知っているコト
すこしあと、徳吉の下に、先ほど依頼した資料がとどけられた。ソレを読んでいくうちに、アレコレと、アタマにうかぶコトがでてきたのである。
(そもそもヤツラは、ナゼこんかい、コチラにたいして接触をしてきたのか。っていう点は、モチロンだけれども、なぜ斎藤ほんにんじゃなくて、部下である後藤を、コチラにたいして寄こしたのか。ソレも、今までに、高井も藤柴も会ったコトがないニンゲンを)
「ところで、ひとつかくにんしたいんだけれども」
徳吉は、資料を持ってきた藤柴にたいして、ハナシを振った。
「ナンでしょうか?」
「君も、高井くんも、この後藤っていうニンゲンとは、面識がないんだよね?」
「ええ、ありません。会ったコトもありません」
「というコトは、ヤツラは、君たちが、というよりは、コチラがわが、『この後藤っていうニンゲンのコトを、知らないダロウ』っていう前提でいるかもしれないか。
だからこそ、ほんにんではなくて、部下である後藤を、コチラにたいして寄こした。こうかんがえても良いダロウか」
「ハッキリと断言するコトはデキませんが。その可能性は、カナリたかいかとおもいます」
「斎藤っていうヤツは、コチラが知らないであろう。っていうニンゲンを、わざわざ、コチラにたいして寄こした。
じゃあ、もしコレが、ホントウにあたっているんだとしたら、ナンでまた、そんなコトをしたんダロウか。君たちは、どうおもう?」
「ソウですね。カンゼンに憶測になりますが、コチラが知らないであろうニンゲンをつかって、コチラのコトを、さぐりにきた。
もっというと、このまえの言い争いのないようを、コチラが、どのていど知り、はあくしたのかを、知りたいとおもった。
想像するに、コチラにたいして、しられたくないコトで、言い争いをしていた。そして、コチラが知っているニンゲンを、ココにたいして寄こすと、コチラが警戒し、ボロをだすかもしれない。と、こうかんがえた可能性も、あるかとおもいます」
「ナルホド、コッチが知っているニンゲンを、ココにたいして寄こすと、コチラが、『このまえの言い争いのコトで、ナニカさぐりにきたのか』というコトに気づいて、カンづくかもしれない。
そのコト自体が、ヤツラにとっては、『あまりヨロシクない。デキるコトならば避けたい』と、こういう解釈になるのか」
「ええ」
「オレも、ソレには賛成だね。コチラが知らないであろうニンゲンを、わざわざえらんで、ココにたいして立ち寄らせた。
というコトは、コチラのコトを、妙に警戒している。といっても良いのかもしれないか」
「ヤツラは、コチラのコトを警戒している。だからこそ、コチラが警戒したり、注意するようなコトは避けたい。っていう思惑が、あったかとおもいます」
「しかし、君たちはすでに、この後藤っていうニンゲンについて知っていた。向こうは、コチラの情報収集のうりょくを、実態よりも、カナリあまく見ている。と、こういうコトがいえるか」
「ワタシも高井も、情報の収集については、慎重におこなっているツモリです。あからさまに、ろこつに情報を収集していると、ほかのニンゲンに気づかれたり、カンづかれますし。ですので、そうならないように、いつも注意はしています」
(この第4地区にいるニンゲンや勢力は、この藤柴・高井のチカラ・のうりょくを、おそらく、十分はあくしていないんだろう。
たぶん、『第3地区からやってきた、妙にカンがするどい、たんなるジム員だとか、職員ダロウ』っていうくらいしか、いしきしていないかもしれない)
「タネを、蒔いておくべきか」
「タネですか?」
「せっかく、あいてのほうからノコノコと、コチラにたいして接触をしてきた。コレは、コチラからしたら、あるイミで、人為的、人工的なデキゴト・ジケンじゃあなくて、しぜん発生的なデキゴト・ジケンっていうカタチになる。
コチラが意図的に、つまり、人為的、人工的にナニカをおこなうと、たにんは、ひつよう以上に警戒しやすい。不しぜんさ、違和感をおぼえやすい。
でも、コチラが意図的につくったり、おこなったコトじゃなくて、コチラ以外のダレかがつくったり、おこなったコトだったら、『しぜん発生的なデキゴト・ジケン』っていうカタチになる。
コレをりゆう・キッカケにすれば、たいていのニンゲンは、ムリをかんじにくい。つまり、不しぜんさ、違和感をおぼえにくい」
「ナルホド。たしかに、コチラから、ココにやってこい。と、言ったワケではありません。コチラからしたら、あいてが勝手に、じぶんの意思でココにやってきた。つまり、意図せずにおきた、しぜん発生的なデキゴト・ジケンになりますね」
「そういう、人為的、人工的ではなくて、しぜん発生的なデキゴト・ジケンっていうモノを、りゆう・キッカケにして、ナニカの行動・アクションをおこせば、ソレは、ムリがすくない。
だから、不しぜんさ、違和感がすくない。ソウなると、モノゴトは、意外とスムーズにススミやすい。と、オレはかんがえている」
「ソレはたしかに、ソウでしょうね。ダレかが、意図的に、ナニカのジケン・デキゴトを発生させたり、つくったり、おこなったんであれば、たにんからすれば、『コレは、オマエが勝手にやったコトなんダロウが』と、こういう目で見るでしょうし」
「そういう目で見られると、不しぜんさ、違和感がつよくなる。だから、ばあいによっては、ひつよう以上に警戒されて、モノゴトが、スムーズにすすまなくなる。
でもこんかい、この後藤っていうニンゲンは、オレたちからすれば、まったく呼んでもいないのに、ノコノコと、コチラにたいして勝手に、じぶんの意思で接触をしてきた。コレはコレで、あるイミで、良いキッカケになるかもしれない」
「良いキッカケですか」
「ソウ、コチラが行動し、アクションをおこすのに適した、良いキッカケに」
「だとすれば、コチラとしては、一体、どういうアクションをおこすベキでしょうか?」
「もしも、つぎに、この後藤がやってきたならば、あいてが予想する以上のコトを、つたえても良いかもしれない」
「といいますと、個人の持っている、私有ざいさん・資産をデータ化する件で、情報をわたす。というコトでしょうか?」
「ソレも、たしかにアリかもしれないが、そもそも、この後藤と斎藤がしょぞくする勢力っていうのは、この件について、あまり乗り気じゃないんだよね?」
「ええ、そのようです。今まで、ココの勢力から、良い反応というかリアクションは、皆無といっていいです」
「あいてが興味も関心も持っていないコトを、コチラがおおく言ってみたところで、おそらくあいては、ナンの反応もリアクションもおこさない気がする。
だから、あいてが興味や関心を持っているのであろうコトを、あいてにたいしてつたえるほうが、効果があるとおもう」
「となると、まあコチラのカンゼンな想像ですが、『言い争いの件で、コチラがナニカしら、事情をはあくしており、知っている』というコトを、あいてにたいして匂わせる。というカタチになりますね」
「ソウなる。とはいっても、コチラとしては、言い争いのないよう・りゆう・事情っていうものを、ほとんど知らない。ソウだよね?」
「ソウなります。ぐたいてきなコトは、はあくしておりません」
こう答えた藤柴のコトを、徳吉は、ジッと見ていた。
(ナンだ?オレはナニカ、マズイようなコトでもいったか?)
「こんかい、斎藤は、『後藤のコトを、コチラはしらない』と、そういう前提に立って、後藤をココに寄こした。こういう想定が、まあ成りたつ。コレは、オレもソウだとおもう。
でも、じっさいのところ、すでに君たちは、後藤のコトを知っていた。つまり、斎藤と後藤がしょぞくする勢力について、あるていどは、情報をあつめていた。コレは合ってるよね?」
「はい、そのとおりです」
「だったら、ヤツラがしょぞくする勢力について、もうすでに、ナニカしらの情報・じじつを、君たちだったら、すこしくらいは、つかんでいるんじゃないかい?」
こういわれ、藤柴はギクリとしてしまった。
(ヤッパリこのヒトは、だんぺん的なコトから連想して、べつのコトをつかんでしまう)
「おっしゃるとおりです。とはいっても、いかんせん、だんぺん的であり、不かくていで、不たしかな箇所・ぶぶんもおおいので、徳吉さんには、あえていっていません」
「ソレはしかたないよ。そもそもオレは、まだココにきたばかりだし。いきなり、キミたちがつかんだ情報・じじつを、こまかいところにいたるまで、すべて知るコトはデキない。
まあ、こんかいみたいに、ナニカのジケン・デキゴトがキッカケになって、そのつど、すこしずつ知っていくっていうのが、げんじつ的なカタチだとおもう」
「ナルホド」
「ソレで、キミたちがつかんでいる、ヤツラがしょぞくする勢力の情報・じじつについて、知っているコトを、すべておしえてもらいたいんだけど」
「すべて、ですか」
「そう、すべて。こまかいところにいたるまで、すべて知りたい。神は細部に宿る。というコトバがあるが、一見すると、些細、些末でちいさくて、どうでも良いとおもえるコトでも、じつは、意外とたいせつで、重要だった。っていうケースは、往々にしてある。だから、すべてを知っておきたい」
「わかりました。では、高井も呼んできましょうか?」
「ソウしてほしい。キミたちのコトだから、おたがいに、情報の共有については、シッカリしているダロウけど。
でもソレでも、ニンゲンである以上、意外と見落としというか、穴があるかもしれない。だから、キミたちふたりから、ちょくせつ的に、ハナシを聞いておきたい」
「ソウですね。おたがいに、情報の共有には気をつけていますが、ソレでもやはり、100%カンペキかといわれれば、自信がナイです」
「コレはべつに、君たちのコトを、責めているワケじゃないよ。ニンゲンである以上、ゼッタイに、そういうコトは起こりうる。
ソレに、もしかしたら、かたほうは、『このていどのコトは、たいした情報・じじつじゃない』とかんがえて、はんだんして、イチイチ言っていないコトだって、ありえるダロウし」
「たしかに、ソレはありえそうです。ワタシも高井も、四六時中、つねにいっしょにいるワケじゃありませんし。
だから、事後のほうこくがおおいんですが、もしかしたら、無いしきのうちに、あいてにたいして、つたえていない情報・じじつがあるかもしれません」
「ダロウね、ソレがフツウだし、アタリマエだとオレはおもう」
「では、高井を呼んできますね」




