92 神さまと獄炎竜
イフリート様を軽く退けた神さま
地下に落とされるとそこには獄炎竜さま
相対する2人はどうなってしまうのか
92話 「王国南部編3話目」はじまります
「はじめまして。僕は深緑の森の管理者であるドライアド様の護衛で弟子のタイヨーと言います。」
穴に落ちた神さまはユックリと下に降りて、マグマの上にまるで立つようにして獄炎竜さまに応えました
「なるほどな。このマグマの湖でもまったく問題なく行動できるのか。とんでもない怪物が現れたようだな。」
「獄炎竜さまに怪物と言われるとは思いませんでした……」
神さま、少しショックを受けたようです
獄炎竜さまは少し思考しました
「……まてよ。ひょっとしてお前、北の海の海底火山に何かしたか?」
神さまは思い当たる事があり、ビクッとしながらも答えました
「えーっと……はい。僕が火山活動を止めました。北の海に被害が出ていましたので。」
申し訳なさそうに神様が言うと獄炎竜さまは、なるほど……と言いました
「それに対しては礼を言おう。本来は私が行って活動を抑えるのだが、お前に先を越されてしまったようだ。」
「火山活動を止めてもよかったのですか?」
「そのままにしていて噴火などしたら北の海の住人が大変だろうと思ってな。行こうとしたところで活動が収まったので疑問に思っていたのだ。まさかお前がその場にいたとはな。」
あれ?ひょっとして獄炎竜さまは聞いていた話とは違って良いドラゴンなのでは?
「ますますお前に興味が湧いた。一戦交えてもらおうか。」
前言撤回です
「では行くぞ。『獄炎』」
獄炎竜さまがブレスを吐きました
それは超高温の炎
岩を溶かし溶岩すら蒸発する高温
神さまは真正面からそのブレスを受けました
数秒間放出されたブレスは、やがてその炎を終息させました
しかしそこには変わらず神さまが立っていました
「私のブレスで無傷だと!?」
驚く獄炎竜さまに神さまが言います
「確かにすごいブレスです。恐らくこの世界で最高の温度を放つ攻撃でしょう。でもまだ足りません。……そうですね。僕の攻撃の前に……まずはこの空間を凍らせておきましょう。『絶対零度』」
すると地下空間の壁やマグマがすべて凍り付きました
獄炎竜さまも分厚い氷の壁に囲まれています
「何をする気だ。こんな氷で私が倒せるとでも思ったか。」
獄炎竜さまが睨みますが神さまは笑顔で答えます
「いえいえ。ただ少なくともこれぐらいの壁がないと貴方と、この地上が蒸発してしまうので。では僕のブレスを受けてもらいましょうか。大丈夫。出力はかなり抑えますので。『太陽フレア』」
「太陽フレア!?だと?」
神さまの口から、まばゆい光が溢れました
太古の昔から生きているドラゴンは聞いたことがありました
太陽はこの世界よりも100倍以上も大きい火の玉だと
その太陽から吹き出る炎を太陽フレアと呼ぶことを
世界が真っ白くなりました
その光が収まったとき、空間全体を覆った氷はすべて消え失せ、獄炎竜さまは大火傷を負い瀕死の重傷でした
「生きてますよね。では、『救いの雨』。」
神さまが呟くと金色の光が獄炎竜に降り注ぎました
すると火傷はすべて治癒され、獄炎竜さまは回復していました
獄炎竜さまはしばらく茫然としていましたがやがて一言呟きました
「神よ……」
神さまは笑顔で答えました
「今の攻撃で聡明な獄炎竜さまなら、おおよその理解と見当はついたと思いますが、僕は太陽の意識体です。全力でブレスを吐いたらそれこそ一瞬でこの世界が終わっちゃいます。」
獄炎竜さまは、たまらず神さまに聞きました
「この世界の終焉ですか。そのために貴方様は降臨なされたのですね。しかし受け入れる事はできません!私はこの身が滅びようとも世界を守るために戦います!!」
「待って!待って!待ってーー!」
神さま大慌て
「違いますって!今、貴方を回復させたじゃないですか!僕はこの世界がとても気に入っているのですよ!」
そう言って獄炎竜さまを落ち着かせ、神さまは話しました
「とりあえず僕の話を聞いてください。世界の終焉は無いですから。僕がこの世界で何をしているかと言うと、かつて何もなかった世界がどのように進化していくのか非常に興味があって観察に来ているのです。なので基本的にこの世の成り行きに手出しはしないつもりです。」
獄炎竜さまは少し落ち着きました
「ではこの世界に害意があるわけではないのですな?」
「もちろん……だいたい僕は呼ばれてここに来たんですよ。恐らくイフリート様の仕業と思いますが。それはともかく、じつはこの世界は、かつて2度滅亡しています。強力な兵器を開発した人間同士の戦争によって。僕は今のこの世界をとても気に入っています。長くユックリと成長してほしいのです。そのために少し力を使うことがあるかもしれません。実際に守りたい人達もできましたしね。」
そういって神さまはにっこりと笑いました
「イフリートが……わかりました。その上でお話があります。」
獄炎竜さまの態度が変わりました
「タイヨー様のご意向よくわかりました。しかし貴方様の力は巨大すぎます。ちょっと力加減を間違えただけで世界を滅亡させてしまうかもしれません。」
「そんなオッチョコチョイじゃないです!」
神さま怒りますが獄炎竜さまは続けます
「可能性の話です。そこでどうか私を配下にしてください。私の力はこの世界では周知されていますし、戦わずとも争いの抑止力になるでしょう。」
神さまは少し考え話しました
「そうですね、わかりました。私の正体を明かし、考えも話したうえで力を貸してくれるのはとてもうれしいです。貴方に名前はありますか?」
「いえ。世間一般には獄炎竜と呼ばれてはいますが。」
「では僕に名前を付けさせてください。貴方の名前は『紅炎』です。」
すると獄炎竜……紅炎は薄く金色に光りました
紅炎はこの出会いに感謝しました
同時に世界を守らなくてはならない使命も自覚しました
紅炎にはハッキリと感じることができました
自らが『神の使途』の称号を得たことを
「これからこの世界が破滅を迎えることの無いよう尽力いたします。」
「ありがとう。」
神さまは新たな仲間ができたことを喜びましたが、あることを思い出して震えてしまいました
「ライアに神の使途を増やし過ぎるなって怒られたんだった。」
これを聞いた紅炎は驚きましたが、その後で大笑いしました
「タイヨー様に意見を言うものがいるとは驚きました。私もタイヨー様の仲間と会ってみたいですぞ。」




