当事者
(ちいさなジム所だけれど、予想した以上に、意外とこんざつしている。ソレだけ、そうだん客がおおいっていうワケか)
ジム所のなかにはいった後藤は、待合室のイスにすわりながら、そんなコトをおもっていた。そうだん者のなかには、納税にかんするコトだけではなくて、身近なシゴト、せいかつのコト、つまり、シゴト・せいかつをする上でのこまりごと、なやみごとを、そうだんしているニンゲンもおおかった。
(ヨロズ屋というか、ヨロズそうだん所みたいなもんか、ココは)
そうこうしているうちに、後藤の番がやってきた。
「後藤さん、どうぞ」
呼ばれた後藤は、指定された席に着いた。
(さて、もくてきのヤツは、でてくるダロウか)
後藤のあいてをしたのは、ジム所の職員であった。
(コイツは、高井でも、藤柴でもない。でも、まえに見かけたコトがある。だから、例の見知らぬニンゲンじゃなさそうだ)
後藤は、第4地区でのシゴト、差し障りのない、せいかつでのこまりごと、そうだんごとを、テキトウなカタチでつたえた。たんなるそうだん者を装いながら、ジム所のなかを、イロイロと見わたしていた。
(どうも、例のヤツは、いなさそうだ)
こうかんがえて、すこしハナシをしたていどで、後藤は帰るコトにした。
「また、コチラにそうだんに来てもかまいませんか?」
「ええ、ダイジョウブですよ」
(何度かくれば、運が良ければ、そのうち会えるかもしれん)
こうおもい、ジム所をでていった。
後藤がジム所をでたあとに、たいおうをした職員は、藤柴のところに向かっていった。
「藤柴さん、以前にお聞きしたコトのある、後藤というニンゲンがやってきました」
「ソウか。ちなみに、ナニをいっていた?」
「そうだんないようは、当たり障りのないコトです。シゴトやせいかつで、こまっているコトがある。というコトです。くわしくは、ほうこく書にまとめ、あとで提出します」
「わかった」
こういうと、その職員は、ジム所の受付に帰っていった。
(斎藤の部下が、ココにきたか)
斎藤は、「後藤であれば、藤柴・高井のふたりと面識がない」とかんがえた。だからこそ、後藤を、ジム所にたいして向かわせたのである。
だがしかし、すでに藤柴・高井のふたりは、この第4地区における勢力において、主要なメンバーのカオ・ナマエをしらべており、はあくしていたのであった。
そして、そのはあくしているメンバーが、ジム所にたいして客として訪問したのであれば、そのコトを、すぐにほうこくするように、ジム員にたいして周知をしていたのだ。
(ナゼわざわざ、斎藤の部下がやってきたのか)
と、そういうギモンが湧くのであるが、ナンとなく、見当はついていた。
(このまえの言い争いの直後に、斎藤の部下がやってきた。というコトであれば、このまえの言い争いについて、かんけいしているコトになるんダロウ)
「いちおう、高井にもつたえておくか」
こうつぶやくと、藤柴は、高井にもつたえたのであった。
「そうか、斎藤の部下が、ココにきたのか」
「ああ」
「となると、このまえの言い争いが、かんけいしているっていうコトか」
「ダロウね」
「コレは、カンゼンに憶測になるワケだけど、言い争いのないようが、オレたちにたいして、つたわるとマズイないようだった。
だから、『オレたちが、そのコトについて、ナニカをカンづいたのかどうか、探りにきた』っていう可能性もあるが、オマエはどうおもう?」
高井は、藤柴にたいして聞いた。
「オレも、ソレはありえるとおもう。オレたちにたいして、バレるとマズイないようだった。だから、ソレを探りにきた。と、こうかんがえると、一番シックリくる気がする」
「だな。あるいは、ほかに、べつの動機・りゆう・もくてきがあるのか」
「いずれにしろ、今までは、オレたちとはキョリを取って、あまり接触をしてこなかった勢力のヤツラだ。
そんなヤツラが、急に、このジム所にたいして訪問してきた。となると、今までとは、一体ナニが違うのか」
「ソレは、徳吉さんのそんざいだ」
高井にこういわれ、藤柴はハッとした。
「ソウか、そのとおりだ。となると、後藤は、『徳吉さんのコトを、しらべきにきた』という可能性もあるか」
「あるいは、『言い争いのないようが、バレていないか』っていうコトと、徳吉さんのコトも、調べにきた。と、ふたつの動機・りゆう・もくてきで、やってきたのかもしれん」
「となると、いちおう、徳吉さんにもつたえておくか」
「そのほうが良いダロウね。当事者である可能性があるんだったら、知っておくべきだろう」




