表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/112

71 懺悔と救い

王女編 6話中の5話目です

突然すみません

この5話目を含む全6話が私的に気に入ったので勝手ながら「王女編」と名付けました

ここを見つけてくれた貴方、是非とも王女編の6話だけでも読んでいただけたら幸いです


71話 はじまります

王城の会議室でちょっと不機嫌な神さまと、それを見て苦笑いのジロさん


「まぁそう不貞腐れないでくれ。じつはタイヨー君に一度会ってもらいたい人がいるのだ。人助けだと思って少し付き合ってくれ。もし人違いだったら私が一緒に食事に付き合うぞ。」


そう言って笑うノルディカさん

しばらく会議室でノルディカさんと雑談をしていると入り口のドアがノックされました


そこに立つのはスミス王とひとりの少女

少女は年の頃は神さまの見た目と同じくらいでしょうか、10代中頃にみえます


ただその少女は顔は泣き疲れた様子

スミス王に抱きかかえるように、なんとか立ててる状態でした


スミス王は部屋に入ると


「客人、待たせてすまなかった。」


と言うと、こちらを見て驚いていました


「君はタイヨー君。そしてジロ殿ではないか。ノルディカよ、まさか彼達が?」


「はい。おそらくは。王女に確認していただかないと確かなことは言えませんが、彼等ならすべてに合点がいきますし、何より王女が救われるかと。」


ノルディカさんがそう言って今にも倒れそうな少女のところに行き、日頃の彼女からは想像できない程の優しい声で話しかけました


「ロキシー王女。貴方を助けてくれたのはこの方々ではないですか?」


ノルディカさんに言われた少女は疲れ切った顔をあげ、力も光も消えた目をこちらに向けました


少女は泣き腫らして赤くなった目を大きく見広げました

そしてその目には少しずつ光が戻り、瞬く間に涙が溢れ出しました


「……あなたは……あなたですね……無事だった……私はあなたに謝罪を……よかった……ごめんなさい……本当に……」


ロキシー王女と呼ばれた少女はそこまで言うと意識を失ってしまいました




どれほど時間が経ったでしょうか……

私は寝室で目を覚ましました


「私は……そう……ですね……夢を見ていたのですね……何という都合のよい夢を……」


私は自嘲気味に笑うと、ふと声が聞こえました


「お目覚めになられましたか?王女さま。」


とても心地のよい少年にも少女にも聞こえる優しい声


そこにはあの時見た、たくさんの狼の魔獣に睨まれていた少年が、笑顔でこちらを見ていました


私が囮にして見捨てた少年……

生きていました

確かに生きています


私は再び涙を流し嗚咽しながら彼に謝りました


「ごめんなさい!本当にごめんなさい!私は貴方を囮にして逃げ出しました!」


飛び上がりそうな勢いで謝罪をする私をノルディカさんは優しく抱きかかえました


「王女、落ち着いてください。見ての通り彼は元気ですよ。謝罪をするのなら落ち着いてからするべきですよ。」


私は少し落ち着き、再び布団に横に寝かされました


「私は寝ているわけには……」


私がそう言おうとすると、少年も楽にしてくださいと言いました


「王女さま。落ち着いてください。僕は元気ですし怪我もしていませんよ。それに魔獣の敵意が僕に向くように仕向けたのは僕自身ですから。無事に馬車が逃げることができた事を知って僕も安堵しています。本当に無事で良かったです、王女さま。」


とニコニコしながら少年とも少女とも聞き取れる声で優しく言いました


私は顔が熱くなるのを感じました


ノルディカさんが話します


「王女は視察に行ってましたからご存じないのも当然ですね。王女が魔獣に襲われていた場所に少年が現れてくれたのはこの上ない幸運でした。彼は森の管理者であられる精霊様の護衛で弟子をしているタイヨー君です。かなり強いですよ。」


そう言ってタイヨー様に怖い笑顔を向けました

ノルディカさんはとても美人なのに残念な戦闘狂です


ただそんな凄い方が偶然通りかかったというのは本当に私は運が良かったのでしょう。


……通りかかった?


「失礼ですがタイヨー様はなぜ街道に馬車でおられたのですか?精霊様の護衛で弟子との事ですが。」


その事ですか……といいタイヨー様は話します


「僕は普段は精霊様の近くで勉強しているのですが、精霊様の勧めもあって時々行商人の方に同行して人間社会の勉強をしているのです。僕はずっと森で生活しているので精霊様が言うんですよ。常識知らずとか無知だとか。いくら師匠だからってひどいですよねー」


「ウフフ。そうですわね。ひどいですね。」


私は自然と笑いました


「そして怒るときは目を三角にして怒るんですよ。とっても怖いんです。」


震える振りをしておどけて言うタイヨー様に、私はさらに笑ってしまいました


ノルディカさんが私を見て驚いています


私自身も驚いています


こんな風に年相応の笑い方をしたのは何時振りでしょうか


気付いた頃には私は王族である事を自覚していました

王族の一員であることを常に自分に言い聞かせてきました


たった今、ほんの少し会話を交わしただけです

私は何処かに置き忘れてきた時間を取り戻した気分になりました


だからでしょうか


タイヨー様は私が少し元気になった事を確認して安心すると、そろそろ退室する旨をノルディカさんに伝えました

その瞬間思わず私は言ってしまいました


「タイヨー様、またお会い出来ますでしょうか?」


と再会を願う言葉が口から出てしまいました


「王城ですからね、なかなか僕から会いに来るのは難しいでしょうが、きっとお会いできる機会もあるでしょう。その時は元気な姿でもっとたくさんお話しましょう。」


優しいタイヨー様の言葉に胸が熱くなるのがわかりました

そして退室するタイヨー様にノルディカさんが


「タイヨー君は金の身分証があるだろ。あれがあればかなり自由に王城に入れるぞ。」


「え?そうなの?初めて聞いたよ?」


と話しているのが聞こえました


静かになった寝室で、私は自分に芽生えた感情と向き合いました


「これは憧れでしょうか。いえ……違いますね。好きになってしまったようです。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ