90 旅はやっぱり温泉
南部を目指す2人
そして着いたのは温泉街
初のお風呂回は男ふたりです(笑)
90話 ここから「王国南部編」がはじまります
神さまとジロさんは馬車をガタゴトと王国を南下しています
王国と南部地方を結ぶ街道は整備されておりますし、また神さまから出ている気配のせいで魔獣の襲撃はいっさいありません
とても快適で暇な旅路です
暇ゆえにジロさんが話しかけてきました
「今回王都に寄ったときは王女さまに会えなくて残念そうだったねぇ〜」
冷やかしでした
「王女さまですよ?そもそも、そう滅多に会えるようなお人ではないんじゃないですか?」
神さまが答えると
「うーん、まぁそうなんだけどね。何ていうかさ、タイヨー君と王女さまって端から見ても良い感じなんだよね~」
ジロさんがニヤニヤしてます
「そうなんですか?確かに他の人よりも話していて楽しいとは思うのですが。」
「タイヨー君の周りにいる女性達は、何ていうか異常なほど美女揃いでしょ?それでも彼女達と話している時と王女さまと話している時とではタイヨー君の表情や雰囲気が全然違うからね。」
ジロさんが思い出しながら言います
神さまは王女さまの顔を思い浮かべます
神さまと話す時、色々な表情を見せる王女さま
笑顔になったり落ち込んだり赤面したり……
考えているとジロさんが言いました
「タイヨー君はまだ森を出たばかり。これからまだ色々な人と会うのだろうけど、タイヨー君が王女さまの事をほかの人と違うと思うのなら、王女さまもタイヨー君の事をほかの人と違うと思っているかもしれないよ。きっと大事にしたほうが良い相手だよ。」
「そうですね。そうします。」
神さまはまだ人間の感情についてわからない事が多々あります
でも王女さまの笑顔は守りたいと思いました
そんな事をやり取りしながら進んでいると、やがて南部の街が見えてきました
南部の街はとにかくあちらこちらか煙が出ています
「ジロさん、なんだかいたるところから煙が出ていますが……火事ではないですよね?」
神さまが見た景色のままを聞きます
「火事ではなくいつもの景色だよ。」
ジロさんが笑いながら答えます
「火山の煙、鍛冶場の煙、温泉宿の湯けむり……と、いろいろな煙が出てるよね。で、今日はまず温泉宿の街に行くよ。」
そう言って馬車を温泉街に向けて走らせました
温泉街に着いた神さまとジロさん
ここは他の街とは明らかに違います
まず建物が温泉宿と飲食店とお土産屋しか見当たりません
神さまはジロさんに聞きます
「ずいぶんと変わった街ですね。宿屋がたくさんあります。逆に民家が見当たりませんね。商店街も見当たりません。」
ジロさんは馬車を進めながら答えます
「そうだね。ここに来る人は、この温泉街で温泉に浸かり、美味しいものを食べ、お土産を買って帰ることが目的の人が多いからね。言ってみればここが目的地なんだよ。だから住んでいる人も旅行客相手の仕事を住み込みで働いている人がほとんどだよ。」
なるほど、確かに他とは違う街です
そうしているうちにジロさん御用達の温泉宿に着きました
「こんにちはー」
ジロさんが宿屋の玄関で言うと奥から声がしました
「いらっしゃい……ってジロさんじゃないですか。久しぶりですねー。今日はご家族と一緒じゃないんですね。」
どうやら宿屋の店主のようです
「お久しぶりです。じつは最近弟子をとりましてね。今は彼と一緒に旅しているんですよ。」
「はじめまして。タイヨーと言います。よろしくお願いします。」
神さまはペコリとお辞儀をしました
「可愛らしい子だね。こちらこそよろしくね。」
宿屋の店主は笑顔で応えました
宿で場所を預け荷物を解き神さまとジロさんは早速とばかりに温泉に行きました
温泉は独特なニオイがします
「変わったニオイですね。」
神さまはジロさんに言いました
「きっと温泉の成分のニオイだね。硫黄とか言ってたかな?」
ジロさんは詳しい事は分からないようです
洗い場で身体を洗いお湯に浸かりました
「ふーーーたまらん。気持ちいい。」
ジロさん、気持ち良さそうです
「疲れが取れれねぇ〜」
と言っていますが神様には分かりません
疲れない身体
マグマの中でも平気な身体
温泉の良さが分からないまさかの弊害
神さまはちょっと残念でしたが、お湯にドップリと浸かると言うのはなんとも心地良いのは確かでした
「はい。まったく気持ちいいですね〜」
と神さまも言いました
まずは温泉を堪能した2人
早速商売の話です
温泉街では住民相手ではなく温泉宿や飲食店相手に商売をするようです
「店主さん。今回は試行的にですが、面白い物を持ってきたんですよ。」
ジロさんが店主さんと話します
「お?何かな?早速見せてくださいよ。」
店主さんも食いつきました
「じつはここに来る前には北部地方に行っていたんですよ。」
「これはまた長距離を移動してきたんだね〜」
「タイヨー君と見聞を広げながらね。で、北部と言えば冷却容器。これにね、王都で買ったビールを入れてきたんだよ。ちょっと試飲してみてよ。」
ジロさんは瓶に入ったビールをコップに注ぎました
ビールは良い感じに冷えています
店主さんはゴクリと喉を鳴らすとコップのビールを飲みました
とても美味しそうに一気に
「プハーー!これはたまらん!もう一杯!」
ジロさんは苦笑いしながら言いました
「だから試飲ですって。」
店主も思わず苦笑い
「いやーすまない。これは最高だよ。ここでは冷却容器もビールもあまり流通していないからね。これは売れるよ〜と言うか、とりあえず全部飼うよ。」
店主さん即決でした
その夜、宿屋の食堂では限定ビールとして販売したところ大盛況だったそうです
なんたって温泉上がりのビールですからね




