94 紅炎の実力
なぜかお客さんと戦うことになった紅炎
まぁ負けるとは思えませんが
実力差を見せつけてくれるでしょう
94話 「王国南部編5話目」はじまります
ドワーフの武具店に入った途端、トラブルに巻き込まれてしまいました
誰のせいでしょう
店の中で先程の客に店主は言いました
「その剣を貸してやる。試しに使ってみるといい。使いこなせたなら売ってやるよ。」
客はニヤリとして言いました
「言ったからな。後で無かったことにするとか言うなよ。」
それなりに腕に自信があるのでしょう
店主さんは紅炎に言います
「兄さんにも剣を貸すよ。好きなのを使いな。」
そう言われた紅炎は店内を見回し、ひとつの剣を掴みました
「これを借りよう。」
それは練習用の木剣でした
店主さんは
「いや、それではさすがに……」
と言いましたが紅炎はそれを制します
「あの客に貸した剣は中々の代物だ。出来れば剣同士で打ち合って刃を傷めたくない。この木剣ならあの剣は傷まないだろう。」
そう言いながら客の方に向かいました
「さあ、始めようか。」
先程の客は今のやり取りを見て怒り心頭です
「ふざけるな!怪我をしても文句を言うなよ!」
そう言うと客の男は素早い動きで紅炎に向かっていきました
そしてとても素早い斬撃
どうやら店主さんが貸した剣は魔力を吸収して使用者の剣技を上昇させる魔剣のようです
「なるほど。とても良い剣のようですね。」
紅炎はそう呟くと男の斬撃を軽く避けて、木剣を構えました
その木剣に白く輝く炎が纏いました
この状況に神さまも、ジロさんも、店主さんも、見物していた人々もとても驚きました
「お、おい!あの店の木剣は魔剣だったのか?」
「伝説に聞く炎の剣か?」
「いや、見たことない白い炎だぞ。アーティファクトじゃないのか?」
「とんでもない武器を扱う店だぞ。」
相対している客の男も震えながら文句を言います
「汚いぞ!魔剣を持ち出すなんて!」
「何を言っているのかな?客人。これはそこにたくさんある練習用の木剣だぞ。おぬしもそこから取るのを見ていただろ。……まぁこれが実力というものだ。」
紅炎は事も無げに言い放ちます
「うるさい!でやー!」
客の男は更にスピードを上げ紅炎に襲いかかりますが、全くかすりすらしません
しばらくすると突然客の男が動けなくなりました
「な……に?」
膝を付いた男の鼻先に紅炎は炎を纏った木剣の剣先を向けました
「終わりです。その剣は使用者の魔力を吸収し攻撃力を高める魔剣です。使用者にかなりの魔力がなければまともに使用出来ない魔法剣士専用の剣です。戦士の貴方にはそれに見合った剣がよろしいでしょう。」
そう言って紅炎は木剣の炎を消しました
そこに握られたのは、やはりただの木剣でした
立ち止まって、いつの間にか増えていた見物人は拍手喝采
紅炎は何をやってもカッコいいのです
紅炎は項垂れた客の男から剣を受け取ると店主さんに返しました
「この剣は一級品だが使い手が限定された剣のようだな。」
「すまないね。助かったよ。そのとおり、あのお客さんがこの剣を持って魔獣に立ち向かっても、すぐに魔力切れで行動不能になっていただろう。この剣のせいで死人が出るのはゴメンだよ。」
と言ってから話を切り替えました
「いらっしゃい。ジロさんとお連れの方。ユックリと見ていってくださいね。」
そう言われて3人は店内を見て回ることにしました
店主さんはお客さんの対応に忙しそうです
魔剣についてや炎の剣についての問い合わせの対応にですが……
紅炎はしばらく見たあと、旅の服装に胸当てや肩当てが付いたような軽装の防護服を選びました
「もう少し防護力が高い方が良いのではないですか?」
とジロさんが言いますが紅炎に
「ドラゴンのウロコより堅牢な防具はありますか?」
と言われ、顔を引きつらせました
次に剣を見ましたが、これも扱いやすく壊れにくい物を選びました
「もう少し攻撃力のある剣はどうですか?先程の魔剣とか。」
とジロさんが言いますが紅炎に
「剣は媒体であって魔力で魔法剣として使うので、壊れなければそれで良いのです。」
ジロさん、悟りを開いたような目をしてます
神さまは店主さんに聞きました
「さっきみたいな魔剣でもっと細い剣みたいなのはないですか?お土産に買って帰りたいんですけど。」
神さまが聞くと店主さんは残念そうに言います
「さっきの戦いを見たでしょ?魔剣は誰でも使えるものじゃないんだよ。相手が分からないと簡単には売れないよ。」
「そうかぁ~残念。武器といえばノルディカさんに買っていってあげたかったんだけどなぁ。」
それを聞いて、店主さんの目がギラつきました
「ノルディカって……まさかあのノルディカ副騎士団長様か?」
「うん。そうだけど……店主さん、顔が近いよ。」
店主さんが興奮気味に言いました
「それを早く言ってくださいよ。とっておきがあるんですよ。」
そう言うと店主さんは店の奥にいき、ひとつの箱を持って帰ってきました
「これはとても店頭に出せる品では無いので扱いに困っていたものです。」
そう言って開けた箱には、ひと振りの白いレイピアがありました
「レイピアの使い手も少ないのですが、かなり強力な魔剣でして売ることができないんですよ。ノルディカ副騎士団長様ならきっと役立ててくれると思うんですよね。」
すると横から紅炎が是非買うべきだ……と言ってきました
持て余していた事もあってかなり割引して……それでも高価でしたが、レイピアと、紅炎の武具を買って店を出ました
神さまはレイピアについて紅炎に聞きました
「あの剣は良いものなの?」
「あの剣は私の牙でできています。」
これにはジロさんが一番驚いていました
「はるか昔、私に挑んできた若者がいました。その若者はとても強く、私と若者は引き分けました。若者を気に入った私は友好の証に、生え変わり抜けた牙を与えたのです。まさかこんなカタチで再会するとは思いませんでした。」
「それは素晴らしいね!じゃあ僕も剣に祝福しよう!『祝福』」
するとレイピアが薄く金色に光りました
「タイヨー様……今のは?」
紅炎が聞きました
「うん。これで注ぐ魔力量に応じて身体強化されるようになったよ。魔力をいっぱい込めれば3倍くらい身体強化されるかな〜」
「神に祝福されたドラゴンの剣……」
神さまの説明に気を失いかけたジロさんでした
こちらとは別にロキシー王女の想いを描いた短編「ロキシー王女の日記」を投稿しました
良かったらそちらもよろしくお願いします




