桂のやくわり
ここでふと、気になることがでてきた。ソレは、桂たち3人が、徳吉にたいして、テストというか、試すようなことをしたときに、徳吉のほうが、「じぶんがそのたちばでも、おなじようなことをした」という発言である。
(良くかんがえてみれば、ここまでハナシがスムーズにすすんでるっていうことは、コチラだけじゃなく、徳吉のほうも、このハナシに、カナリ乗り気になってるからだろう。
コレはつまり、おたがいが同意し、賛同をしている。だからこそ、スムーズに、ハナシがうまくすすんでいる。
そうかんがえてみると、もしかしたら、テストをして、試してたのはコチラだけじゃなくて、あいてもおなじだったのかもしれん。となると、オレたちも、徳吉にテストされて、試されてたっていうことになるのか)
このようにかんがえてみると、徳吉を、強制ろうどう施設からたすけだしたあと、特殊ケイサツによる、処刑の光景を見せたときに、コチラがなにかをいう前に、あいてのほうからイロイロと、コチラがわの意図や狙い、かんがえを、推測して言ってきたのは、「実は、徳吉のほうこそ、じぶんたちのことをテストして、試していたのではないか」とも、おもえるのであった。
(あのとき、あのオトコは、コチラの意図やかんがえ、狙いとかを、コチラがいうまえに、つぎつぎと当ててきた。
ソレを聞いて、なかなかアタマが良いとおもったが、良くかんがえてみれば、コチラがわが、まったくなにもヒントをだしてないのに、アレだけピンポイントで当ててくるっていうのは、カナリの違和感というか、不しぜんだ、オカシイ。それこそ、エスパーじゃあるまいし、デキるとはおもえん。
となると、にわかには信じがたいが、あのとき、あのオトコのアタマのなかに、オレたちがやろうとしてることと、おなじようなアイデアが、すでにあったっていうことになる。
ということは、11年以上ものあいだ、過酷でキツイ強制ろうどう施設にいたのに、こういうことを、ひそかにかんがえつづけてたのかもしれん)
ここまでかんがえてみて、桂はすこしだけ、ゾッとするのを止めることがデキなかった。なぜならば、異常なまでの持続力であり、ネバリづよさといえるのだから。
(もしも、この想定があたってるなら、あのオトコは、強制ろうどう施設のなかにいたときも、『今の政治体制・統治機構っていうものを、どうにかしてこわしたい』と、ひそかにかんがえつづけ、つよく願いつづけてた。っていうことになる。
フツウのニンゲンに、こんなことがデキるワケない。でもあのオトコは、ソレを、おこなっていたのかもしれん。
だからこそ、オレたちが、あのオトコをテストして、試すようなことをしたときに、スンナリと、コチラの意図やかんがえ、狙いをあてることがデキたんだろう。なんせ、じぶんがずっとかんがえつづけて、願いつづけてたことなんだから。
さすがに、こまかいところにいたるまで、事前にすべてを見とおして、かんがえることがデキるワケない。そんなことは、ゼッタイに不可能だ。カミサマじゃあるまいし、ニンゲンに、正確なミライ予測ってものが、できるワケない。
そうじゃなくて、おそらく、あのオトコのなかには、大枠というか、おおきなアウトラインがあって、ソレが、コチラの意図やかんがえ、狙いと、ほぼおなじモノだったんだろう。
だからこそ、たすけだしたあと、コチラがなにもいわずとも、ピタリと、コチラの意図やかんがえ、狙いをあててきた。
大枠やアウトラインがおなじだったから、あとのこまかいところは、その時々のようすや、知りえたことをふまえて、その場でかんがえたんだろう。
こうなると、『コチラとの会話や、コチラの発言から、そのこまかいところを、そのつどかんがえてた』っていうことになる。となると、カナリ推理力というか、観察眼がするどいのかもしれん)
桂としては、たすけだした徳吉が、「ホントウのイミで、コチラの役にたつ人材なのかどうか」ということを、テストをして、試したツモリだったのだが、「どうやら、ソレは逆だったのかもしれない」ともおもえてきた。
つまり、ホントウのイミで、テストをして、試していたのは向こうであり、テストをされて、試されていたのは、コチラだったのではないかと。
(こうなると、あのオトコは、なんだかクモみたいなニンゲンにおもえる。そうなると、オレたち3人は、クモの巣に引っかかった虫ってところか。
虫としては、いつの間にか、クモの巣に絡めとられて、自由にうごけなくなってしまう。つかまった虫が、クモの巣のなかでしかうごけないように、オレたち3人は、あのオトコがつくった巣のなかで、うごいていただけなのかもしれん。
となると、藤柴と高井が、徳吉をたすけだしたあと、『すぐにうごきだす』といったり、オレが徳吉を、クルマで施設に送るときに、行動を共にせず、すぐさま第4地区に向かっていったのも、納得できる気がする。
カンのするどいふたりは、じぶんが今、あいてをテストして、試しているツモリだったが、実はじぶんのほうが、徳吉からテストをされて、試されていると、カンづいたのかもしれん。
徳吉のアタマのなかにある、大枠のアウトラインに気がついて、ソレが、じぶんたちの進めてることと、ほぼ一致してるとわかった。
だから、徳吉が参加した時点・だんかいで、ものごとが、一気に進みだすかもしない。と、はんだんしたんだろう。
こうかんがえたからこそ、徳吉にたいして、コチラのおこないたいことを、くわしくつたえるまえに、あえてうごいたのかもしれん。
なにせ、徳吉にたいして、コチラがおこないたいことをつたえた、まさにその瞬間に、ハグルマが噛み合うようにして、欠けていたパズルのピースが揃うようにして、ものごとが、うごきだすかもしれないのだから。
だからこそ、そのうごきだすときまでに、事前の準備とかを、あらかた終えておきたかった。最初のうごきだしというか、スタートダッシュを、スムーズにおこないたい。だからこそ、すぐうごいたのかもしれん)
桂としては、アタマのなかで、点と点がむすびつき、線になっていくような感じがした。
しかもこれらを、あの3人は、いちいちコトバで示し合わせることなく、くわしくハナシをすることもなく、ほとんど以心伝心だけで、おこなったということになるのだ。
(なるほど、藤柴と高井のふたりが、オレではなくて、いっしょに行動すべきあいてとして、徳吉のことをえらんだのも、わかるような気がするか。オレとではここまで、以心伝心でのやりとりはデキん。
どうやらオレのやくわりは、徳吉、藤柴、高井の3人を引き会わせて、かつ、3人がおこなうことを、ウラからたすけることかもしれん。
どっちみち、支所長としてのシゴトがあるオレには、3人と一緒になって、第4地区に行って、かつどうすることはデキん。
となると、オレがウラからたすけるっていうことも、コレはコレで、『ひつようなタイミング、ひつようなカタチで、ひつようなタイプの人材がそろった』と、いってもいいのか)




