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ひつようなタイミング

「藤柴くんのいうとおりだ。今の政府や党にいるニンゲンは、『この書類に書かれてあることを、ホントウにおこなえば、不安定な額しかあつめられない税を、毎回、安定した一定の額で、あつめることがデキるかもしれない』っていうことしか、アタマにないとおもう。

 つまり、じぶんたちが統治・支配している、今の政治体制・統治機構っていうものを、壊すことになるかもしれない。とまでは、まずおもわないだろうね。

 ソレにもかかわらず、第4地区に住んでるニンゲンにたいする、はげしい偏見や差別の感情、あるいは、今よりも、じぶんのシゴトが増えることを嫌って、メンドウ臭がって、やろうとはしなかった」

 ここで、高井が口をひらいた。

「でも、コレをホントウにおこおうとかんがえたニンゲンが、ついに、でてきたワケですよ。しかも、ソレをおこなえるだけの権限を持っている、肩書き・たちばのニンゲンで」

「つまり、桂さんだね」

「そうです」

「それにしても、オレもまさか、何年も前につくった書類がキッカケになって、こうして、強制労働施設からでることになるなんて、ユメにもおもわんかった。

 正直なところ、オレはこのまま一生、この施設のなかで、ドレイのようにこきつかわれて、死ぬまではたらかされるんだろうと、あきらめてたというか、ゼツボウしてたからね」

 この徳吉のハナシを聞いて、藤柴がクチをひらいた。

「ニンゲンは、過去におこなったことがキッカケ・理由・原因になって、じぶんのミライ・うんめいがキマるといますが、徳吉さんのケースをふまえると、そのとおりかもしれませんね。

 ソレに、『ひつようなニンゲンとは、ひつようなタイミングで出会える』だとか、『ひつようなことは、ひつようなタイミングで起こり、出会うことになる』ともいいますが、このタイミングで、徳吉さんを、強制労働施設からたすけだすことができたのも、ひつようなタイミングだったんだとおもいますよ」

「というと?」

「いや、実はですね。このタテモノにくるまえに、オレと高井は、第4地区に寄ってたんです。

 第4地区に住んでるニンゲンが持ってる、私有財産・資産のデータ化をおこなうために、今日もうごいていたんです。

 そして、『もうソロソロ、コレが、じつげんするかもしれない』と、今はそういう状況というか、だんかいなんです。そうなると、ぐたいてきな実務というか、組織的なシゴトもひつようになってくる。

 そういうことが、うまくデキるのであろうニンゲンで、かつ、この内容を、チャント理解・把握している。

 こういうタイプのニンゲンが、ひつようになってくる。となると、この案をかんがえだした徳吉さんが、まあ、ベストな人材っていうことになります。

 すこしまえから、徳吉さんが、ソロソロひつようになってくるんじゃないかって、オレも高井も、桂さんもかんがえてたんです。そうしたら、運良く、あの強制ろうどう施設に、徳吉さんがいることがわかった。

 しかも、この施設は、桂さんが支所長をしている地域にあったんです。だから、会いにいくことができたん。こうなると、たんなる偶然とはおもえないかと」

「なるほど、そういう事情もあって、オレに会いにきたっていうワケか。しかも、あの面会室で、桂さんはオレにたいして、むかしつくった書類を見せて、なおすところがあれば、指摘してくれといってきたんだけど。

 その書類のなかに、第4地区に住んでるニンゲンが持ってる私有ざいさん・資産を、データ化すべきだ。っていう書類もあったんだよね。まあだからこそ、今こうしてオレは、スンナリと、ハナシを進めることができた。

 さすがに、もう何年もまえのことだから、そういう書類をつくったことや、その内容を、ほとんどわすれてた。

 でも、あの面会室で、その書類を見せられだ。だから、ソレをつくったことをおもいだせた。だからこそ、このことを意識して、アレコレと、おもいだすことができたともいえる。

 そして、今こうしてたすけだされて、つれてこられたタテモノのヘヤで、この書類を見つけた。だから、君たちのやってることや、かんがえてることを、なんとなくだけど、うっすらと、察することがデキたともいえるか。

 そうでなかったら、もう何年もまえのことだし、しかも、ずっと強制労働施設のなかにいて、強制労働をさせられてた。

 こうなると、あのとき、あの面会室で、書類を見せられてなかったら、つまり、意識せず、おもいだしてなかったら、ここまでアタマがまわったとはおもえない。

 となると、あのとき、あの面会室で、書類をオレにたいして見せたのは、オレがコレをおもいだして、意識することを狙ったのかって、チョットおもうんだよね。

 たすけだしたあと、アタマがこんらんし、パニックになるだろうから。そのなかで、冷静になり、状況を理解させるためには、やはり、断片的じゃなくて、ながれというか、『一連のジケン・できごとには、関連性がある』と、おもわせるひつようがある。

 そのほうが、ニンゲンは、こんらん・パニックがかるくなるし、冷静になりやすい。だからこそ、あのとき、あの面会室で、オレにたいして書類を見せたとおもうんだけど、どうだろう?」

「そのとおりです」

 藤柴が、キッパリと答えた。

「なるほど、そしてオレは、君たちのかんがえたとおりに、理解して、判断した。っていうことになるワケか」

「いや、そうはいっても、ここまでスンナリと、徳吉さんが、コチラのかんがえや意図を理解し、把握してしまうとは、正直なところ、おもってませんでした。もっと時間がかかるだろうと踏んでました。でも、とりこし苦労でした」

「そりゃどうも。とりあえず、オレから話すことはおわったけど、ふたりから、なにかオレに、いいたいことはあるかい?」

「いえ、特にありません。ですので、チョット食事にしませんか?ここにくるまえに、買ってきましたので」

「ソレはありがたい。もう何時間も、なにもたべてないから、さっきから空腹だったんだよ」

「じゃあ、食事にしましょう」

こういうと、藤柴は机の上に、買ってきた食料を置いたのである。そして3人は、雑談をしながら食事をはじめた。

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