69 傷だらけの帰還
王女編 6話中の3話目です
突然すみません
この3話目を含む全6話が私的に気に入ったので勝手ながら「王女編」と名付けました
ここを見つけてくれた貴方、是非とも王女編の6話だけでも読んでいただけたら幸いです
69話 はじまります
王都に6人の疲れた顔をした騎兵と傷だらけの馬車が到着しました
王都の門に立つ門兵は驚いて別の兵士に声を掛け応援を呼ぶよう依頼し、自らは馬車に向かいました
「その馬車は王家の馬車とお見受けする。いったい何があったのですか……それよりも要人はご無事でしょうか!?」
すると騎兵は力なく答えました
「馬車の要人はロキシー第2王女である。魔獣どもに襲撃を受けたが王女は無事だ。だがかなりお疲れの様子。いち早く王城へお戻りいただきたい。」
すると門兵は了解の意を示し兵士を集めました
「王城まで道を開けよ!馬車を先導せよ!」
兵士はキビキビと行動しました
馬車は王城に到着しました
中にいるのは王女なので、女性の騎士であるノルディカ副騎士団長が出迎えにきました
「ロキシー王女。ご無事で何よりです。」
ノルディカは馬車の扉を開けました
そこには王女の顔ではなく、ただ泣きじゃくる少女がいました
侍女も王女の涙を拭いながらも涙を流していました
普段の凛とした姿の王女とは思えない様子にノルディカは狼狽しました
「いったい……何があった……」
ノルディカに気が付いた王女は、彼女に抱きつき泣きながら懺悔のように言いました
「私は……私は……少年を囮に……少年を見殺しに……私は王女でありながら最低の行動を……」
「王女様のせいではありません!どうしようもなかったのです!」
侍女は取り乱しながらも王女を擁護します
修羅場だ……
そう思いながらもノルディカは王女の肩を抱き王城の中に連れていきました
王女を城内で待機していた侍女達に引き継ぎ、ノルディカは同行していた護衛に話を聞くことにしました
「王女のあの狼狽ぶり、只事ではないな。いったい何があったのだ。」
護衛は状況を話しました
「視察を無事終え王都に向かっている途中でした。森の街道を進んでいるところで魔獣の群れの襲撃を受けました。二手に分かれ一方はその場で魔獣を食い止め、一方は撤退する馬車の護衛を。すると魔獣が連携しており別の魔獣の群れが襲撃してきました。」
ノルディカはゴクリと喉を鳴らしました
「なんとか踏み止まっていたのですが、最初襲撃してきた魔獣が護衛を突破し後ろから襲ってきました。その魔獣が馬車を襲い始めた時です。行商人と思われる男性と少年らしき者が現れまして。どういう訳か全ての魔獣どもがその少年に敵意を向けたのです。魔獣が行商人に敵意を向けている間に私たちは逃げました。行商人を囮にして……。騎士にあるまじき行動でした……。」
護衛は力なく項垂れました
「その行商人たちがどうなったかはわからないか?なにか特徴とかはなかったか?」
ノルディカは何か手掛かりがあればと護衛に聞きます
「あの魔獣の数です。恐らく……だめでしょう……少年……少女にも見えるような中性的な子供でした。あのような状況でもニコニコとしていましたが……」
護衛は悔しそうな表情です
が、ノルディカは何か引っかかりました
「……名前などは言ってなかったか?」
「いえ、そこまでは……」
「そうか……すまない。今のは気にしないでくれ。まずはゆっくり休んでくれ。ご苦労だった。」
ノルディカはその場を後にします
「……まさかな。だが彼であったなら魔獣ごとき敵でもないだろう。もしもそうであったのなら王女の心も晴れるのだろうが……」
ノルディカは報告のため王のもとに向かうのでした
その頃、王都の入り口では先程の王女の帰還とはまた別の騒ぎが起きていました
門兵が驚きながら馬車の御者台にいる少年に話しかけました
「すごい数の魔獣だね。しかも凍らして運んでくるとは前代未聞だよ。氷魔法が使えるのかい?」
少年はニコニコと答えます
「多少ですけどね。こうすれば鮮度が保てるかなーって。」
「君は珍しい氷魔法を面白いことに使うねぇ。あ、身分証はあるかな?」
少年はハイハイと言いながら首にかけたプレートを見せてきました
「これでいいですか?」
門兵は身分証と少年の顔を見比べて驚きながら言いました
「王家発行の身分証をお持ちとは気が付きませんでした。ようこそタイヨー殿。」
これには少年・・・神さまの方が驚いてしまいました
「え?これは確かにこの前、王様からもらったものだけど……ひょっとして凄いものなの?」
門兵は少し考えてから話しました
「この身分証は、王家に何か功績を認められた者のみがいただくことができる名誉あるものです。大事にしてくださいね。」
「そうだったんですね。教えてくれてありがとうございます。」
神さまはお礼を言って王都の商店街に馬車を向かわせました
王城の食堂にて……
ノルディカは王への説明と落ち込んでいる王女の話し相手で、外に夕食を食べに行く時間が無くなってしまいました
「あまり王城で食事する気はないのだが……」
ノルディカが王城の食堂に行くと、他の兵士が委縮してしまうので普段は外食にしているのです
そんなことを考えつつ食堂に入り、食事を受け取って空いている席に着くと、業務を終えた兵士の話声が聞こえてきました
「ん?あいつは確か王女が帰ってきたときに門兵をしていた者だな。」
そう思っていると気になる……かなり気になる会話が聞こえてきました
「いや、凄かったんだって。馬車いっぱいに巨大な狼の魔獣が山積みだぞ。しかも氷魔法で氷漬けにして。魔獣もびっくりだけどそれだけの氷魔法が使えるなら魔法師団でもやっていけるだろうにねぇー」
「……おまえ……その話、詳しく聞かせてもらえるか?」
そこには魔獣の眼光の副騎士団長様
兵士は気を失いそうなのを耐えて、はい……と返事をするので精一杯でした




