91 神さまを呼ぶ気配
冷えたビールは大好評
温泉街ですから当然です
そんな和やかさの裏で神さまを呼ぶ不穏な気配
91話 「王国南部編2話目」はじまります
冷えたビールは大好評でした
「これは独占契約を結びたいくらいだよ。」
店主さんはウハウハ顔で言います
「嬉しい提案だけど、まずは冷却容器を用意しないとだよね。」
ジロさんが言います
店主さんは少し考えました
「ビール専用の冷却木樽みたいなのはないのかい?樽自体が冷却素材で注ぎ口が付いていて。」
「それは面白そうだね。今度北部地方に行った時に作れそうか聞いてみるよ。」
ジロさんが店主さんと話している間、神さまはある気配を感じていました
神さまを呼ぶ気配
それは火山の方向から
何かが呼ぶ気配
神さまはジロさんに小声で話します
「ジロさん。どうやら僕はこの地の何者かに呼ばれているようです。」
ジロさんは驚きました
「え!?何か聞こえるの?」
「そうですね……聞こえると言っていいでしょう。火山の方に来いと言っていますね。」
神さまは少し考えて言いました
「ジロさんはここで待っていてください。恐らく危険な状況になるでしょう。ここも危険になったら指輪の力で帰還していてください。」
ジロさんは驚きました
今まで神さまがここまでの警戒を示したことが無かったからです
「確かに私が一緒に行ったら邪魔になってしまうだろうけど……タイヨー君は大丈夫かい?」
心配顔のジロさん
「僕ですか?僕は瞬間移動ができるんですよ?何とでもなりますよ。」
そう言って神さまは笑いました
神さまは火山に向かって歩いています
あまり木の生えていない道です
道と言うほど整備されてはいませんが
更にしばらく歩くと周囲に転がる岩の陰から大きなトカゲが出てきました
2メートル程の大きさのトカゲが20匹、神さまを囲うように現れました
体中のウロコの隙間から炎が漏れ出しています
口からも炎が漏れています
火魔法を使う魔獣のサラマンダーです
サラマンダーは神さまを警戒しながら周囲を固めます
「君たちは僕と戦いたいのかい?」
そう言って神さまは威圧するとサラマンダー達も殺気を高めてきました
そして一斉に神さま目掛けて炎のブレスを吐きました
周囲から20匹のサラマンダーによる一斉のブレス攻撃
この強烈な炎の中では大型の魔獣でも瞬く間に炭になってしまうでしょう
しかし神さまは炎に苦しむどころか笑っています
「中々の炎ですね。でもこの程度では僕には効きませんよ。『雨』」
神さまが呟くと周囲に突然大雨が降り出しました
サラマンダーは身体からジュウジュウと音を出し煙を出しています
そして苦しそうに逃げていきました
「なるほど……深緑の森と北部の海で暴れていると言うだけのことはあるようだな。」
突然黒い炎が現れました
現れた黒い炎は徐々に大きくなり、人の形に変化したと思ったらそう言ってきました
「いえいえ、それは誤解ですよ。暴れてなどいませんよ。」
神さまが答えているうちに、人型の黒い炎は黒い鎧のような体になりました
「貴方が僕を呼んだ火の精霊イフリート様ですね。はじめまして。タイヨーと言います。」
イフリート様と呼ばれた精霊様は神さまを見て言いました
「俺を見ても驚きも恐怖もしないか。なるほど、大した人間だな。ところでタイヨーと言ったか。お前は人間なのか?先程の水魔法に魔力を感じなかったが……そしてお前に生命力を感じないのだが……」
「いえいえ。見ての通り。ただの人間の子供ですよ。」
「そうなのか。まぁそれならそれでも構わない。俺は人間が好きではないからな。それだけで殺すには充分な理由だ。くらえ『業火』!」
イフリートがそう言うと神さまは黒い炎に包まれました
「岩も蒸発させる炎だ。跡形もなく消えるだろう。」
そう言ったイフリートの表情はみるみる凍りついていきます
「なぜだ……なぜ無事などころか……笑ってる。」
神さまは黒い炎に包まれながら笑っていました
「さすがは火の精霊様。サラマンダーの炎とは威力が違いますね。でも僕を殺そうと思ったら全然足りませんよ。『絶対零度』」
神さまが黒い炎の中で呟いた途端、黒い炎はその形のまま凍りつきました
そしてイフリート様も氷の像と化しました
一瞬です
ほんの一瞬の間に炎もイフリート様も周囲の景色も氷の世界になってしまいました
「ここまでやればそろそろ現れるかなー」
神さまがそう思っていたら突然足元の地面が崩れ落ちました
崩れた地面の下には巨大な空間が広がっていました
氷像になったイフリート様も一緒に落ちていきました
神さまは重力操作でユックリと下に降りていきます
イフリート様はそのまま落ちていきました
そして空間のそこにある巨大なマグマの湖に落ちていきました
しばらくするとマグマの湖が盛り上がりました
その上には氷が溶けて元通りになったイフリート様が倒れています
マグマの湖から現れたのは巨大なドラゴンの頭でした
ドラゴンは倒れているイフリート様を岩の陰に寝かせると神さまに視線を向けました
「私はこの辺りの火山を支配している獄炎竜と言うものだ。イフリートを容易く退けたお前は何者だ?」
「はじめまして。僕は深緑の精霊ドライアド様の護衛で弟子のタイヨーと言います」




