68 神さまと魔獣の群れ
王女編 6話中の2話目です
突然すみません
この2話目を含む全6話が私的に気に入ったので勝手ながら「王女編」と名付けました
ここを見つけてくれた貴方、是非とも王女編の6話だけでも読んでいただけたら幸いです
68話 はじまります
少し前……
神さまとジロさんは、王都まで買い出しの旅……おつかい……に向かっていました
森の近くの街道を進む馬車の手綱を握るのは神さま
今日は馬車の操作をジロさんに教えてもらってもいます
「タイヨー君、なかなか上手いねー。初めてとは思えない手綱さばきだよ。と言うか、馬がものすごく言う事を聞いているよね?」
ジロさんはやや不審顔
「いやー初めてですよ。よく言う事を聞く賢い馬ですねー。」
実際、言う事を聞いています
それはもうたいへん忠実に
なにしろこの馬、出発前にゲイルに重々と言われていましたから
「タイヨー様の言う事を聞くように。」
……と
そんな事を呑気に話していると、前方が何やら騒がしいようです
「何だろうね〜」
神さまは進んでいくと、どうやら大きな馬車がこれまた大きな狼に襲われているようです
ジロさんは狼を見て驚いていました
「かなり大きな狼の魔獣ですよ。しかも全部が大きいですね。」
神さまがその場に止まってしばらく様子を見ていると、狼の魔獣は一斉にこちらを向きました
神さまは特に何もしていませんが、神さまの放つ気配に魔獣達は敏感に反応します
なのでここまでの道のりでは、魔獣は息を潜めて神さまを警戒し、自ら襲ってくることはありませんでした
しかし戦闘で気が立っている魔獣には、神さまの放つ気配はまさに威圧でした
瞬時に全ての魔獣が神さまを警戒し始めました
魔獣の包囲から解放された大型の馬車は、静かに移動をはじめました
神さまは微笑み、それでいい……と頷きました
「どうやら無事に逃げられたようですね。」
そして魔獣達を睨みます
「お前達は僕と戦うつもりだね。なら僕も容赦しないよ。『気圧操作』」
神さまは魔獣達のいる場所の気圧を一気に下げました
下げた……などと生易しいものではありません
その辺りの空気をほとんど無くしてしまったのです
突然息苦しくなった魔獣達は酸欠となり、その場に倒れていきました
「ジロさん、この魔獣達は売り物になりますか?一応無傷で倒してみたんですが。」
ジロさんは苦笑いです
「相変わらずタイヨー君のやる事はよくわからないよ。今のはなんだい?」
神さまは答えます
「人間もだけど生き物は呼吸するでしょ?スーハースーハーって。その呼吸する空気を、あの魔獣のいた辺りだけほとんど無くしちゃったんですよ。」
「もう意味わかんないね。」
ジロさんは笑うしかありませんでした
そして魔獣を見ます
「この魔獣は主に食肉用として取引されているかな。無傷だし毛皮も売れそうだね。でもこのまま持っていくと王都につく前に痛んじゃうかなぁ。」
「じゃあ凍らせちゃう?」
神さま、とんでもない事を簡単に言います
「え?そんな事できるの?」
ジロさんは不思議そうに神さまを見ます
「もちろんですよ。『冷凍』」
あっという間にカチコチに凍った魔獣
「これは流通の常識を覆しちゃうよ。」
などと言いながら凍った魔獣を積めるだけ馬車に積みました
「氷魔法で運ぶ人はいないのですか?」
神さまは聞きます
「氷魔法は水魔法の上位魔法だからね。使える人が少ないんだよ。希少な氷魔法の使い手は行商なんかやらなくても魔法師団とか引く手数多なんだよ。魔物素材を使った低温を保つ容器もあるにはあるけど、あまり大きなものは無いからね。」
ジロさんは呆れ顔で答えました
なるほど
他にいくらでも稼ぎ口がある訳ですね
「でも僕は行商の為にこの力を使います!」
神さまは拳を握りしめて言いました
「じゃあ魚でも仕入れましょうかー」
ジロさんもいろいろ慣れてきたようです
しばらく進むと、またもや魔獣の死体
そして今度は人の死体もありました
魔獣と戦って残念ながら敗れた兵士のようです
「えーと。こういう場合はどうするのですか?」
神さまは聞きます
「いやぁ……なかなかこういう場面には遭遇しないんだけど……例えば旅の途中で仲間が不運にもなくなってしまった場合は、その場近くに墓を作り埋葬しますね。」
ジロさんは死者に手を合わせながら言います
「わかりました。では穴を4つ掘りましょう。『掘り起こし』」
穴を掘りました
土は空中に浮かんでいます
ジロさんは無言で死者を埋葬しました
神さまは浮いてる土を静かに被せます
そして其々が所持していた剣を墓標代わりに突き刺しました
ジロさんは祈ります
「どうか安らかに……」
神さまも真似して祈ります
「どうか安らかに……」
すると作った墓から小さい光の玉が無数に浮き上がり、それは天空高く昇っていきました
「タイヨー君が祈ったのですから霊は救われたでしょうね。」
ジロさんはいろいろ受け入れてきました




