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キセキ

 この徳吉のコトバを聞いて、藤柴と高井は一瞬、真顔になってしまった。

「おどろきましたね。ソレに気がつきますか?」

「もしもオレが、君たちふたりのたちばなら、まず第一に、一番さいしょに、うしろのほうを、シッカリとかためるだろうし。

 そうなると、いくらトップの支所長が協力者とはいっても、はんたい・ていこうをして、支所長のジャマ・ぼうがいをしたり、あるいは、失脚させてしまって、そのたちばを手にいれてやろう。っていうヤツがでてくるのは、カンタンに予想がつくからね。

 となると、そういうニンゲンを、つまり、潜在的なていこう者・はんたい派を、可能なかぎり、はやい時点・だんかいで、すばやく見つけだすひつようがある。

 コイツらが、ハッキリとしたカタチで、はんたい・ていこうを、オモテ立ってはじめてしまえば、その対処・たいおう・カイケツに、時間やおカネ、労力がかかりすぎる。だからこそ、じぜんの時点・だんかいで見つけだして、マークしておかなければならない。

 ソレでコイツらが、『イザじっさいに、はんたい・ていこうし、かつどう・行動をおこしだしたら、そのしゅんかんに、すばやく粛清してしまう』っていうのが、一番カンタンだし、かくじつな方法・やりかた・手法だろうからね。

 となると、フダンから、チャントじじつ・情報をあつめて、ソレを分析しなければならない。でも、コレを一個人がおこなうのは、カナリむずかしい。というか、ほとんど不可能に近いとおもう。あるていど、そしき的にやらないと、デキることじゃない。

 さっき、第4地区にある拠点は、じじつ・情報をあつめて、分析する機関はまだデキておらず、個人プレーでやってる時点・だんかい。

 といってたけど、でも、まずさいしょに、背後のほうを、シッカリとかためるべきだし、そのひつよう性があるワケだから、背後のほうは、じじつ・情報をあつめて、分析して、ときにはウラ工作をするための機関が、もうすでに、あるていどはつくられて、そしき化・システム化されてるんじゃないか。とおもってね」

「そうなんですよ。第4地区での情報機関は、まだカンゼンに手さぐりというか、一番さいしょの原型すら、マトモにデキあがっていません。

 でも、第3地区のほうは、あるていど、すでにデキあがってるんです。コレはもう、桂さんが積極的に、コレをつくりあげるのに協力してくれましたよ。

 どうも、じぶんの地位・たちばを脅かすキケン性や可能性のある、隠れてスガタの見えない、潜在的なていこう勢力・はんたい派を、いちはやく察知して、はあくしたいとおもったようです。

 まあ情報機関とはいっても、特殊ケイサツのように、あそこまで大キボで、つよい権限を持ってるワケじゃありません。

 あくまでも、桂さんが権限を持っている、支所が管轄してる地区・そしき・勢力にたいして、情報網を張りめぐらせて、そこから情報・じじつをあつめて、分析するていどですがね。

 ソレに、公的なオモテ立った機関じゃなくて、桂さんが個人的に、私的にはあくして、掌握しているそんざいですので、そしきや機関といえるほど、カタチがハッキリとしているワケじゃありません。

 ですので、じじつ・情報をあつめて、分析してる機関のことを、支所のなかで知ってるニンゲンは、ほとんどいないとおもいます。

 つまり、桂さんの部下たちは、このそんざいを知らず、この機関は、トップである桂さん自身と、ちょくせつ的につながっている。

 いいかたを変えると、桂さんは、公的なオモテの支所長の肩書・たちばで、支所にいる部下たちのことを、管理・監督している。

ソレと同時に、非公式なカタチで、私的なネットワークをつくりあげている。そして、その非公式な私的ネットワークをつうじて、じじつ・情報をあつめて、分析して、じぶんにたいして危害をくわえてきたり、はんたい・ていこう、ぼうがい・ジャマをするニンゲン・勢力を、いちはやく察知して、はあくするようにしています。

 もっといえば、オモテ立っておらず、隠れた潜在的なていこう勢力・はんたい派を見つけだしたら、その情報をあつめて、あいてがオモテ立ってうごきだすまえに、すばやく先手を打って、粛清したり、つぶしてしまえるように、備えてもいるんです。

 桂さんは、支所長になってから、そのたちば・肩書で会えたり、つながれるニンゲンを、うまく組みあわせたり、つなぎあわせたりして、ニンゲンのネットワークをつくりあげています。

 そして、そのネットワークをつうじて、イロイロな情報やじじつが、桂さんの手元にあつまってくるんです。ソレを、桂さんや、桂さんの知人・友人が分析し、検討してるっていうカタチです」

「そりゃスゴイ。たしかに、アタマの良いヒトだとはおもってたけど、けんりょくを握ったあとに、ソレを、チャント維持していくための布石を、つくりあげたってワケか」

「そうなりますね」

「というか、君たちふたりが、その桂さんの私的な情報機関をつくるときに、まっさきにうごいたんじゃないのかい?」

「どうして、そうおもいます?」

 このように、藤柴は聞きかえした。

「だってさあ、桂さんの私的な情報機関っていうのは、オモテ立って知られてないんだよね。だったら、そもそも、じゃあなんで君たちが、そのそんざいを知ってるのか。っていうことだよ。

 コレはつまり、君たち自身が、その情報機関のメンバーとかんがえるのが、しぜんなことだとおもう。

 ソレに、『オレのことを、強制ろうどう施設からたすけだす』っていうキケンなことを、桂さんは、君たちふたりを選んでおこなった。

 その動機・りゆうとしては、たんじゅんに、オレが君たちふたりと、顔見知りで知りあいだった。コレもあるだろうけど、これだけのキケンを犯すんだから、よほどつよい信頼というか、深いかかわりがないと、メンバーに選ぶとおもえない。なにせ、しっぱいしたら、それこそ、イノチのキケンがあるワケだし。

 ソレに、オレをたすけだしてくれてから、今にいたるまでの、君たちふたりのようすを見ていると、こういうことに、カナリ手慣れてる感じがする。ウラでイロイロとうごいたり、工作するっていうことについて。

 ということは、『こういうことを、すでに何度もおこなっていて、経験値がある』と、こう見ることもデキる。

 だったら、その桂さんが持っている、私的な情報機関についても、深くかかわってる。とかんがえるほうが、ムリがないというか、自然とおもえてね。そのほうが、違和感だとか、不自然さはないとおもえる」

「ヤッパリ徳吉さんは、今ある情報・じじつを基にして、ざいりょうにして、そこから理づめでつなげていって、延長線上のことを導きだすチカラが、ズバぬけてるとおもいます」

 関心したように、高井がいった。

「アリガトウ、カンのするどい高井くんにそういわれると、オレもウレシイよ」

「ソレはどうも」

「コレも、オレの想像になるんだけど。『オレが、強制ろうどう施設で処刑される』っていう情報も、この桂さんが持ってる、私的なネットワークから知ったとか?」

「そうです。バレちゃいましたか。オレと藤柴は、桂さんが私的なネットワークをつくるときに、イロイロと協力したんですが、そのあとも、じじつ・情報をあつめたり、分析するときに、時々手伝ってたんです。

 そして、あつめた情報・じじつのなかに、『強制ろうどう施設で、大キボな処刑がおこなわれる』っていうハナシがありました。

 時間があったので、その処刑されるニンゲンのリストを見てみたら、そのなかに、徳吉さんのナマエがあったんです。コレにはおどろきました」

「そうか、そのときに君たちが、オレのナマエを見つけてくれなければ、今ごろオレは、あの世にいってたのか」

 徳吉としては、「今げんざい、じぶんが生きているのは、ホントウに運が良かったのであり、キセキであった」ということを、あらためて実感した。

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