シャバ
「このまえの言い争いのゲンバにいた、かたほうのニンゲンの部下が、ココにやってきた。と、こういうコトかい?」
「ええ、そういうコトになります。コレは、ワタシと高井の想像になりますが、ジム所にやってきた動機・りゆう・もくてきは、言い争いのないようが、コチラにたいして、バレてほしくないコトだった。
だから、ソレが、コチラにたいしてバレたのか、コチラが知ったのかどうか。このコトを、探りにきたのかと。
ソレと、もうひとつは、もしかしたら、徳吉さんのコトを、探りにきたのかもしれない。と、こうもかんがえています」
「オレのコトを、ナンでまた?」
「ソコまではわかりません。あくまでも、たんなる想像にすぎませんので」
「ナルホド、想像とはいっても、君たちのいうとおり、今までは、コチラにたいして接触をしてこなかった。そういう勢力のニンゲンが、わざわざ、コチラにたいして接触をしてきた。
となると、『今までと、今げんざいの時点では、どういう違い・差異があるのか』っていうコトが、たいせつ・重要になるというワケか」
「ワタシも高井も、ソウかんがえています」
「ソレはたしかに、リクツに合っている。あいてが、あるとき、とつぜん行動を変えたんであれば、『ナニカしら、ソレまでと、そのあとで、前提条件が変わった』とかんがえるのが、理に適うダロウし。
となると、ヤッパリ、言い争いのないようが、コチラにたいしてバレてほしくない。というコトと、今まではそんざいしていなかったニンゲン。つまり、オレがいたコトが気になった。とかんがえるのは、たしかにありえるか」
こういうと、徳吉は、しばらくのあいだ目をつむり、ジッとかんがえていた。
(オレは、ヤツラにたいして、ナニカ危害をくわえたり、ひがい・そんがいをあたえたワケじゃない。あのゲンバで、ふたりのうしろに立って、ただ単に、ようすを見ていただけだった。
ソレなのに、そのオレのコトが、どういうイミなのか、良いかワルイかはサッパリわからんが、気になった。という可能性があるワケか)
「こうなると、あの言い争いのないようが、気になってくるね。ソレと同時に、『言い争っていた、もうかたほうのあいてが、どういうヤツなのか』っていうコトも、気になってくる。
こんかい訪問してきた後藤と、その上長の斎藤、そして、ふたりがしょぞくする勢力についての資料はあるかい?
ソレと、言い争っていた、もうかたほうの勢力にかんする資料も、もしもあるんであれば、いちおう読んでおきたい」
「了解しました。くわしくはありませんが、すこしくらいならあります。あとで届けますよ」
「ヨロシクたのむよ」
こういうと、藤柴は、その場を立ち去った。
(さて、オレがココにたいして到着した、その直後に、ちいさなコトとはいえ、今までとは違うコトが、つまり、へんかが発生した。
アタリマエのコトだけど、今までとの違い、へんかが発生した。っていうコト自体を、なかったコトにはデキない。
だったら、そのちいさな違い・へんかから、ナニカしら、プラスのコトを手にいれるベキか。おそらくソレが、ベストかどうかはわからんが、すくなくとも、ベターにはなるダロウ。
あるいは、もしも可能であるならば、コレをキッカケにして、ナニカしら、プラスのコトをおこないたい)
徳吉は、このようなコトをかんがえていた。そして同時に、今まで入っていた、強制ろうどう施設でのコトを、おもいだしていた。
(あの施設のなかでは、まいにち、強制されたルーティン業務をこなすだけだった。閉鎖されて、密閉された空間内では、へんかはあまり発生しなかった。ヤッパリ、へんかはソトからやってくるんダロウ。
今のオレは、シャバにいる。シャバは、強制ろうどう施設とは違って、密閉されていないし、閉鎖されていない。つねに、ソトのダレかや、ナニカとつながり、かかわっている。
だからソトから、今までとちがうコトが、へんかが発生したり、やってくるっていうワケか。そういうコトなんダロウ。
このまえ、道の先であった言い争い。コレもまた、へんかの一種だといえるか。そもそもの前提として、強制ろうどう施設のなかでは、言い争うっていうコト自体が、ご法度だった。
ダレかとあらそい、モメごと・トラブルをおこすなんていうのは、ゼッタイに避けるべきコトだった。ウカツにそんなコトをすれば、看守にどんな目に遭わされるか、わかったもんじゃない。
ダレかとダレかが言い争っている。というジケンに遭遇した。このコト自体が、もうすでに、へんかが発生する状況だとか、発生しやすい状況にいる。っていうコトを、示しているのかもしん)
「へんかが発生しやすい状況、か」
こうつぶやくと、徳吉は、ハッとした。
(ソウか、今までとは、置かれた状況だとか、前提条件がまったくちがうんだ。今までは、へんかをおこすコトはダメだった。
というか、へんかをおこそうとすると、そくざにつぶされて、とんでもない目に遭わされるっていう状況に、オレはいたのか。
ソレにたいして、今のオレは、正はんたい、まぎゃくなのかもしれん。つねにへんかが発生したり、ソトからやってくる。そういう状況にいる。シャバとは、そういうセカイなんだ。
今までは、へんかをおこすコト自体がご法度で、カンゼンなる禁止事項だった。ヘタにちがうコトをおこなうと、たたきつぶされる状況にいた。だから、へんかをキョヒし、ひていし、拒絶する対象だと、オレはかんがえていた。
でも今のオレは、正はんたい、まぎゃくなんだ。へんかが発生するのがアタリマエのカンキョウにいる。
つまり、へんかをキョヒし、ひていし、拒絶するんじゃなくて、ぎゃくに利用したり、へんかを促したり、ススメるベキ状況にいるっていうワケか)
「イカンイカン、強制ろうどう施設でのせいかつで、囚人根性が、カンゼンに、骨身に染みついてやがった」
こうつぶやくと、徳吉は、キモチを切り替えた。
(今げんざいのオレは、つねにへんか発生している。つまり、状態化しているセカイ・カンキョウにたいして、身を置いている。
そういう前提条件に、キチンと立って、ものごとを見たり、かんがえるベキなんダロウ。ましてやココは、あの第4地区だ。
体制の監視の目っていうモノが、ほとんど行き届かないところだ。だから、治安の悪さもふくめて、つねに不あんていで、こんらんした状態にいる。
つまり、へんかが起こるのがオカシイ。じゃなくて、へんかしないのがオカシイ。っていうカタチで、かんがえなけれならないワケか。
となると、この後藤とかいうニンゲンが、ココにやってきたコトにも、ナニカしらのイミがあるかもしれん。へんかをしらせる予兆だとか、前兆現象や前触れと捉えるべきか)




