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西の嘲笑 (これらの相手をしておったとは、難儀じゃなぁ byミルドレッド)

「…陛下」


 なんじゃ、顔色が悪いぞ。腹でも下したか? ワーレン


「陛下に鍛えられましたので、ある程度のことでは動じません。そうではなく…」


 分かっておる。全く、面倒なことじゃ…。


「そう言いながら、新しいおもちゃを見つけたように笑わないでください。彼らとて貴重な命なのですよ。どうでも良いですが」


 そなたも随分なことを言っておるではないか。…お主らも頷くな。


「致し方ありませんわ、陛下。彼らはあまりにも愚かですもの」


 …ジュリア。同感じゃ。


「自らの欲に惑わされて、『再来』たる傑物を自ら手放したのだから、愚か以外の何物でもない」


 言うとおりじゃがな、スタンレー。そなた、いい加減公的場でわらわにタメ口を聞くでない。


「うるさい、わがまま」


 …ロリコンの変態が。


「…喧嘩は勝手ですが、するなら北でしてください。女王と大将軍の物理的な喧嘩なんて国が更地になりかねませんからね。何より、復興と修復にお金がかかる」


 この守銭奴が…。良く嫁が逃げないものじゃな、クラレンス。


「嫁は嫁で主義主張がはっきりしてますし、互いのそれには触れないことが暗黙の了解です」


「わたくし、いまだに不思議なのよ。この中で、貴方だけが恋愛結婚なことが」


「行かず後家になりかけた年増をもらってくれただけ感謝しておけばよろしいでしょう。僕は貴方と違って同種族にこだわらなかっただけです。素晴らしいですね、竜人の嫁」


 惚気はいらぬ。ジュリアも絡むでない。最終的には惚気になるのじゃからな。……悔しいなら、休暇をやるから婿を探して来てもよいぞ。


「いりませんわ。わたくし、そんなに尻の軽い女ではありませんの」


 …そなたまで惚気るでない。全く…。


「全く、はこちらのセリフです」


 …どうしたのじゃ? ワーレン。


「そろそろ、本題に戻ってもよろしいですか? 女王陛下」


 本題…。


「グランドの件です!」


 …すまぬ。あまりにもくだらな過ぎて、忘れかけておった。


「まぁ、確かにくだらないですものね」


「何も知らない奴らが、まぁ、好き勝手言ってくるもんですね」


「…千年も前のことなど、人間にとってはおとぎ話でしかないだろう」


 そうじゃな。……ワーレン。


「何ですか?」


 返書を。


「何と?」


 寝言は寝て言え。


「かしこまりました」












 グランドから送られてきた書状を見て、ミルドレッドは妖艶に微笑む。

 そこに記されているのは、あまりにもバカげたこと。

 回りくどい言葉でゲンデルを攻めるため、協力してほしいと書かれていた。ミルドレッドがそれに頷くと信じて疑わない強気な言葉で。


『かつての友誼と友好を信じております』


 文末はそう締めくくられていた。

 かつて、というにはあまりにも遠すぎる時の彼方。

 ミルドレッドと建国期からいる重臣達ですら、そういえばそんな事あったなぁ、と感慨深くなるくらいだ。


 千年前の友誼と友好。

 そんなもの、もうないのだ。

 グランドにとってはどうだか知らないが、ミルドレッド達にとっては、とうに終わったことだ。

 なぜなら、ミルドレッド達が友誼と友好を交わしたのは、千年前に生きた一人の人間だったからだ。グランドという国ではない。

 その一人がグランドに深く関わっているために、グランドは自分達の友誼と友好だと勘違いしている。

 この辺、人間と異種族で感覚が違うということがあからさまに出ている。









 こんな勘違いなバカどもが一国の首脳とはのぅ。

 これらの相手をしておったとは、賢者殿は難儀じゃなぁ…。










 くっと小さく笑みをこぼしたミルドレッドに、皆はそれぞれに似合う笑みを浮かべる。

 容貌は違えど、浮かべている笑みの種類は全て同じ。



 相手を嘲り見下すものだった。





…千年前、確かにおとぎ話の領域ですよね。


以下、エーデルパレス首脳陣。


ワーレン

宰相。真っ当な苦労人。ミルドレッド女王の乳母の息子、年下。

誑かされた人を多く見ていたので、結婚宣言の折、女王の旦那さんをマジで心配していた。ハイエルフとエルフのハーフ、つまりミルドレッド女王の従弟。…この生まれを嘆いたことはもはや星の数。


ジュリア

内務大臣。奴隷階級から這い上がった女傑。そのせいか、気が強く毒舌で腹黒い。淑女然としたたたずまいだが、炎属性の魔法においては無双で戦いになるとスラングが混じる。自身の足場固めに結婚した夫はドワーフの王族だが、相手の性格のおかげか夫婦仲は非常に良く、一人息子も生まれた。夫とは死別。…たまに混じる惚気は寂しさの証拠。ちなみに外見は十二・三歳ほど。


スタンレー

大将軍(軍務大臣)。ハーフエルフの亜種(寿命的な意味で)。迫害されてきたせいか、人間(エルフ?)不信気味。ぞんざいな言動ながら、子供に優しいので慕われている。アーネストの師匠。既婚。相手はミルドレッド女王の次女の末娘…つまり孫。ちなみに、口下手なのを利用されて押しかけ女房になったあげく、既成事実を作り上げた恐ろしい嫁。…今はちゃんと相思相愛。だが、義祖母とは微妙に仲が悪い(ふり?)。


クラレンス

財務大臣。唯一全う(?)なエルフ。だが性格は一番悪いかも。奥さんと相思相愛だが、子供はいない。元より、竜人は異種族間で子供が出来ることがほぼないので、期待していない。極度の守銭奴。だが、使う時はしっかり使う。たとえ国庫でも問答無用で勝手に使用する。…外見だけはのほほんおっとり。


外務大臣と法務大臣は人間。

ワーレンと胃痛友達。一番大変なのはこの人たちかもしれない。



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