84 戦いは終わって……
神さまの無茶なやり方で火山活動は収まりました
これでセイレーン達と漁師との争いも終わるでしょう
ではちゃんと説明をしなくてはいけませんね
84話 王国北部編7話目 はじまります
神さまとユキは海中を観察します
海底火山の火口を封鎖したことで噴煙の噴出が止まりました
徐々に海水温も下がってきました
ユキは言います
「この分ならすぐに魚達もここに帰ってきて元通りの豊かな海に戻りますわ。」
「そうなればセイレーン達と漁師たちの関係も元通りになりそうだね。」
神さまがニコニコしながらユキに聞きます
ユキも柔らかい笑みで答えます
「はい。セイレーン達には私とタイヨー様が戦ったら、その影響で地震が発生し海底火山の活動が収まった……とでも説明しておきましょう。」
神さまはちょっと焦ります
「あまり僕が目立つのは良くないんだけど?」
ユキは笑いながら言います
「ウンディーネとセイレーンは貴方と戦って実力も理解されていると思うのですが?」
「あぁ!確かにそうです。」
神さまは項垂れました
「ともかくタイヨー様と私が共に地上に戻れば、戦いは終わり事態も好転したことを理解するでしょう。」
ユキの言葉に神さまも同意し2人は陸地へと戻るのでした
陸地に戻ったユキはウンディーネの前に立ちました
「この魔力、貴方様は白氷竜さまですね。なぜ人間のような姿に?」
ウンディーネは当然の疑問をユキに投げかけます
しかしユキは、それについては後ほど……と言って、先にセイレーン達に漁師と戦う必要がなくなった事を伝えるようウンディーネに言いました
ウンディーネはユキに聞いた海底火山の活動が、地震によって止まったことをセイレーン達に伝えました
「魚を求めて争わなくて済むのね。」
「人間たちと争わなくて良かったよ。」
「やっぱり傷つくのは嫌だものねぇ。」
一様に戦いを回避できたことに安堵しています
種族は違えど人族同士
不要な争いはしたくないようです
神さまもそれでいいと思っています
「ところで……」
ウンディーネが神さまに聞きました
「いったい貴方は何者ですか?私の攻撃どころか先ほどの話では白氷竜さまとも対等に渡り合うとか。セイレーン達の歌も、海深くに引きずり込んでも、何事もないように平然としている人間なんておかし過ぎますわ。」
「それが少し違うのです。」
ユキが話します
「貴方にだけは海の底の出来事を正しく話さなくてはなりません。今から話すことはすべて事実です。そして今から聞くことは絶対に他言してはなりません。これが守れないのであれば、私はこのタイヨー様と一緒にこの海を離れなければなりません。」
ウンディーネが驚愕の表情で聞き返します
「それはどういうことですか!?」
静かにユキは答えます
「それ程大事で外に出してはいけない話。世界の命運がかかっていると言っても良いでしょう。」
ウンディーネは息を吞みました
その様子をみてユキは話し始めました
「まず、海底で私とタイヨー様が戦ったのは事実ですが、結果は私の完敗です。手も足も出ませんでしたわ。その上でタイヨー様は今の海の現状を聞いて下さり、海底火山の活動を止めてくださいました。火口からマグマの中に入って行って、直接マグマの噴出口を塞いでしまったのです。そして何食わぬ顔をして火口から出てこられました。」
「……そんなことが……いや、しかしこの少年が人間とは到底思えないのも事実……」
そう言うウンディーネに、ユキはさらに付け加えます
「私達の数々の非礼にも何も言わず、この海を救っていただいたご恩に対して、私はタイヨー様の配下となりました。そしてユキという名前を頂きました。その際に私は能力を授かりました。その一つが人化です。」
一呼吸おいてユキは続けました
「今の私は……神の使途ユキです。」
ウンディーネは膝をつき神さまに頭を下げました
神の使途となった白氷竜さま
それはこの少年の配下になり名前を頂いたから
すなわちこの少年は……
「僕はただの人間の少年、タイヨーですよ。そういう事にしておいてください。」
神さまはにこやかに言いました
が……
ウンディーネは引き下がりませんでした
「それで納得すると思いますか?」
「え?」
神さまは意表を突かれました
「え?」
ユキも意表を突かれました
ウンディーネは言います
「白氷竜さまがユキ様と名前を頂き神の使途になられた……これは理解できます。しかしタイヨー様はあのドライアドの弟子などと言いましたよね?聞かしてもらえませんか?彼女の名前を。」
神さまはオドオドしながら答えました
「……ライアです……。」
「ほぅ。ライアですか。ではライアさんは深緑竜さまと深緑の森を守っていますわよね。深緑竜さまのお名前は何というのですか?」
「……ゲイルです……。」
「深緑の森を守る竜と精霊は神の使途。北の海を守る竜は神の使途。北の海を守る精霊にも『もちろん』お名前を頂けますよね?」
神さまは震えながら答えました
「……もちろん……です。」
ウンディーネは満面の笑みで言いました
「ではタイヨー様。よろしくお願いします。」
神さまは思わず言いました
「いいの?それは僕の配下になるってことだよ?」
ウンディーネは微笑みながら言いました
「タイヨー様には私も完敗でした。是非配下にしていただきたくお願いいたします。」
神さまは頭を抱えましたが、やがて力なく
「わかりました……」
と答えました
「では貴方の名前は……そうですね……ディーネ……で良いかな?」
するとウンディーネの身体が金色に輝きました
「今から私はタイヨー様の忠実なる配下ディーネです。よろしくお願いいたします。」
ディーネはそういって微笑みました
神さまは、はぁ~とため息をつきました
ユキはそれを見て苦笑いをしていました




