言い争い
(徳吉さんのいうとおりかもしれん。オレはともかく、異常にカンがするどい高井が、すぐにキケンとはんだんせず、しばらくのあいだ、まよっていた。コレはたしかに、たいせつで重要なコトかもしれんか)
「わかりました。徳吉さんがそうおっしゃるなら、ソウなんでしょうね」
「イヤイヤ、君こそオレを、ナンだか、過大評価してないかい?べつにオレも、ソコまでハッキリと、つよい自信があるっていうワケじゃないよ」
「でも、ニンゲンは、じぶん自身のコトは見えないし、わかりません。第3者のほうが、岡目八目で、客観的です。第3者である徳吉さんが、ソウおっしゃるなら、ワタシとしても、なっとくですよ」
「まあ、ゼッタイの自信があるっていうワケじゃないから、断言するコトはデキないけどね。でもまあ、たにんの目で見るほうが、意外としんじつ・真相だとか、本質・核心・要点を突いてるっていうのは、たしかにありえる。
ソレで、チョットした好奇心なんだけど、道の先にいるニンゲンたちが、一体どういうヤツなのか。デキれば、もうすこしくわしく、おしえてもらいたいんだけど」
「ソウですね。コレもなにか縁かもですし、おつたえしておきますね。道の先で、言い争っているふたりは、この第4地区にそんざいしている勢力に、しょぞくしているニンゲンなんです。
たがいに、ちがう勢力に属していまして、そのふたつの勢力のニンゲンが、ナニやら、言い争っている。というワケなんです」
「そのふたつの勢力っていうのは、てきたいしてるとか?」
「四六時中、つねにあらそっている。というワケじゃありません。ときにはケンカし、あらそうコトもありますが、キホン的には、フダンはあらそいごと、モメごとを避けているはずです。コチラの調査によればですが」
「フダンはあらそわず、モメごとを避けている、ふたつの勢力に属している、ふたりのニンゲンが、この道の先で、言い争っている。っていうワケか」
(フツウだったら、ナニもジケンがない。っていうのが一番なんだけど、かといって、ナニもジケンがなければ、へんかも発生しない。
そして、へんかが発生しなければ、ナニカをおこなったり、変えるコトはデキない。と、こうかんがえるコトもデキるか)
徳吉は、じぶん自身のコトを、アレコレとかんがえていた。
(オレ自身、強制ろうどう施設からでるときに、たすけだされたワケだが。そのキッカケは、処刑っていうジケンがあった。
コレがあったから、というよりも、処刑がおこなわれる。という情報を、桂さん、藤柴くん、高井くんがつかんだ。だから、たすけだされた。
処刑というジケン自体は、マイナスのワルイできごとになる。でも、ソレがキッカケになって、オレは、『あのジゴクからぬけだす』っていう、プラスの幸運を手にすることがデキた。
ソウかんがえてみれば、言い争いっていうのは、一見すると、ワルイできごとにおもえるけど、『コレがキッカケになって、長期的にはプラスにもなりうる』とかんがえるのは、あまりにも、楽観的すぎるだろうか)
徳吉としては、「ナニゴトもなく、平穏無事でいたい」というキモチもあるのだが、かといって、「平穏無事をねがい、まったくナニも、ジケンがない」という状態では、「強制ろうどう施設にいる」という状態が、変わるコトはなかったのである。
「用心ぶかいのは、オレの美点かもしれんが、かといって、あまりにも消極的すぎると、運をつかむコトがデキないのかもしれん」
徳吉は、ひとりごとのように、こうつぶやいた。
「オレも、あのゲンバに行こうとおもう」




