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32.美濃の告別式
32.美濃の告別式
青田美濃の告別式は、通夜に続いてしめやかだった。
参列者の多くは茶泉の関係者だった。みな言葉を交わさない。
茶泉一王が失踪し、前に亡くなった一王の父、そしてその愛人の病死。
ただならぬ雰囲気があった。
米国帰りの愛人の娘が次の経営者ということも影響しているのかもしれなかった。
喪主は茶泉ひろみだ。黒いバレンシアガを着こなしていた。
隣りに妹の環が静かにいた。
本当の喪主が環だとみんな弁えている。
実質、茶泉の社葬だった。
焼香開きから茶泉の名が続いた。青田の人間はいない。美濃に親戚はいなかった。孤独な死だった。
一般弔問で車椅子の墨月弁護士が前に出た。続く藍河が押している。
鮎川淳も参列している。
焼香を済ませ席に戻る時に、淳は並ぶ一人の女性に目が止まった。
緑髪の女性だった。目が合うと会釈した。
(誰だろう。思い出せない)
指に蝶のリングがあった。
(……静かな……蓮。静蓮だ)
唇だけで声に出さない。
頷く静蓮だった。少女は美しく成長していた。
(後で声をかけよう)
淳がそう決めた。
列はかなり長かった。
茶泉一族への服従の印だった。
永遠に続くかと思われる読経が脳裏に木霊した。




