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引きこもり虫と修学旅行3

 三日目の夜。どうしてまた沖縄に来て肝試しをしなきゃならんのだ。

 しかも戦争が繰り広げられた所だぞ。罰当たりだろ教師共。

 出発する前に先生からとっても怖い話を聞いてムードを立たせる。

 流石に二人じゃ危険だからここは班で行動することに。

 なら最初からするなよ。

 そして奥山さんが私に協力を頼んで来たのはここだった。

 確かに肝試しは密着も高くなるが敢えて言おう。

 もっと告白できる場所があったぞ。

 しかも私達のいる前でやるのかい?

 やめてよ民衆のことも考えてくれよ。


「私と風柳が先頭で行くよ。凛音最後尾に着いて。その目力だったら霊も逃げんじゃない」

「そんなに強い?」

「というより何考えてんのかわからなくて不気味」


 ほうほう成程。

 ただ霊は逃げないと思うぞ?


「なら俺も根尾と歩くが。二人はそれでいいか?」

「は、はい! 私は構いません、けど」


 月海の方をチラリと見る。

 誤解はいずれ解かないと。


「健人もいいか?」

「……やだ」

「え?」


 奥山さんが固まる。あれ、両想いじゃ。


「なんでだ?」

「あ、あのそういう意味じゃなくて」

「「「???」」」

「お、お化けが怖いんだよ!!」

「「「……はあ?」」」


 奥山さん以外が素っ頓狂な声を出す。


「だ、だってここ戦地だったんだろ? て、手首とか掴まれてそのまま全員あの世へ連れてかれたら」

「倒れるな倒れるな! そうかお前幽霊苦手だったのか」

「なら尚更真ん中がいいじゃない。前も後ろも私達がいるんだし」

「お前らが連れ去られたらどうす……」

「よし行くか」


 健人くん、強引に引きずられてる――月海と風柳に。

 私と佐藤くんはそわそわしてる奥山さんと今にも魂が抜け出そうな健人くんの後ろを歩く。


「……根尾」

「なに」


 佐藤くんがこっちに顔を寄せてくる。

 自惚れ屋ならきゃー! ってなるんだろうけどごめん、興味ないんだそういうの。

 佐藤くんはそんな意味でこっちに寄ってきたのではないです。


「昨日奥山が必死に何か言ってたが何の用件だったんだ?」

「告白すんだと。それで肝試しの時にけじめを付けてスッキリすると」

「……俺達の前でか?」

「じゃないの?」


 何考えてんだ。と私達の思いはきっと一致したであろう。

 肝試しは三十分コースで森を歩いていく。

 森と言ってもしっかり整備されてるから一本道で矢印のパネルも用意されてある。

 日中は観光にも使われるそう。だから夜にしたんだろう。

 で、道中はというとありきたりなものばっか。生首から始まりこんにゃく、赤ちゃんの泣き声、挙句の果てに先生が兵士の格好をして襲いかかってくる。

 そんなものでこの班を脅かせるのか? と誰もが思っていたのに健人くんはビビりまくり。


「ああ……もう俺はここでおさらばするっす」

「死ぬな。つか全部仕掛けだっつの」


 ついに気絶しようとする健人くんを月海がビンタして戻す。

 えげつないやり方だな。

 それにしてももうほとんど終盤だけどいつ告白するのよ奥田さん?


「ねえ奥山さん……」

「あ、あの峯岸くん!!」


 お、今か。

 月海と風柳には事情を話してあるからすぐに止まってくれる。


「は、はいぃ……なんですか奥山」


 そっか。幼馴染みだから『っち』はないんだ。

 敬語はただの恐怖からだろう。


「え、えっとね……あの」


 頑張れ! 

 私達はほとんど空気になるから。桃李兄さんみたいになっとくから。


「わ、私……み、峯岸くんのことが好きです!」


 おおー! 言った! よく頑張ったぞ奥田さん! 的な顔を月海と風柳が浮かべてる。

 私は浮かべられないから心の中で思ってるよ。

 佐藤くんの安堵の溜息が聞こえる。


「ず、ずっと前からす、好きだったの。だからここでけじめを付けようと思ってね」


 健人くんの横を通り過ぎて奥田さんは月海の手を取る。


「ん?」

「さあ御子柴さんも告白してください!」

「……は?」


 だから肝試しじゃないと駄目だったのね。

 オッケー納得……じゃねえ!


「根尾さんから聞きました。御子柴さんも峯岸くんが好きだと。それを私の為に隠してくれたことも。だからここで決着をつけたいんです。どちらが峯岸くんと付き合うか」

「……すー……はー」


 あれはやばい。確実に殺される目だ。

 だが私のあの時の作戦だと思えばすごいもんじゃないか?

 おい射殺すな。その目をそらせ!


「……わかった告白するよ。(嘘の)告白をね!」

「佐藤くん助けて」

「自業自得だと思う」


 私の味方はいないのか!

 てか張本人の健人くん置き去りにされて呆然としてるんだけどね。


「そういうわけだから健人くん。私もあなたのことが好きよ。返事をして」

「え!?」

「お願いします峯岸くん!」


 やけにさっぱりである月海。戸惑う健人くん。けじめをつけようとしてる奥田さん──を、外野から見れば修羅場だと言う事をご存知であろうか。

 さあやってまいりました峯岸健人争奪戦。勝つのは果たしてどちらか!

 まあ知ってるんだけどね。


「何やってんの凛音」

「黙らっしゃい風柳」


 実況には軽く憧れてたのよ。

 早く決めろ峯岸健人。峯岸健人ぉ!


「お、俺はその……えーと」


 じれったい!

 全員結末わかってんだからさっさとしろ!


「お、奥山……と、付き合いたいっす」

「ん、じゃあそれでいいね」

「え!? それでいいんですか御子柴さん?」

「うん。そもそも興味……諦めてたからね」


 今興味ないって言ったよな。言ったよな。


「そもそも二人が両想いってことクラス全員知ってたし。むしろ教師からも色々むかつくからさっさとくっつけとも言われてたし。この修学旅行も学校でどうしたらくっつくか会議もしてたくらいだよ」

「「……え?」」


 月海のネタバレ。

 いやーこれ覚えとこ。透さんに言ったらいい題材にしそうだし。


「じ、じゃあ御子柴さんは最初から諦めて……」

「いや違うよ。そもそも私別に恋してないし」

「え? だって根尾さんが」

「ゲフンゲフン!! あれ、なんか喉の調子が悪くなってきたなー? 先に戻って休んでるね」

「そっかーじゃあ意識を失えば楽になるかもねー」


 鈍い音を立てて腹に何かが――あ、月海の拳だわ――当たってそのままブラックアウト。




 後日。修学旅行から帰った後は新カップル誕生でからかわれるかもね。と予想していたが。


「やっとくっついた」

「おせーんだよお前ら」

「どんだけ豆腐メンタルなんだよ健人」

「うるせえ!!」


 からかれるというより遅いと呆れられていました。

 それで月海はというと腹いせにアダルト系の動画やグッズや写真で私をいじめ倒した。

 そのせいで何回苦しめられたことか。

 ただこれで高校二年の行事はほとんど終わったも同然だし、や

 っと読書がまったりできるー。

 と、この時の私は思っていた。

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