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やるべきこと

「ここまできたら、もしかしたらって感じで聞くんだけど。オレを陥れて、強制ろうどう施設に送りこんだ元上司は、フダンの言動・おこないから、反体制的なニンゲンじゃないかと疑われて、特殊ケイサツにつかまり、強制ろうどう施設に送られたんだよね。

 コイツはたしか、支所における、公有党の党員の幹部だった。そして、おそらく桂さんにたいしても、イロイロと、はんたい・ていこう、ぼうがい・ジャマをしたとおもう。

 だから、もしかして、コイツが捕まったっていうのは、桂さんがつくった、そのネットワークをつかって、じじつ・情報をあつめて、ソレを特殊ケイサツにつたえて、コイツを粛清した。っていうことかな?」

「あ、ソレもバレちゃいましたか」

 藤柴が答えた。

「そうなんですよ。徳吉さんを陥れた元上司っていうのは、ホントウに、どうしようもないヤツだったんです。

 まあ、ニンゲンのクズってヤツです。たくさんのキケン・もんだい・トラブルを引きおこしてました。

 でも、いちおうは公有党の幹部だから、ダレもソレを、オモテ立って指摘したり、ひはんしたり、糾弾することがデキないでいました。

 そして、案の定、支所長である桂さんにたいしても、イロイロと、難クセをつけたり、理不尽なりゆう・事情・動機で、はんたい・ていこう、ジャマ・ぼうがい、サボタージュをしてました。

 そこで、桂さんがつくった、私的なネットワークをつかってしらべてみたら、案の定、イロイロと、たくさんの悪事というか、スキャンダルが隠されてまして、ソレが見つかったっていうワケです。

 ソレで、その証拠・こんきょ・確証を掻きあつめて、ウラを取ってから、コレを特殊ケイサツにわたして、コイツの身柄を引きわたしたんですよ」

「なるほど、そのあとコイツは、強制ろうどう施設にはいってから、オレがむかしつくった書類をつかって、じぶんの待遇を良くしようとしたが、ぎゃくに、その書類によって、自滅したと。

 ということは、君たちと桂さんは、意図しなかったとはいえ、『オレを陥れた元上司を、ハメツさせてくれた』っていうことになる。つまり、オレの仇を討ってくれた。ともいえそうだ」

「どうでしょうね。まあ見方によっては、そういう解釈というか、意味合いも成りたつのかもですが」

「オレとしては、そういうカタチにおもっておくよ。つまり、オレを陥れて、ハメツする寸前まで追いこんだ元上司を、君たちと桂さんが、粛清して、失脚させてくれた。

 そして、コレがキッカケになって、コイツは強制ろうどう施設にはいり、そこで自滅したんだから。

 オレとしては、『イノチを救ってくれただけじゃなく、仇を討ってくれた』っていう恩も、君たちにはある。と、こういう解釈を持つようにしておくよ」

「そうですか、ソレはどうも」

 このとき、デンワが鳴った。高井がデンワにでたところ、あいては、第4地区にある拠点からであった。

「どうやら、向こうも準備が整ったようです。善はいそげといいますし、さっそく、この拠点に向かいませんか」

 高井が、ふたりにたいして提案したのであるが、ふたりとも異存はなかった。こうして3人は、このタテモノをでて、第4地区にある拠点にたいして向かっていった。

 クルマに乗りながら、徳吉は、じぶんが今置かれている状況について、あらためて、かんがえざるをえなかった。

(こうして、今からオレは、第4地区にいくことになるが、おそらく、もう二度と、この第3地区には戻れんだろう。なんせオレは、処刑されたことになってるワケだし。

 つまり、『生きながら死人になったニンゲン』っていうことになる。死んだことになった以上、二度とココに、戻ることはデキんだろう)

 このようにかんがえてみると、ついつい、クルマのソトの景色を、ジックリと見ていたい気分になった。だがしかし、

(イヤイヤ、オレは死んだことになってるワケだから、オレのスガタを、もしもダレかに見られでもしら、マズイことになるだろう。こんなところで、ヘタなリスクやキケンを冒すワケにはいかん)

 このようにかんがえなおし、クルマの座席に座りながら、むしろ、ソトから見たときに、じぶんのスガタが見られないように、背をかがめた。

 クルマは、第3地区と第4地区をわけている、検問所に着いた。徳吉としては、「検問でしらべられたらどうしよう」と、すこし不安になったのだが、この車には、桂が支所長をしている、支所のマークがついていた。そして、3人には、支所の職員であることを記す、名札がわたされていた。

 そのために、検問所をスムーズに、なんの障害・こんなんもなく、スンナリと通ることがデキた。クルマのなかを、きびしくしらべられたり、検査されることもなかった。

(こういうときは、公的な権力機関のナマエがあると、ココロづよい)

 こうしてクルマは、とうとう第4地区にはいった。第3地区と第4地区は、たかくてぶ厚いカベによって、ハッキリと隔てられている。

 コレは、第4地区のニンゲンが、侵入してくるのをふせぐためであったが、ソレだけではなくて、このカベによる区分け自体が、あるイミにおいて、「第1・第2・第3地区に住んでいるニンゲンが、第4地区に住んでいるニンゲンのことを、おなじニンゲンであるとはおもっていない」ということを、表しているともいえた。

(このカベを、第3地区側から見ることは、たぶん、もうないだろう)

 こうおもうと、徳吉としては、なんだか感傷的なキモチになってしまった。だがしかし、ソレと同時に、「これから先、じぶんがどうなっていき、どういうミライ・じんせい・うんめいになるのか」ということもまた、気になってしまう。

(いずれにしろ、今さらもう、後戻りはデキん。こうなった以上は、とにかく、まえにすすむしかない。

 はたしてホントウに、じじつ・情報をあつめたり、分析したり、なにかの工作をするシゴトだとか、個人の持ってる私有ざいさん・資産をデータ化して、税の徴収をあんてい化させて、ソレをそしき的に、システム化することがデキるのかはわからん。

 過去にやった前例がない以上、やってみないと、なんともいえん。おそらく、オレひとりだったら、まずデキんだろう。

 でも、このふたりがいて、いっしょにやるんだったら、なにかしらのことは、デキるかもしれん)

 徳吉としては、じぶんのミライ・うんめい・じんせいが、これから先、一体どういうカタチになっていくのか。このことについて、つよい不安を感じざるをえない。

 だがしかし、ソレと同時に、藤柴と高井によって、じぶんのミライ・うんめい・じんせいは、おおきく変わった。そのことを、「まずなによりも、前向きに捉えていきたい」とも、おもっていた。

(なんにしろ、ホントウだったらオレは、今ごろは死んでた。だから、生まれかわったツモリになって、じぶんがわかり、デキることだったら、やれる範囲で、ソレをすべてやってやろう。

 そうすれば、ソレによって、なにかしらのカタチで、反動・反作用が起こるかもしれん。それに、ソレだけじゃなくて、プラスのイミで、なにかの変化がうまれるかもしれん。

 強制ろうどう施設にいたときは、ひたすら受け身になって、じぶんから、なにかをいったり、おこなったりすることはなかった。まったくなかった。

 でもこうして、せっかくイノチ拾いしたワケだし、のこりのじんせいは、やれることを、精一杯やるようにしよう。悔いがないようにしなければ。

 これから先のじんせいで、オレは一体、なにをすればいいのか。なにをすべきなのかが、ハッキリした。っていうことになる。

 つまり、じぶんのやるべきことが、使命・もくてき・やくわりが、ハッキリしたっていうことか。だったら、その達成・じつげんにむかって、あとはもう、突き進んでいくしかない)

 こうして、徳吉をのせたクルマは、第4地区にあるアジトに向かい、走っていった。

エピソード① 完結

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