81 セイレーンに会いに行く
漁師さんにセイレーン達の居場所を聞いた神さま
なんとか穏便に話し合いをしたいところですが
相手も同じ思いとは限りませんよね
81話 王国北部編4話目 はじまります
神さまは漁師さんに教えてもらった岩場に向かいました
歩いて行くのは困難な場所のため飛んで行くことにしました
しばらく海岸線を進んでいくと、そこには岩に腰掛けている女性たち……女性?
女性なのですが脚が無く、それは代わりに魚の尾ビレのような形になっていました
海の生活に適した姿に感心しながら神さまは近づいていきました
神さまに気が付いたセイレーン達は一応に驚きました
「人間が……空を飛んで来ましたわ?」
「いったい何物でしょう?」
「興味深いですわね。」
神さまはセイレーン達の近くの岩に降り立ち、話しかけました
「こんにちは。僕はタイヨーと言います。はじめまして。貴方たちはセイレーンさんですか?」
「そうだとしたら、どうだと言うのです?タイヨーさんはこの辺りの人間では無いようですが、何の用で私達セイレーン族の前に現れたのです?」
1人のセイレーンさんが聞いてきました
「じつは魚の事でお伺いしたいことがありまして……」
神さまがそう言うと、セイレーン達の雰囲気が静かではありますが敵意あるものに変わりました
「……なるほど。漁師共の依頼でも受けた狩人か殺し屋か……私達を倒しに来たのですね……」
「いえいえ!そんな物騒な者ではないですよ!」
と神さまが反論すると、どこからともなく歌声が聞こえてきました
周囲にいるセイレーン達が歌い始めたようです
とても美しく優しく穏やかな歌声……
セイレーンさんが静かに語ります
「……これだけの人数……これだけの至近距離……眠りにつけば、もはや2度と目を覚まさぬ深い眠りに落ちるでしょう……私達にここまで接近した脅威……見逃すわけにはいきません……」
そう言うと更に歌声は響きます
眠りに誘うセイレーンの歌
それはとても綺麗な歌声で、神さまはウットリしてしまいました
「とても素敵な歌です。とても綺麗な歌声です。」
神さまは歌に聴き惚れています
おそらく人間では再現できないでしょう
魔力が乗せられた、眠りに誘う歌声はとても美しいものでした
しかし神さまには効きません
それはそうですよね
そもそも神さまは眠らないのですから
そんな神さまはセイレーン達の歌を絶賛しますが、セイレーン達はただ驚くばかりです
「な、なぜ眠らない!?」
セイレーンの歌声を聞いて眠らない人間はいません
自分達の攻撃が効かないと知ったセイレーン達は急いで海中に潜りました
神さまは慌てました
「あ!待って!話を聞いて!」
しかし海の中に消えたセイレーンからの応答はありませんでした
どうしようかと思案していると、海中からセイレーン達が再び現れました
そして彼女達と共に美しい女性が現れました
女性は神さまに問います
「セイレーンの歌声で眠らない人間だそうですね?なるほど……そもそも人間では無いようですね。お前はいったい何者ですか?」
神さまは答えます
「僕はタイヨーと言います。深緑の森で、森の管理者さまの弟子をしています。貴方様はひょっとしてウンディーネ様でしょうか?」
ウンディーネさんは少し眉を動かし
「……森の管理者?というとドライアドの事でしょうか。彼女の弟子となると私も本気で挑まないと危険なようですね。セイレーン達よ、離れていなさい。」
彼女がそう言うと、セイレーン達が離れるように泳いでいきます
「そなたの言う通り私はウンディーネ。この北の海の管理者でありセイレーン達を守護する者です。セイレーン達を害する者は、たとえ森の管理者の配下と言えど許すことはできません。ここで死んでもらいます。『水の刃』」
ウンディーネがそう言うと、大きな無数の水の刃が神さまに襲いかかりました
「タイヨーと申すもの。悪く思うな。」
ウンディーネの放った水の刃は全て神さまにに直撃しました
……しかし……
そこには水浸しになり、少し困った顔の少年が立ってました
「びしょ濡れになってしまいました。」
まるで友達と水遊びをして、びしょ濡れになってしまったかのように神さまは言いました
ウンディーネは驚きました
「『水の刃』でまったくの無傷だと!?ならばこれでどうだ!『氷の矢』」
すると数え切れないほどの氷で出来た矢が現れ、物凄いスピードで神さまに放たれました
神さまはため息をついて言いました
「ただ話が聞きたいだけなのに……『氷の壁』」
すると神さまを覆うように綺麗な氷で出来た壁が出来ました
ウンディーネは残念な顔をして言いました
「そんな薄い壁……しかも氷で出来た壁で私の最上級の威力を誇る氷の矢を防げると思ったのですか……?」
氷で出来た矢が神さまに直撃し、辺りには氷の破片が舞い上がってキラキラと美しく散りばめられました
輝く霧のように舞い上がった氷の細かい破片が落ち着くと、そこには氷の壁が何もなかったかのように神さまを守っていました
「そ!そんな!馬鹿な!お前はいったい何者ですか!!」
驚愕し、その場に座り込んでしまったウンディーネさん
神さまは居心地悪そうな表情でその様子を見ていると、今度は海の底から響くような威圧がこもった声がしました
「まったくです。お前は何者ですか?タイヨーと名乗る少年よ。」
声がしたかと思うと何か白く長いものが海中から伸びてきました
それはまさに白く美しいドラゴンの長い首でした
「白氷竜さまですね。」
神さまは呟きました




