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82.雪
82.雪
銀行の奥で窓口のモニタの録画を副支店長と淳は見ていた。
(確かに渡していない……)
表にいた村崎が不安そうに見た。淳はやさしく村崎に「大丈夫ありがとう」と言った。
心中は全然大丈夫ではなかったが、つい習慣で言ってしまった。
(ありがとう……ありがとう……)
店内を隅々まで見た。
普段見ない埃まで見えるものだった。
顔を上げると外はもう雪だった。傘を差す人。走る人。
平悟郎は隣りの信託銀行を確かめていた。
(本当に落としたんだ……何てことを……。これからって時に……。どうしたらどうしたらいいんだ……)
銀行が閉まり隣りの銀行へ行ってみた。厚意で中を見せてもらった。
平悟郎のスマートフォンに電話したが出なかった。
(……雪)
雪がただ降っていた。
街はクリスマス一色だった。赤と緑のマスコットたちが淳に微笑んだ。
近所の婦人に声をかけられたが淳は気のない返事をするだけだった。
(あんな大金用意できない……)
会社の株を売っても負債のほうが多いので売るに売れない。
天上を見上げた。
(雪……)
雪がただ降っていた。




