タイミング
「さっきのゲンバで、言いあらそっていたニンゲンたちは、君たちのコトを見たら、急に言いあらそいを止めた。
そして、オレのスガタを見たら、さらに警戒心をたかめたのか、ほとんどだまってしまた。コレは、ヤツラにとって、オレたちは、一種の権威というか、めいかくに、ハッキリとモメたり、あらそったり、てきたいしたりしたくない。という対象・あいてだと、解釈するコトもデキるとおもう」
「まあ、ソウでしょうね。その解釈は、今までこの第4地区のなかで、かつどうをしているワタシや高井も、同感です」
「藤柴のいうとおりです。オレもソウおもいます」
「ソレはよかった。オレの解釈が、君たちの解釈と合っているっていうのは、げんじつ的に、ムリがない証だとおもう。
ソレで、こういう解釈に立って、かんがえてみると、わずかかもしれないけど、われわれのほうが、第4地区に住んでいるニンゲンや、そんざいしている勢力から見たら、すこしだけ、たちば・立ち位置が、上っていうカタチになる」
「たしかにソウでしょうね。だからこそ、ヤツラは、われわれにたいして、ハッキリと、はんたい・ていこうをしたり、反抗的なたいどを取りにくい。まあ表面上だけでしょうが」
と、藤柴が答えた。
「というコトは、なにかしらのカタチで、政治的なやりとり、かけひき、あるいは外交的なとりひき、交渉っていうものが、やりやすいともいえる」
「といいますと?」
「もっとろこつにいえば、政略的というか、まあ謀略・策略的なコトも、おこないやすい。ともいえる」
「政略で、謀略、策略ですか」
藤柴はすこし、りかいしづらい。というカオをした。高井もまた、おなじようなカオをした。
「こういうコトは、君たちがあいてだからこそ、こうしてハッキリと言うコトがデキる。ともいえるけれどね。
フツウのニンゲンにたいして、こんなコトをいったところで、まずかくじつに、まちがいなく誤解するダロウし。
くわしくいうと、謀略・策略っていうのは、あるイミにおいて、あいてをダマシたり、ワナにかけてハメ。というコトになる。そういう行為になる」
「でしょうね。だからこそ、謀略・策略。というワケですし」
「ソレで、こういう政略的というか、謀略・策略っていうのは、まず第一に、あいてがコチラのコトを、信頼していなくてはならない。
そもそもの前提として、じぶんのコトを、疑っているニンゲンがあいてだと、謀略・策略なんていうモノは、通用しないケースがおおい。
なんせ、コッチのコトを疑っているワケだし。疑っているニンゲンのいうコトを、イチイチ信用するワケがない。
さいしょから、コッチのいうコトを、疑ってかかわるワケだから、ダマされる確率・可能性なんていうのは、カナリひくくなる。
だから、政略的なコトを、あいてにたいして実施し、おこなうのであれば、まず第一に、あいてから、信頼されなくてはならない。
そのためには、フダンから、ちいさなコトで、あいてをダマシたり、ワナにかけてハメるようなコトは、するベキじゃない。
極端ないいかたになるけれども、100回のうち、99回は、あいてにたいして誠実で、しょうじきで、実直であるベキだろうね。
ソレで、たいせつで重要な1回だけは、あいてをダマシたり、ワナにかけてハメるようなコトをする。
そうなると、99回の分があるために、あいてはコチラのコトを、信用しているから、コチラのいうコトを、イチイチ疑うコトがすくなくなる。
だから、コチラの謀略・策略にたいして、うたがうことなく信じてくれる。その結果として、コチラの意図したカタチになる。つまり、謀略・策略が成功する」
「ナルホド」
藤柴と高井は、ふたりとも、感心したようにいった。
「さらにいえば、『あいてをダマし、ワナにかけてハメる』という、その1回についても、可能なかぎり、あいてが、『じぶんはダマされた。ワナにハメられた』と、気がつかないカタチがいいダロウね。
だから、その1回についても、可能なかぎり、あいてが、『じぶんが謀略・策略にかかった』というコト自体、気がつかないカタチにするのがベストだとおもう。
そのためには、すぐにウソだとバレにくい、『巧妙なウソ』というカタチにしたい。いいかたを変えれば、『ホントウのようなウソ』とでもいえばいいダロウか」
「ホントウのようなウソ、ですか」
藤柴が、感心したようにいった。
「ホントウのようなウソ。つまり、100%すべて、丸々ウソではなくて、可能なかぎり、たくさんのホントウのコトを、じじつ、情報、数字などをいれる。
そして、一部分だけ、コチラにとって、つごうの良いウソをまぜる。というコトになる。コレだったら、ホントウのコトが、大部分を占めている以上、すぐにウソとはバレにくい。
すぐにウソとはバレないのならば、もしかしたら、あいては、『じぶんがダマされた、ワナにかけてハメされた。謀略、策略にかかった』というコト自体、さいごまで、気がつかないかもしれない」
「なんだか徳吉さん、詐欺師みたいなコトをいってますよ」
苦笑しながら、高井がいった。
「詐欺師か。まあ、詐欺師がつかうような手口だといっても、過言ではないダロウね。でも、99回はホントウのコトをいったり、おこなっているし、肝心の1回も、そのなかの大部分は、ホントウのコトなんだから、詐欺師よりは、ずいぶんとマシな手口だとおもうよ」
「たしかに。ソレで、その詐欺師のような、もとい、詐欺師よりなマシな手口をつかって、第4地区に住んでいるニンゲンや、そんざいしている勢力にたいして、政略的なコトをおこなう。と、こういうコトでしょうか?」
「まあ、そういうコトになる」
「ちなみに、その詐欺師よりはマシな手口。というものが、先ほどおっしゃった、『わずかかもしれないが、われわれのほうが、第4地区に住んでいるニンゲンや、そんざいしている勢力からみたら、すこしだけ、たちば・立ち位置が上になる』っていうコトと、ナニカ結びつくんでしょうか?」
ココで、藤柴がギモン点をクチにした。
「ニンゲンが、ダレかにたいして謀略・策略をおこなうとき、じぶんよりも強かったり、おおきな勢力・あいてには、ほとんど成功しないからだよ」
この徳吉の発言を聞いて、藤柴も高井も、いっしゅん怪訝なカオつきをした。だがしかし、数十秒後、ふたりとも、なっとくをしていた。
「ナルホド。オレも高井も、ソレは賛同します。っていうか、ソレが正解というか、しんじつだとおもいます。
たしかに、徳吉さんのおっしゃるとおりですね。じぶんよりも、つよくて、おおきな勢力・あいてに、たとえ謀略・策略をしかけたとしても、あいてのほうが、チカラがつよい。
だから、あいてが、『コレは、謀略・策略である』と気がついて、わかったとたんに、そのしゅんかんに、あいてはコチラを、チカラづくでたたきつぶすワケですから」
「まあそういうワケだよ。キホン的に、謀略・策略っていうのは、わずかかもしれないけど、『あいてをダマしたり、ワナにかけてハメる』っていう一面がある。
だから、さいしょのうちは、あいては気がつかないかもしない。でも、どこかの時点・だんかいで、ソレがバレてしまうリスク・キケン性・可能性・確率っていうものは、カナリたかいとおもう。
そして、『じぶんにたいしてウソをついて、ダマした』とわかったとき、その『ウソをついて、コチラをダマしたあいて』は、じぶんよりも、弱くてちいさい。
だから、謀略・策略にたいして、イチイチ謀略・策略で返したり、反応するようなコトはない。そんなひつよう性は、まずない。
じぶんよりも弱くて、ちいさいワケなんだから、『イチイチ小細工をつかったり、メンドウ臭いコトをせず、チカラづくでたたきつぶす』っていう選択肢を取るだろうね。
じぶんのほうが、つよいし、おおきいワケだから。チカラづくで、じぶんをダマして、ワナにかけてハメたヤツを、たたきつぶすコトがデキる。
だからこそ、謀略・策略っていうモノは、じぶんよりも、つよくて、おおきいニンゲン・あいてにたいして、つかってはいけない。
そういうニンゲン・あいてにたいしては、まあマジメに、しょうじきに、実直に接するのが一番ダロウね」
「徳吉さんの意見を基にするのなら、ぎゃくにいえば、じぶんよりも、格下のニンゲンやあいて、ろこつにいえば、じぶんよりも、ちいさくて、弱いニンゲン・あいてだったら、ときには謀略・策略っていうものが、友好的な手段・方法になりうる。と、こういうコトでしょうか?」
「藤柴くんのいうとおりだよ。ソレでも、さっきもいったとおり、まいかい謀略・策略をつかうっていうのは、カナリ良くない。マズイ行為ダロウね。あいてからの信頼っていうモノが、すぐにゼロになりかねない。
だからまあ、100回のうち1回くらいは、かつ可能なかぎり、ホントウのコトをふくめながら、謀略・策略っていうモノをつかうのは、オレはアリだとおもっているよ」
「ナルホド」
(このヒトはもしかしたら、とんでもない策士なのかもしれない。ソレも、一見して策士だとわかるような、見えすいた、わかりやすい策士じゃあなくて、一見すると、バカしょうじきで、マジメで、愚直、実直、誠実そうに見えるくせに、内心では、カナリ腹黒いというか、そういうたぐいの策士なのかもしれない)
「まあ、今までいったコトは、あくまでも、今後もしかしたら、そういうコトになるかもしれない。だとか、こういうコトを、おこなうかもしれない。っていうレベルのハナシだよ。今すぐに、どうこうっていうハナシじゃない」
「ソウでしょうね。しょうじきなところ、オレとしては、徳吉さんのおっしゃるような、政略というか、謀略・策略っていうモノを、すぐにつかうベキだ。っていうニンゲン・あいては、アタマにうかびません。オマエもソウじゃないか、高井」
「オレもソウおもう」
高井も同意した。
「ダロウね。今日、やっと第4地区にきたばかりだし、いきなり初っ端から、そういう政略的なコトをおこなうべきだ。っていうニンゲン・あいてが、すぐに登場するとはおもえない」
「もしも、そういうニンゲンが、すぐに登場したとしたら、ソレはもう、徳吉さんのおっしゃるコトを、すぐにおこなえ。っていう一種の啓示ですよ。神がかってるとしか、いいようがなくなります」
わらいながら、藤柴がいった。
「ソウなるね。いくらなんでも、そうつごうよく、第4地区にきてすぐに、そういうケースにたいして、タイミング良くめぐりあう。っていうのは、いくらなんでもハナシがデキすぎてる。
もしも、そういうケースというか、あいてが登場したら、ソレはもう、『すぐにでも、ソレをおこなえ』っていうコトになるダロウね」
このようなコトをハナシながら、クルマは、第4地区における拠点ともいえる、ジム所にたいして着いた。




