小心者
(ココが、コレから拠点となるところか)
徳吉の見るところ、ソコは、ちいさなタテモノであり、お世辞にも、リッパとはいえなかった。
(でもまあ、こんなもんだろう。ちいさなコトからはじめるとき、タテモノ自体にたいして、不要にカネをかけるベキじゃない。そんなりゆうも、ひつよう性もない。そんなコトに、ムダなカネをつかうベキじゃない。
ヘタにタテモノにたいしてカネをかけると、ムダなカネをつかうハメになる。その上、イヤでも目立つし、不要なやっかみ、嫉妬を買うかもしれん。
ソレに、いくらココが第4地区とはいっても、不ひつようにハデなコトをすれば、どこかで特殊ケイサツの目につくかもしれん。死んだはずのオレとしては、そういうリスクやキケンっていうものは、可能なかぎり避けたい。
まあ、コレからやるコト自体が、第4地区に住んでるニンゲンにとって、はじめてのコトになるワケだから。大々的に、大キボにやれるワケじゃない。
小キボに、すこしずつおこなって、成果・結果を積みあげていくベキだ。だから、目立たずに、地味に、ちいさなタテモノが拠点っていうのは、コレはコレで、理に適っているか)
こういうコトを、タテモノの外見を見ながら、バクゼンとかんがえていたのだが、ココでふと、気になるコトがでてきた。
ソレは、拠点であるタテモノ、つまり、ジム所にたいして、何人か、ニンゲンの出入りがあるのだが、そのニンゲンたちを見ていると、このまずしい第4地区であるのに、「ソレなりに、リッパな服を着ている」という点であった。
「ところで、あのジム所にたいして出入りしているニンゲンたちは、オレたちが、コレからおこなうコトになる、個人の持っている私有ざいさん・資産のデータ化。っていうコトにたいして、賛同しているニンゲンなのかい?」
徳吉が、藤柴にたいして聞いた。
「イエ、賛同っていうワケではないです。ですが、すこし興味や関心があるようで、ときどき、ああやって、コチラにたいしてハナシを聞きにきています」
「ときどき、というと、ひんぱんにではない。というイミかな?」
「ええ、こないときは、何週間どころか、数か月もきませんよ」
「ちなみに、やってくるのは、どういう時期というか、タイミングがおおいのか、聞いていいかい?」
「ザックリといってしまえば、第3地区にたいして、税を納める時期が近づくと、ああやって、コチラにたいして訪問してきます」
(納税しなければならない時期になると、どうしても、じぶんの持っている資産の価値や量が気になる。というワケか)
「訪問してきたところで、まだデータ化はしていないので、コチラとしても、『ぐたいてきに、ナニカのアドバイスがデキる』というワケではありませんがね」
「ソレなのに、かれらは訪問してくると?」
「おそらく、すこしでも、第3地区のがわの事情というか、内情を知りたいんでしょうね。些細なコトでもいいから、情報がほしいようです」
(すこしでも、徴税がわの情報を手にいれて、トクをしたいっていうワケか)
「ちなみに、ナニカつたえれる情報なっていうのは、コチラがわにあるんだろうか?」
「しょうじきなところ、ほとんどありませんよ」
「ソレなのに、かれらはああやって、ムダ足になるかもしれないのに、ココにたいして訪問してくる。というワケか」
ひとりごとのように、徳吉はつぶやいた。
(やはり、ニンゲンは、すこしでもトクをしたくて、損をへらしたい。という点では、どこのダレでも、おなじっていうワケか。アタリマエのコトだけど)
「参考までに聞くけれども、ああやって、訪問してくるニンゲンについて、コチラとしては、そうだんの案件・ないようや、あいての素性というか、情報はキロクしているかい?
たとえば、ナマエ、住所、シゴト、年齢、生年月日、家庭カンキョウ、そして、どういうコトを聞きにきたのか。そうだんの案件・ないよう。などだけれども」
「ええ、ソレはキロクをしております。いずれ、ナニカの役にたつかもしれませんので」
「さすが、ぬかりがナイね」
(こういう些細でちいさな情報が、なにかコトをおこすときには、とくに、政略的なコトをおこなうときには、意外と役にたつダロウからなあ)
「些細なコトが、意外なところで役に立ったり、たいせつで重要になる。コレはまあ、用心ぶかくて慎重なニンゲンであれば、アタマにうかびますからね」
「まったくの同感だよ。神は細部に宿る。っていうコトバもあるくらいだし。こういう些細でちいさな情報・じじつが、メモやキロクが、意外なところで役にたつ。か、ウマイ表現というか、良いコトをいうね」
「ところで、すこし、やすみますか?」
「ココにたいして到着して、ユックリしたいのは山々だけれども、善は急げ。というコトバもあるコトだし、そのキロクを読みたいんだけれども良いかい?
オレとしては、可能なかぎりはやく、実情や事情をっていうモノを、チャントりかいして、はあくをしておきたい」
「さっそくですか。ガンバリますね」
「イヤ、コレはガンバリじゃない」
「といいますと?」
「用心だよ」
「用心ですか」
「そう、ニンゲン、無知っていうのが一番コワい、というかヤバい。ナニも知らなければ、ナニもかんがえることがデキないし、はんだん、けつだん、意思けってい、行動もデキない。
ソウなると、ナニカ予想外のコトがおきたときに、とくに、キケン・もんだい・トラブル・モメごとが発生したときに、テキセツに対処・たいおうし、カイケツするコトがデキない。
だからこそ、じじつ・情報っていうモノは、可能なかぎり、はやく知っておきたい。ミス・しっぱいを阻止し、ふせぎ、回避をするために」
「ナルホド、だから用心。というワケですね」
「そういうコトだよ。オレは臆病で、小心者なんだよ。だから、無知や未知っていう箇所・ぶぶんを、可能なかぎりはやく、なくしておきたい」
「わかりました。ソレについては、オレも高井も賛成です」
こういうと藤柴は、高井をジム所のなかにあんないし、そして、書き留めてあるキロクを見せた。
「アリガトウ」
こういうと、徳吉は、一心に、その書類を読みだした。




