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65.〔リラクシン東京〕/楽譜

65.〔リラクシン東京〕/楽譜


〔リラクシン東京〕で、マイルス・デイヴィスの「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」が流れていた。


「はい――」


 静蓮が淳の電話を受けた。


「淳さんからの電話で、今日は来られないそうです」


 静蓮がそう、父のれいに告げると「そうか」とだけ返した。


「来週は必ずと約束してくれました」


 静蓮が言葉を続けた。


「必ず行くからと……」


「しばらくうちにいなさい」


 励が静蓮の肩に手をやると、静かに言った。


 その意は「結婚するな」だ。


(これも天命か……)


 励の足がデシャップに向かう。キッチンに「キャンセルだ」と伝えた。


 料理長以下、全員の手が止まった。


 誰も口にはしないが、溜息の一つはある。


 乾燥状態からゆっくり二日かけて戻されていた赤と白の燕の巣が残された。若狭わかさ甘鯛ぐじも赤白が。


(金額がどうこうという問題ではない)


 それぞれ最高級の素材で確かに高価だったが、それはこちらの誠意で相手には関係がない。


(だが、互いに想いあっているのなら、相手に対する誠意というものがあるはずだ)


 それが励の考えだった。前日でも連絡できたはずで、当日行けないなど励には信じられなかった。


(それに、事故も未然に防ぐのが大人おとなではないか)


 確かに鮎川淳の周りは事故が多い。


 昨夜遅くに事故があったと連絡があった。


 励はどんな内容か聞く気にもならなかった。


 事故が多いのは何か理由があるはずだった。


(あまりに不注意すぎる)


 他にどのような理由があるにせよ、そのような人物に娘を預ける訳にはいかなかった。


 曲が「星に願いを」に変わった。


 静蓮が何か言おうとしたが、励は「後にしてくれ」と席に戻ることはなかった。


 母が「大丈夫よ」と言いながら、静蓮に白い封筒を渡した。


 淳に渡すための楽譜だった。



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