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34.オシフィエンチム/怪談「雪女」
34.オシフィエンチム/怪談「雪女」
音楽の都オーストリア共和国首都ウィーンの北東三五〇kmにポーランドのオシフィエンチムがある。
「オシフィエンチムには、いないわ」
眼鏡をかけた少女が言った。
静蓮は行ったことがなかった。そもそもオシフィエンチムが何かも知らない。
寮で夜更かしをしていた時だった。
何かの話で幽霊の話がでた。
一人ずつ話すことになった。
日本でいう百鬼夜行だが、広東系日本人の静蓮は知らなかった。
最初の一人が話したのは聖エルモの火だった。
「呪われた教会に火がともる……」
「単なるコロナ放電よ」
眼鏡の少女が言った。
「言ったらつまんないよお」
みんながそう言うが、でも聡声は大きな身体(また太った)を縮こませて震えていた。
次の少女はジャック・オ・ランターン。
これも眼鏡っ子が「同じ鬼火よ」とピシャリ。
次の子が「わたしが鬼火を言おうとしたのに」とふくれ面になった。雀斑が可愛い。
だいたい同じ年代の少女たちだから話も似通ってくる。
おびえる聡声の順番は飛ばされ、静蓮の番になった。
静蓮は「見たことがないからいないと思う」と答えた。
場が一気に白けてしまう。
「日本には怪談があるでしょう?」
誰かが言った。たぶん、眼鏡の少女だろう
静蓮が知っているのは「雪女」ぐらいだった。




