタマのなかでかんがえていた。
(このキロク書類自体は、それほど重要なコトが、書いてあるというワケではない。おそらく、何気なく読んでしまい、ソレでおわりダロウ。
でも、今まで聞いたハナシを基にすると、コレを、アタマのなかにいれて、いしきして読んでみると、一見すると、どうでもよいハナシや情報におもえるが、まったくイミが違ってくるか)
「道ばたにある小石や雑草は、たとえソレを見て、視界にはいっても、スガタ・カタチだとか、数や色をおぼえていない。か」
「どうしました?」
徳吉のツブヤキにたいして、藤柴が聞きかえした。
「イヤ、このキロク書類自体は、たいしたコトは書かれていない。だから、コレが重要でたいせつな情報・じじつとは、ダレも気がつかんよ。
というか、コレ自体には、たいした価値はナイかもしれない。でも、いちれんの斎藤の行動をふまえてみると、つまり、比較照合してみると、価値がでるというか、重要性が増すような気がする」
「ほかのモノをくらべるコトで、わかるコトがある。と、こういうコトでしょうか?」
「そういうコトになる。ほかのモノと比較して、くらべてみるコトで、それまで気がつかなかったコトに、気がついた。そして、そのコトを、いしきするようになった。
ニンゲンは、いしきをしていないと、貴重で価値のたかい情報・じじつ、あるいは、案やアイデアや意見がそんざいしても、その貴重性だとか、価値のたかさに気がつかない。というか、『ソコに、ソレがそんざいしている』というコト自体に、まったく気がつかない」
「ソレはつまり、『道ばたの小石や雑草を見ても、いしきしていないと、キオクするコトはナイし、まったくおぼえていない』というコトに、似ているとおっしゃりたいワケですね?」
「そういうコトになる。つい、ポロっとでたコトバだから、まあ深いイミはナイよ」
(深いイミはナイというけど、このヒトは、コッチがドキッとするような、するどいコトをいうからなあ)
「徳吉さんは、深いイミはない。と、こうおっしゃいますが、でも、ワタシとしては、チョット気になります」
「ソウかなあ」
「ハイ、ですので、このコトを、もうすこし、深く掘りさげてみたい。と、こうかんがえます」
「気にしすぎにもおもえるけどね」
「いえいえ、先ほど徳吉さんがおっしゃっていた、ほかのモノとくらべるコトで、つまり、比較照合をするコトで、今までまったく気がつかなかったコトに、気がつくコトもある。コレが重要であり、たいせつな気がします」
「ほかのモノとくらべる、か」
(じゃあ、ほかにナニカ、くらべれるモノがあるのか?)
「ちなみに、このクスリ等の品不足にかんする情報で、ほかにナニカ、関連のありそうな情報・じじつや、キロク書類や資料っていうのはあるのかい?」
徳吉に聞かれ、すこしのあいだ、藤柴はかんがえこんでいた。
「イエ、ざんねんながら、すぐにパッとアタマにうかぶコトはありません。高井、オマエのほうはどうだ?」
「いや、オレもおもいつかない」
「となると、今ある手持ちの情報・じじつでは、コレ以上のコトは、わからない。と、こういうワケか」
「ソウなりますね」
藤柴が答えた。
「なら、あたらしい情報・じじつを、あつめるべきダロウか」
「たしかに、徳吉さんのおっしゃるとおりかと、ワタシと高井で、イロイロとあつめてみます」
「ヨロシクたのむよ」
徳吉がこういうと、ふたりは、その場を立ち去った。




