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クスリの不足

 すこしあと、ジム所の一室で、3人がそろい、藤柴と高井のふたりは、徳吉にたいして、斎藤と後藤がしょぞくする勢力について、知っている情報・じじつのほうこくをはじめた。その結果、いくつか、わかった点があった。

 ソレは、「どうやら斎藤は、べつの勢力と言い争いった。という件について、じぶんがしょぞくする勢力のニンゲン。というか、じぶんの上長にたいして、ほうこくをしていない」というコトであった。

「ヤツラのしょぞくする勢力ですが、何人か、接触をしているニンゲンがいます。スパイというほどじゃありませんが、時々、会ってハナシを聞くていどです。

 ソチラの勢力は、今はどういう状態なのか、ナニがあったのか。っていうレベルのハナシです。日常かいわの延長線上です。あまり突っこんだハナシだとか、ないぶ事情とかを聞くと、あいても警戒しますからね。

 ですから、まあ、『さいきん、調子はどうだい?こまったコトでもあるかい?』というていどです。

 ソレで、このまえ、われわれが、このジム所に向かうとちゅう、斎藤が、べつの勢力のニンゲンと、ナニやら言い争ってたが、ナニカのトラブル、モメごとでもあったのか?

 と、ハナシを振ってみたら、『一体ナンのコトですか?』と、ぎゃくに聞きかえされてしまいました」

 このハナシを藤柴がしたとき、高井が、すこし反応をした。

「そのハナシは、じぶんも藤柴から聞いていましたが、そのときは、あまり気にしませんでした。でも、今こうして、あらためてハナシを聞いてみると、チョット気になりますね」

「ナニがだ?」

 と、藤柴が聞きかえした。

「いや、オレがこのハナシを、オマエから聞いたのは、後藤がジム所にやってくるまえだったよな。たしか」

「たしか、ソウだとおもう」

「でも、今こうして、わざわざ斎藤が、『コチラがしらないダロウ』とかんがえている後藤を、わざわざ、このジム所にたいして寄こしてきた。この件をふまえると、チョット気になる」

 ふたりのかいわを聞いていた徳吉が、ココで、クチをひらいた。

「高井くんのいうとおりかもしれない。ハッキリとしたウラづけ、こんきょ、確証はナイが、オレもチョット気になる」

「徳吉さんもですか。高井と徳吉さんのふたりが、気になるっていうコトは、チョット引っかかりますね。

 オレ自身は、ちょくせつ的にハナシを聞いたニンゲンですから、つまりまあ、当事者になりますので、あまり気になりませんでした。

 でも、第3者であるニンゲンふたりが、こうして気になるっていうのは、チョット引っかかります」

「岡目八目っていうくらいだし、当事者は、意外と気にならないけれども、第3者は気がつく。っていうコトは、カナリおおいとおもうよ」

 徳吉は、こういうと、すこしかんがえだした。

(斎藤は、言い争いの件を、じぶんがしょぞくする勢力にたいして、ほうこくをしていない。コレはつまり、『いいたくない、しられたくない』っていうハナシのないようだったか。

 あるいは、『些細で些末、カナリちいさなコトだから、イチイチほうこくは不要だ、いらないダロウ』と、こうかんがえたか。このふたつのどちらかになるダロウ。

 で、ソコで、ナンでわざわざ、コチラにたいしてカオが割れていない。とおもった後藤を、このジム所にたいして送りこんできたのか)

「斎藤は、言い争いの件を、じぶんがしょぞくする勢力のニンゲンにたいして、ほうこくをせず、しらせなかった。

 コレは、『しられたくない』というコトか、あるいは、『しらせるほどのコトじゃない』と、はんだんした可能性がたかいか。

 まあコレだけだったら、そんなに気にするほどじゃない。でも、そのあとに、なんでわざわざ、このジム所にたいして、後藤を寄こしたのか。

 しかも、この人選っていうのは、『コチラがしらないダロウ』とおもうニンゲンを、わざわざ寄こしている。ココに、チョット引っかかるよ」

「徳吉さんのおっしゃるとおりですね。オレも同感です」

 高井も賛同した。

「となると、べつの角度、視点から、見てみるベキかもしれない」

「べつの角度、視点からですか」

「そう、デキるコトならね」

「でしたら、やはり、言い争っていた、もうかたほうの勢力っていうのが、チョット気になりますね」

「高井くんのいうとおりだ」

 こういうと、徳吉は、先ほどもらった、もうかたほうの勢力についての資料を手に取って、読みはじめた。

「ちなみに、ふたりの見解では、このふたりの勢力の間柄というか、かんけい性っていうのは、どう解釈しているか、言ってもらえるかい?」

「ふたつの勢力の間柄。ですか」

「ソウ、まえに、『ちょくせつ的に、ハッキリとあらそい、ケンカをしているワケじゃない』っていうイミのコトを、聞いたコトがあるけど。もうすこし、くわしいコトが知りたい。まあ、デキる範囲で良いけどね」

「ソウですね。おわたしした資料には、あまりくわしいコトは書いてありません。まあ、コチラとしても、くわしい情報がない。っていうのもありますが、確証のある情報でなければ、おはなしするコトはデキますよ」

 と、藤柴が答えた。

「ソレでかまわないよ」

「わかりました」

 こういうと、藤柴が、この勢力について、ハナシをはじめた。そのあとに、高井もまた、ハナシをはじめた。


(表面上は、ハッキリとてきたいし、たいりつをして、あらそっているワケじゃない。でも、水面下では、意外とトラブったり、モメているのかもしれない)

 ふたりのハナシを聞いて、徳吉はそうおもった。

「どうやら、ふたりのハナシを聞くと、表面上は、ハッキリとあらそっているワケじゃないが、コチラのしらないところで、水面下では、意外とトラブルになったり、モメている可能性もあるワケか」

「ソウですね。まあ、コチラにたいして、ちょくせつ的にかかわる件ではないので、ワタシも高井も、今までは、あまり気にしていませんでした。

 しょうじきなところ、『手にはいる情報だから、ムリのない範囲で、手にいれておいた』といった感じですかね」

「今までは、か」

「ソウです、今までは。でも、こんかい、こうしてあらためて、イロイロと掘りさげて、アレコレとがんがえてみると、たしかに、もうすこし、くわしくしらべたり、はあくをしても良いかもしれません」

「なにせ斎藤が、わざわざ後藤を、ココにたいして寄こしたくらいだしね」

「ええ」

(向こうのほうから、わざわざアクションをおこしてきた。コレは、コチラにとっては、たいしたコトじゃないが、向こうにとっては、『ソレなりに気になるというか、注意したい』というコトになるワケか)

「すこし、タネを蒔いてみよう」

「タネ、ですか。ぐたいてきに、ナニを蒔くんですか?」

「後藤にたいしてだよ」

「後藤に、ですか?」

「もしも、つぎに後藤がやってきたら、それとなく、『コチラが、言い争いのないようを、すこし掴んでいる』という感じで、ハナシを振ってみても良いかもしれない。

 もっというと、『言い争いっていた、もうかたほうのコトも、ソレとなく、後藤にたいして匂わせる』というカタチで」

「ソレで、後藤が、一体どういう反応をするのか。ソレを見る。というワケですね?」

「そうなる。後藤の反応を見て、ソコから、なにかあたらしい情報・じじつだとか、あるいは、あたらしい意味合いや解釈を、手にいれるコトがデキるかもしれない」

「つまり、コチラが見落としていたり、気がついていないコトが、わかるかもしれない。と、こういうワケでしょうか?」

「さすが、飲みこみがはやいね」

「では、つぎに後藤がきたら、ワタシか高井が、ヤツのたいおうをしましょう」

「ソレがいいかもしれない。こういうコトは、ニブイというか、バカにやらせると、かえってウラ目にでてしまう。

 カンのするどいニンゲンでないと、瞬時のテキセツなはんだんや、反応とかがデキない。だから、君たちのどちらかが、ソレをやるのが良いかもしれない。

 オレは、そういう瞬時のはんだんや反応っていうモノが、どうにもニガテでね。ソレに、やってきたばかりのニンゲンだから、まだ第4地区の事情にうとい。

 だから、どこかでボロがでるかもしれない。こうかんがえると、君たちのどちらかが、後藤のたいおうをするのが、ベストだとおもう」

「わかりました。では、つぎにやってきたとき、ワタシと高井のどちらかが、たいおうをします」

「ヨロシクたのむよ」

 こういうと、藤柴、高井のふたりは、ヘヤをでていった。

(さて、コレをやって、吉とでるか、凶とでるか)


 数日後、ふたたび後藤が、ジム所にやってきた。そして、ソコに居合わせた高井が、たいおうをしたのであった。

 数十分後、そうだんをおえた後藤は、ジム所をあとにした。

(アイツ、反応しやがった)

 こうおもうと、高井は、藤柴と徳吉のふたりにハナシをするために、その場をあとにした。そして、数分後、3人が、ジム所の一室にあつまった。

「以上が、こんかい、後藤とハナシをしたないようです」

 高井のほうこくを聞いた徳吉は、目を閉じていた。なにやら、思案顔のようすであった。

「オマエがハナシをしたとき、どういう感想を持った?」

「すこし引っかかったのは、オレが、言い争っていた、もうかたほうの勢力のナマエをだしたら、後藤は、ほんの一瞬だけ、すこし表情が硬くなった。目が真剣というか、わらっていなかった」

「ソウか、カオにでたか」

「ああ、触れてはほしくない。とおもったのか、それとも、『言い争っていた、もうかたほうの勢力のコトについて、コチラが、なにか知っているのか知りたい』とおもったのか。

 はたまた、『言い争いのないようについて、どこまでコッチが知っているのか、気になる』とおもったのか、ナゼなのかはわからんが、内心のホンネが、一瞬だけだが、ヤツの表情にでた気がする」

「となると、やはり後藤は、というか、斎藤は、コチラのコトを、探ろうとしているのかもしれんか」

「ソウかんがえても、オカシクはないとおもう」

 ふたりのハナシを聞いていた徳吉が、クチをひらいた。

「表情が、一瞬だけ真顔になった。っていうコトは、斎藤が、言い争いの件を、じぶんの上長にしらせず、ほうこくしなかったのは、その動機・りゆうは、『些細で些末、どうでもよいコトだから』っていうのは、ナイかもしれんか」

「ソウですね。もしもホントウに、どうでも良いコトだったら、コチラのコトバに、真顔になるりゆうも、ひつよう性も、まずナイでしょうし。

 というか、もしもソウだったら、そもそも、このジム所にたいして、後藤がやってくるコトはナイでしょうね。コチラのコトを、探るりゆうも、ひつよう性も、まずナイかとおもいます」

「藤柴くんのいうとおりだ。わざわざ後藤が、このジム所にやってきた。そして、言い争っていた、もうかたほうの勢力のナマエをだしたら、ほんの一瞬だけとはいえ、ヤツの目が真剣になり、真顔になった。

 コレはつまり、ヤツラにとっては、真剣にならざるをえない事情・りゆうで、言い争っていた。と、こういうカタチでかんがえるほうが、ムリがない気がする」

「となると、やはり、その言い争っていた事情・りゆうが、一体ナンなのか。っていうコトが、気になってきますね」

「でも、ソコまでは、コチラもつかんではいない。オレはまったくしらない。オマエもダロウ」

 と、高井が藤柴にたいして聞いた。

「そのとおりだ。オレもしらない」

 ココで、ハナシは一旦おわってしまった。「もうコレ以上は、ざいりょうがない以上、予測・推測をするコトがデキない」という状態になったといえるであろう。

「チョット聞きたいんだど」

 今までだまっていた徳吉が、ココで、ハナシに入ってきた。

「斎藤がしょぞくする勢力のトップっていうのは、どういうヤツなのか、知っているかい?」

「ワタシも高井も、ちょくせつ的に会ったコトはありません。でも、小キボな勢力とはいえ、ソレなりのチカラを持っていると解釈しています。

 一定の範囲の土地を、じぶんたちのナワバリにしており、ソコで農業だとか、簡易な製造業とかをおこない、ソレなりの収益・りえきを、だしているハズです」

「そのトップの性格、ひとがら、ニンゲン性についてはどうダロウか」

「ソウですね、コチラがはあくしているのは、まあ、典型的なワンマンというか、トップダウンでモノゴトをキメたり、おこなったりするタイプだとおもいます。中小キボのそしき・勢力に、おおいタイプかとおもいます」

「ワンマンで、トップダウンか」

「ハイ」

「ワンマンでトップダウン。コレはつまり、専制的で、どくさい者的ともいえるか」

「ソウ表現しても、あながち、マチガイではナイとおもいます」

「そして、言い争っていた、もうかたほうの勢力は、斎藤・後藤がしょぞくする勢力とは、トナリ同士であり、テリトリー、ナワバリが隣接している」

「ハイ、ソウなります」

「その、もうかたほうの勢力も、農業だとか、簡易な製造業をおこなっている。と、こういうワケだよね」

「そのとおりです」

「となると、言い争っていたのは、ナワバリ、テリトリーの範囲をめぐってか。あるいは、農産物、工業製品とか売るときに、ナニカしら、トラブルやモメごとがおきたか。

 たとえば、商売の競争あいて同士だから、売る商品をめぐってだとか、あるいは、とりひき先や、お客をめぐってか。イロイロと、かんがえられる可能性がおおいか」

「たしかに、シゴト、商売で競合している間柄というか、かんけい性なワケですから、商売をめぐってだとか、あるいは、テリトリー、ナワバリをめぐってトラブったり、モメていた可能性を、カンゼンにひていするコトはデキません。

 いかんせん、この土地は、まっとうな法治がありません。チャントしたケイサツ、司法機関がナイので、些細なコトがキッカケでも、おおきなトラブル、モメごと、あらそいごとに発展しかねません」

 この藤柴の意見を聞いて、ふたたび徳吉は、かんがえこんでしまった。

「どうかされました?」

「イヤ、もしもだよ。今まではなした想定というか、想像が、あたっているんだとしたら、斎藤は、競合しているべつの勢力と、言い争っていた。というコトになる。しかも、まっとうなケイサツ、司法機関がナイ、この土地で。

 というコトは、些細で些末、ちいさな言い争いでも、もしかしたら、おおきなケンカ、あらそいごと、トラブル、モメごと、もんだいの火種になりかねない。そういうリスク・キケン性っていうモノが、カナリたかいカタチになる。

 ちいさな火の粉だとおもっていたけれど、気がついたら、いつの間にか、大火事になってしまった。というコトだって、十分にありえるワケだよね。

 この第4地区で、シゴトや商売というカタチで、かつどうをしているニンゲンだったら、こんなコトは、おそらく、百も承知だとおもう」

「ソレはソウでしょうね。斎藤は、あの勢力のなかでは、たしか、ソレなりの地位の幹部のハズです。

 つまり、十分すぎるほど、けいけん値を積んでいるハズです。もう何十年も、この土地で、かつどうをしているワケですから」

「だったらナゼ、その大火事になりかねない火ダネを、じぶんの上長にたいして、チャントほうこくしないのか。ましてや、ワンマンで、トップダウンなんだよね。ヤツの上司は。

 そういう上司だったら、あとになってから、大事になってから、つまり、大火事になってから、『じつは、ワタシの言い争いが、りゆう・げんいんでした』なんていったとしたら、ソレこそ、じぶん自身がヒドイ目に遭ってしまう。

 だから、上にたいして、ナニもいわず、だまっているっていうのは、すこしヘンといえるかもしれない。違和感をおぼえる」

「たしかに、ソウですね」

「まあ、ワンマンで、トップダウンの上司なんだから、ヘタなコトをいうと、機嫌をそこねる。だから、『つごうのワルイ情報を、上司・トップにたいして、わざといわず、だまっている』っていう可能性も、なくはない。でも、コレはすこし、ムリがある」

「といいますと?」

「なにせ、こんかいの件は、斎藤が言い争っていた対象・あいては、ヤツがしょぞくする勢力にとってみれば、じぶんたちと競合し、競争する間柄、かんけい性となっている。

 コレは、ろこつにいえば、『じぶんが、ナニカしらのミス・しっぱいをした』っていうワケじゃない。

 もしも、『じぶんがシゴト・商売で、ナニカのミス・しっぱいをした。だから、コレをトップにしらせると、じぶんがヒドイ目に遭ってしまう』というコトだったら、じぶんの身をまもるために、保身感覚から、だまっているっていうのも、可能性としては、十分ありえるとおもう。

 でもこんかいは、『シゴト・商売で、じぶんたちと競争し、競合している勢力があいて』っていうワケだから、チョット事情がちがうとおもう。

 つまり、『じぶんが、ナニカのミス・しっぱいをした。だから、ソレをトップにいいづらい、ほうこくをしにくい』というワケじゃない。

 まあ、もしかしたら、『斎藤自身が、ナニカのミス・しっぱいをして、言い争いになった』という可能性もあるけどね。

 でも、モノはいいようで、あいてがいる以上、じぶんのミス・しっぱいを、うまく隠して、『あいてのほうが、理不尽なコトをいいだして、コレがりゆう・げんいんで、言い争いになった』というカタチで、ほうこくするコトはデキるダロウし」

「つまり、じぶん自身のミス・しっぱいであっても、『競合している勢力のせいで、キケン・もんだい・トラブル・モメごとが発生した』と、いいわけの余地がある。というワケですね」

「もっとろこつにいえば、『その競合している勢力が、コチラのかつどう・シゴト・商売にたいして、ジャマ・ぼうがいをしてきた。だから、言い争いになった。その結果として、コチラが、ひがい・そんがいをうけた』というカタチで、上長にほうこくする。と、こういうコトもデキるダロウね。

 なんせ、言い争いのあいては、じぶんたちと競合しているワケだし。斎藤の上長としても、その言い争いのあいてにたいして、『ホントウのところは、一体どういう事情なんだ』とは、なかなか聞けないダロウし。

 こういうコトを、ほかの勢力・そしきにたいして聞くっていうのは、かんけい性が良好でないと、まずムリだとおもう。

 つまり、じぶんたちと競争し、競合している以上、そのあいてにたいして、こういうコトを聞くっていうのは、フツウにかんがえて、まずデキるとはおもえない」

「いままでのコトをまとめると、斎藤が、トップにたいして言い争いになった件を、ほうこくしなかった。というコト自体が、チョットした違和感というか、不自然さをかんじますね」

「ほうこくをしなかった。のではなくて、ほうこくするコトがデキなかった。というコトだろうか」

「ほうこくするコトが、デキなかった。ですか」

 ふたりのかいわを聞いていた高井が、ハッとした表情になった。

「そういえば、さいきん、このあたりで、とくていの種類のクスリが、急に品不足になり、手にはいらなくなった。っていうコトを、そうだんにきた客がいました」

 この高井のコトバを聞いた藤柴もまた、ハッとした表情になった。

(ナンだ?ふたりとも、急にカオつきが変わったようだが)

「とくていの種類のクスリ?」

(ソウいえば、そんなコトが書かれた、キロク書類があったかな?)

「ソウいえば、まえに読ませてもらった、そうだん時のないようをキロクした書類に、そんなコトが書かれていたかな。でも、ソレが一体、どうしたっていうんだい?」

「いえ、徳吉さん、そのキロク書類には、ソレ以上のコトは、たしか書かれていませんでした。なにせ、そうだん者は、『ここさいきん、品不足でこまっている。食料品や衣料品、せいかつ必需品だけじゃなくて、クスリも品薄になり、手にはいらない。だから、びょうきになったり、体調をくずしたときに、とてもこまる。しかも、ナゼか、とくていの種類のクスリだけが、急に品不足になった。なにか、製造や流通とかで、もんだい・トラブルが、おきているんじゃないのか』といったカタチで、ハナシのながれで、すこしいっただけなんです。

 しかも、ぐたいてきに、『どこのばしょで、どういう種類のクスリが不足しており、手にはいらないのか』とまでは、くわしく言っていないんです。

 ですが、このハナシのなかで、『ナゼか、とくていの種類のクスリだけが、急に品不足になった』というのが、引っかかりました。

 せいかつ必需品などが不足している。というハナシなのに、『とくていの種類のクスリだけが、急に』っていうのは、今こうしてかんがえてみると、すこしヘンな気がします。違和感というか、不しぜんかと。

 ソレで、この件をおもいだしていたんですが、そうだん者の住んでいる地域っていうのが、たしか、この斎藤がしょぞくする勢力のナワバリ、テリトリーなんですよ」

「となると、ヤツラのナワバリ、テリトリーでは、とくていの種類のクスリを、急にダレかが買い占めたり、どくせん的に手にいれて確保している。と、こういうコトになるワケか。

 ソレにしても、そんなコトがデキるのは、一定以上のチカラ・けんりょくを持っているか、おカネを持っている。というニンゲンにかぎられる」

 ココまでいうと、徳吉もまた気がついた。

「ナルホド、斎藤がしょぞくする勢力のトップか、あるいは幹部クラスが、急に買い占めたり、どくせん的に手にいれて、確保をしている。と、こういうワケか」

「おそらく、そういうコトだとおもいます」

「そして、たった今、アタマのなかでつながったんですが、斎藤がしょぞくする勢力が、『ここさいきん、近隣のニンゲン・勢力にたいして、とくていの商品を、妙に買いあつめている』っていう情報を、どこかで聞いたコトがあります。たいした情報ではなかったので、まったく気にしていませんでした」

 徳吉と藤柴がハナシをしているあいだ、高井は一旦、その場をあとにしていた。そして、すこし経ってから、資料を持ってきたのである。

「コレです。ここ数か月、イロイロな商品が品不足になり、ねだんが上がってしまった。そのなかにはクスリもふくまれており、ナントカしてほしい。ナントカして、クスリを手にいれるコトはデキないか。と、そのときのそうだん者のはなしたキロクが、コレになります」

 ほうこく資料を読んだ徳吉は、アレコレと、アタマのなかでかんがえていた。

(このキロク書類自体は、それほど重要なコトが、書いてあるというワケではない。おそらく、何気なく読んでしまい、ソレでおわりダロウ。

 でも、今まで聞いたハナシを基にすると、コレを、アタマのなかにいれて、いしきして読んでみると、一見すると、どうでもよいハナシや情報におもえるが、まったくイミが違ってくるか)

「道ばたにある小石や雑草は、たとえソレを見て、視界にはいっても、スガタ・カタチだとか、数や色をおぼえていない。か」

「どうしました?」

 徳吉のツブヤキにたいして、藤柴が聞きかえした。

「イヤ、このキロク書類自体は、たいしたコトは書かれていない。だから、コレが重要でたいせつな情報・じじつとは、ダレも気がつかんよ。

 というか、コレ自体には、たいした価値はナイかもしれない。でも、いちれんの斎藤の行動をふまえてみると、つまり、比較照合してみると、価値がでるというか、重要性が増すような気がする」

「ほかのモノをくらべるコトで、わかるコトがある。と、こういうコトでしょうか?」

「そういうコトになる。ほかのモノと比較して、くらべてみるコトで、それまで気がつかなかったコトに、気がついた。そして、そのコトを、いしきするようになった。

 ニンゲンは、いしきをしていないと、貴重で価値のたかい情報・じじつ、あるいは、案やアイデアや意見がそんざいしても、その貴重性だとか、価値のたかさに気がつかない。というか、『ソコに、ソレがそんざいしている』というコト自体に、まったく気がつかない」

「ソレはつまり、『道ばたの小石や雑草を見ても、いしきしていないと、キオクするコトはナイし、まったくおぼえていない』というコトに、似ているとおっしゃりたいワケですね?」

「そういうコトになる。つい、ポロっとでたコトバだから、まあ深いイミはナイよ」

(深いイミはナイというけど、このヒトは、コッチがドキッとするような、するどいコトをいうからなあ)

「徳吉さんは、深いイミはない。と、こうおっしゃいますが、でも、ワタシとしては、チョット気になります」

「ソウかなあ」

「ハイ、ですので、このコトを、もうすこし、深く掘りさげてみたい。と、こうかんがえます」

「気にしすぎにもおもえるけどね」

「いえいえ、先ほど徳吉さんがおっしゃっていた、ほかのモノとくらべるコトで、つまり、比較照合をするコトで、今までまったく気がつかなかったコトに、気がつくコトもある。コレが重要であり、たいせつな気がします」

「ほかのモノとくらべる、か」

(じゃあ、ほかにナニカ、くらべれるモノがあるのか?)

「ちなみに、このクスリ等の品不足にかんする情報で、ほかにナニカ、関連のありそうな情報・じじつや、キロク書類や資料っていうのはあるのかい?」

 徳吉に聞かれ、すこしのあいだ、藤柴はかんがえこんでいた。

「イエ、ざんねんながら、すぐにパッとアタマにうかぶコトはありません。高井、オマエのほうはどうだ?」

「いや、オレもおもいつかない」

「となると、今ある手持ちの情報・じじつでは、コレ以上のコトは、わからない。と、こういうワケか」

「ソウなりますね」

 藤柴が答えた。

「なら、あたらしい情報・じじつを、あつめるべきダロウか」

「たしかに、徳吉さんのおっしゃるとおりかと、ワタシと高井で、イロイロとあつめてみます」

「ヨロシクたのむよ」

 徳吉がこういうと、ふたりは、その場を立ち去った。

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