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一抹の不安

(オレが、藤柴と高井のふたりと一緒におこなうと、どうしても、こまかいところで、意思の疎通が、スムーズにデキなかった。

 そもそもの前提として、四六時中、つねにあいてと会ったり、れんらくを取ることはゼッタイにデキない。だからこそ、あるていど、ふたりに任せるひつようがある。

 だがそうすると、あとになってから、『こんなはずじゃなかった』だとか、『こういうことは、事前にかんがえてなかった』とおもってしまうことが、何度もあった。

 だからこそ、『あのふたりと、うまく意思の疎通を取ることができるニンゲンが、ひつよう不可欠になる』と、はんだんしたワケだが、まさか、こうもつごうよく、そういうタイプのニンゲンが現れるとは、正直なところ、ユメにもおもってなかった。

 まるで、『ナニモノかが、この3人を、意図的に出会わせたんじゃないか』とおもえるほど、3人とも、見事にやくわり分担がされてる。

 こうもつごうよく、要所要所で、ひつようなタイプの人材が、ちょうど良い、ベストのタイミングで、うまく揃う。なんていうことは、フツウだったら、まずありえないだろう。

 となると、ヤッパリ、なにかがコレを、後押しというか、進めさせてるとしかおもえん)

 桂は、コーヒーを飲みながら、ボンヤリとしていた。すると、デンワが鳴った。ソレは、藤柴からのデンワであった。

「オツカレサマです、桂さん。想像した以上に、徳吉さんは、コチラの意図や狙い、かんがえを、スンナリと理解してくれました。ですから、スムーズにシゴトを進めることがデキそうです」

「ソレは良かった。じゃあ当初の予定どおり、第4地区に住んでるニンゲンにたいして、徴税業務をおこなうための組織の設立を、進めてもらっていいかい」

「わかりました」

 こういって、藤柴はデンワを切った。

(ホントウに、こうもつごうよく、ハナシが進んでいくものなのか。ひつようなタイプのニンゲンが、ひつようなタイミングで、われわれのまえに現れた。

 オレたちが、徳吉をたすけだしたとき、あいてがオレたちにたいして協力し、賛同するかどうかはわからず、いわば、賭けといってよかった。

 それなのに、あいては、コチラの予想した以上に、コチラのかんがえを先読みして、すばやくカンづいた。

 それどころか、チャント会ってから、まだすこしの時間しか経ってないのに、むしろあいてのほうが、コチラをリードして、ハナシを進めてるようにさえおもえる。

 11年以上も、過酷な強制ろうどう施設にいて、俗せけんと隔離されてたニンゲンが、こうもアッサリと、今の状態をスンナリ受けいれて、りかいして、率先して協力しよう。などと、おもえるもんなのか)

 桂としては、徳吉をたすけだすとき、はたして、コチラにたいして協力するのかどうか。すこし不安というか、疑念があった。

 そもそもの前提として、いくら書類をつくったという、ほんにんだといっても、イザじっさいに、ソレを実行に移すとなると、ハナシは違うはずである。

 さらに、11年以上ものあいだ、過酷な強制ろうどう施設にいたのである。そのために、「むかしは、ソレをおこなおうと、おもっていたとしても、今もなお、そのかんがえを、維持しつづけているのか」という点で、自信が持てなかったのだ。

 だがしかし、徳吉の反応を見るかぎり、コチラが事前に心配し、危惧したようなことにならなかった。まったくなかった。

 11年以上ものあいだ、ツラク・くるしい状況のなかにいて、苦労をしたのである。そのために、ニンゲン性やかんがえかた、価値観などが、ガラリと変わってしまったとしても、ソレは、十分にありえるであろう。

(あらためて、冷静になってかんがえてみると、あの徳吉というニンゲンは、カナリ、特殊なタイプのニンゲンかもしれない。

 フツウのニンゲンだったら、どこかでココロが折れてるはずなのに、たすけだしたら、すぐに、コチラの予想した以上に、積極的に、コチラのかんがえにたいして賛同し、協力するようなスタンスを示してきた。

 おそらく、あのオトコは、今の政治体制・統治機構にたいして、コチラが想像している以上に、つよい怒りだとか、フヘイ・フマンを持ってるのかもしれん。

 その上さらに、ほんにんの性格として、よほど執念ぶかいというか、ネバリづよいのかもしれない。

 おそらく、そうでないと、ああも平然と、アタリマエのように、今の状況というものを、スンナリと受けいれて、コチラにたいして協力しようとはおもえんだろう)

 じぶんがたすけだしたニンゲンが、どうやら、事前に想定した以上に、すさまじい性格やニンゲン性を持っていそうなことを、かんがえずにはいられなかった。

(それにしても、強制労働施設からたすけだしたあと、徳吉にたいして、テストというか、試すようなことをしたが、あのオトコは、そのことについて、まったく気にしていないようにおもえた。

 コレも、フツウのニンゲンだったら、怒ってもおかしくない。それなのに、平然としていた。それどころか、『じぶんがそのたちばでも、おなじようなことをした』とまで、コッチにいってきやがった。

おそらく、そのときの一時的な感情・キモチよりも、長い目で見た政治的な利害・損得のけいさん、打算だとかを重視したり、状況をこんらんさせないことを、優先させる性格というか、かんがえかたをしてるんだろう。

 こういうタイプのニンゲンでないと、たしかに、藤柴と高井のふたりとは、一緒になにかをやれるとはおもえん)

 ソファーに座りながら、桂としては、イロイロなことが、アタマにうかんできた。

 今まで、「第4地区に住んでるニンゲンが持っている、個人の私有財産・資産というものをデータ化して、安定的に、税の徴収をおこなうことがデキる」という状態をつくりだすために、イロイロと、ホネを折ってきたのだが、ぐたいてきに、コレをじつげんさせる時点・だんかいになって、「ひつよう不可欠なタイプの人材が、不足している」ということに気がついた。

 そして、そのひつよう不可欠でありながらも、不足しているタイプの人材が、こうもつごうよく、ちょうど良いタイミングで、じぶんのまえに現れた。このことについてかんがえてみると、どうしても、アレコレと、おもわざるをえなかった。

(ホントウのイミでのチャンスは、準備が整ったときに、整ったニンゲンのまえにやってくる。だとか、ホントウのイミでのチャンスは、ジャマや妨害がはいらず、スムーズにすすむ。

 っていうことを、どこかで読んか、聞いたことがあるが、もしかしたら、今がまさに、そういう状態なのかもしれん。

 もしも、オレたちが、これからやろうとしてることに、キケン・もんだい、こんなん・障害があるんだったら、たくさんジャマや妨害がはいって、ハナシがつぶれてたり、あるいは、こうもスムーズに、ハナシがすすまないとおもえる)

 桂は今まで、「これからやろうとしていることが、はたしてホントウに成功し、うまくいくのだろうか」ということについて、一抹の不安があった。

 だがしかし、「じぜんに想定した以上に、ものごとが順調に、スムーズにすすんでいる」ということをおもえば、その不安というものが、すこしだけ、やわらいできた。

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