48.再会と別離
48.再会と別離
関西国際空港。
静蓮は待っていた。
二時間前から聡声と飛行機を待っていた。
一週間前から淳を待っていた。
長かった。
聡声の母と陸緑朗が見送りに来ていた。
静蓮の両親は東京だ。新しくお店を作るらしい。どうしても行かなくてはいけないので、静蓮にとって年の離れた兄のような緑朗の出番だった。
淳を待って時間ぎりぎりまで出国手続きを延ばした。
聡声は早く免税店に行きたいらしく、母に「落ち着きなさい」と注意されていた。
入った途端、あれこれ香水を選んでいる。
在庫限りの表示がある。かなり安い。
見送りの人たちが見える場所で、静蓮は待っていた。
緑朗が見ていた。
妙に心が落ち着いていた。
淳に会える気がするのだ。
何だかそんな予感だった。
緑朗がいつも言っていた。「物事には流れがある。その流れに乗るか呑まれるか……流されるか。流れに逆らい乗るにはそれだけの努力が必要だ」と。そして「乗った限りは乗り続けることだ」と。
静蓮は静かに待った。
豹柄の服を着た大きなお腹をした女性が静蓮の前に立った。
見送りに手を振っていた。
静蓮が見えないので位置を変えると、女性もゆっくり移動する。
後ろを見ているかのように動く。
免税店で新しい商品が搬入されてきた。
女性が着ている豹のように俊敏な動きを見せた。
たちまち店頭に陣取った。
巨体に飛ばされた聡声が諦め、搭乗口に向かった。
「あそこで手をふってる人がいる」
聡声が振り向いて静蓮に言った。
手を振る聡声。
飛行機の向こうに人が立っていた。
それは空港の追加工事の現場だった。
飛行機にかなり近い。
顔が見えた。
淳だった。
静蓮が背伸びして手を振った。
ちぎれそうだ。
涙がこぼれる。
聡声が静蓮のチケットをスタッフに渡した。
二人して機内に駆けこんだ。
窓から良く見えた。
聡声と替わってもらって、手を振った。
淳も大きく振っていた。
緑朗が踵を返した。
スマートフォンでメッセージを打つ。
〈問題ない〉
フランス語だった。
〈食後酒を〉
食後は洗い物の時間だ。「濡れ仕事」の始まりだった。




