かかわるベキか?
エピソード②です
検問所をぬけたクルマは、第4地区にたいして入って行った。クルマのなかから、徳吉は、第3地区と第4地区を隔てている、ぶ厚くて、たかいカベを見ていた。
(物理的に、ニンゲンの住んでる区域を区切るっていうのは、安直といえば安直なんだけど、でもその分だけ、わかりやすいともいえるか。
コレでオレは、カンゼンに、体制の管轄からハズレた。というカタチになる。いきながら死人になった上に、体制の目が、ほとんど届かない地域にいくワケだから、いきているのか、死んでいるのか。そんざいしているのか、いないのか。イマイチ、よくわからない状態になった。っていうワケか)
じぶんの置かれた状況・たちば・状態というものが、どうにも不あんていであり、その分だけ、「じぶんのミライ・うんめい・じんせいが、これから先、一体どういうカタチに向かうのか、転んでいくのか」というコトに、あらためて、一抹の不安もかんじていた。
(イヤイヤ、ココでクヨクヨしたところで、しかたないじゃないか。うしろを振りかえっても、どうしようもない。まえを見ていかねば)
ついつい、ネガティブになりかねない、じぶんのキモチ・感情というものを、ナントカして前向きにしよう。と、内心において、アレコレとかんがえていた。
第4地区にあるというアジトに近づいた、そのときである。クルマのまえで、ナニやら、人だかりがデキていた。
(ナニゴトだ?)
徳吉が、こうおもったとき、高井が、クチをひらいた。
「どうやらナニカ、トラブルのようです」
「トラブル?」
「ええ、この第4地区では、予想外のコトがおおいんですが、そのほとんどは、まあトラブルなんですよ。見たところ、先のほうで、ナニやら、モメごとがおきてるようです」
「トラブルねえ」
(コレから、あたらしい道にすすむっていう身としては、幸先がワルイというコトか?)
こんなコトを、ついおもってしまった。
(イカンイカン。ワルイできごとやジケンだと、まだキマったワケじゃない。そもそも、オレたちにとって、かんけいないコトかもしれん)
と、徳吉は、このようにかんがえたのであるが、高井と藤柴の表情を見てみると、どうやら、「まったくのしらないニンゲン」というワケではなさそうだった。
(知ってるニンゲンなのか?)
「ふたりとも、あのモメてるニンゲンたちを、知ってるとか?」
「知ってるというか、すこし、かかわりあいがあるというか。くわしくはないんですが、『まったくのアカのたにん』というワケではナイです」
と、藤柴が答えた。
「アカのたにんじゃない。か」
(となると、これから先、オレにとっても、かかわりあいになるニンゲン。っていうコトなんダロウか?
だとしたら、ヤッパリ、この件が、プラスの良いコトなのか、ソレとも、マイナスのワルイできごとなのか。どうしてもコレが、気になってくる。
プラスの良いコトなら、吉兆になるダロウし。マイナスのワルイできごとなら、不吉な凶兆。といえるかもしれん)
このようなコトをかんがえていたら、高井と藤柴が、おたがいのカオを見ながら、かいわをはじめた。
「高井、オマエはどうおもう。あのモメごとにたいして、オレたちは、かかわるベキなんダロウか?」
「ナンともいえん。ココから見ただけじゃあ、サッパリわからん。ヘタにクビを突っこむと、メンドウごとに巻きこまれるかもしれん。
とはいっても、こうしてクルマが止まってしまっている以上、放置するワケにもいかん。見たところ、カイケツする素振りが見えん。ソレどころか、ニンゲンがドンドンあつまって、大ごとになってるようだ」
「たしかに、ヘタにかかわって、クビを突っ込むのも避けたいが、でも、かといって、このままただ待っていても、道がふさがったままで、先にすすめないか」
こういうと、藤柴は、すこし、思案顔をしていた。
「ちなみに、ふたりに聞きたいんだけど、道の先でモメてるニンゲンっていうのは、かたほうだけ知っているのか。それとも、両方とも知っているのか。どっちかおしえてくれないかい?」
「両方ともなんです」
藤柴が答えた。
「両方ともか。ソレで、その知っている両方が、道の先でモメている。か」
(藤柴も高井も、かかわるベキなのかどうか、はんだんがつかないようだ。となると、コチラにとって、『カンゼンにプラスなニンゲン』っていうワケではない。といったところか。
プラスになるニンゲンだったり、あるいは、害のないニンゲンだったら、けつだん・はんだんのはやい、ふたりのコトだから、とっくに行動してるダロウし)
「道の先でモメごとにたいして、かかわるベキかどうか、ふたりとも、はんだんがつかないようだけど、このまま、ココでジッと待ってても、ラチがあかない。どうしたもんかねえ」
と、徳吉が、ひとりごとのようにつぶやくと、高井が、クルマからでる素振りをした。
「いくのか?」
藤柴が聞いた。
「ああ、そうする。徳吉さんのいうとおり、このままココで、ただジッと待っていてもラチがあかん。だったら、行動するベキだとおもう」
「吉とでるか、凶とでるか。賭けだな」
「ダロウね。でもまあ、なるべく吉に持っていきたい」
こういうと、高井はクルマを降りて、道の先に走っていった。
「ちなみに、ふたりが知っている、道の先にいるニンゲンは、一体どういうヤツなんだい?」
徳吉が、藤柴にはなしかけた。
「興味が湧きましたか?」
「興味というか、まあ吉兆なのか、凶兆なのか。とかんがえたときに、もしかしたら、吉兆になるかも。とおもえてね」
「と、いいますと?」
藤柴は、すこし怪訝そうなカオつきで、徳吉にたいして聞きかえした。
「君たちが、ふたりとも、すぐにキケン・もんだいがある。と、はんだんしなかった。コレが答えな気がするよ」
「スイマセン、おっしゃているイミが」
藤柴は、徳吉のコトバを聞いて、すこし、困惑そうなカオをした。
「べつに、ハッキリとした証拠だとか、こんきょ・ウラづけ、りゆうがあるっていうワケじゃないよ。
ただ、カンがするどくて、キケンを予知したり、察知するセンターがするどいキミたちが、ふたりとも、すぐにキケンだとかんがえず、はんだんせずに、まよっている。コレが答えな気がする。
ホントウに、先にいるニンゲンが、カンゼンに、もんだい・キケンがあるんなら、すぐにソレに気がついて、キケンとはんだんするハズだよ。
こうして、『今ココで、まよっている』というコト自体が、『カンゼンに、キケンではない』というコトの証明になる。といったところか」
「ナンだかチョット、われわれのコトを、過大評価しすぎてる気もしますが」
「イヤ、そんなコトはない。謙遜しなくても良いよ。もしもホントウに、道の先にいるニンゲンに、もんだい・キケンがあり、かかわるとダメなヤツだったら、キミたちは、すぐにキケンとはんだんし、べつの道に迂回するルートをえらんだとおもう」
「まあ、たしかに。ホントウにキケンなヤツだったら、有無をいわずに、この場から、さっさと避けるでしょうね」
こういうと、藤柴は、すこしのあいだ、かんがえこんだ。




