67 王家の馬車、魔獣の襲撃をうける
王女編 6話中の1話目です
突然すみません
今話から始まる全6話が私的に気に入ったので勝手ながら「王女編」と名付けました
ここを見つけてくれた貴方、是非とも王女編の6話だけでも読んでいただけたら幸いです
67話 はじまります
スコットくんとフラックスちゃんは、今日はゲイルに魔法と体術について遊びながら指導を受けています
フリッチさんは大樹の家を使いやすいようにライアと相談しながら木の机や椅子、棚などを作ってます
フリッチさんはジロさんに言います
「王都に行ったら調味料と野菜の種をお願いね!肉は森で取れるけど野菜は畑を作ってみたいからね!」
フリッチさんは結婚し行商に同行するようになってからというもの、一か所に落ち着いて定住をしたことがないそうです
森の中の大樹の家という、とてもメルヘンな家に定住すると言う事がとても新鮮で楽しいらしく、毎日いそいそと家事をしています
そんな森の生活をドップリと楽しんでいる家族たちを見て、若干の孤独感を味わいながらフリッチさんの注文を聞くのでした
神さまはそんなジロさんに苦笑いをしながら話しました
「とりあえず行商の練習として、王都までジロさんの生活道具を買いに行きませんか?じつは僕も馬車の動かし方を教えてほしいんです。」
ジロさんも同意のようです
「そうだね。王都までの距離なら練習にちょうど良いかもね。旅に足りないものも確認できるし少し仕入れをしておきたいし、なにしろあの金貨も両替しておかないと使い物にならないし。」
その頃……
森の近くの街道を、がっしりした造りの馬車が王都に向かって走っていました
馬車には王家の紋章が掲げられてます
乗っているのはバートン王国第2王女ロキシーです
馬車には護衛の騎馬10騎が付いています
ロキシー王女は地方領主の領地に視察に向かった帰りでした
視察とは言っても平穏なバートン王国
特に問題になるような事はありませんでした
主な目的は15歳になる王女に統治の経験を踏ませることと顔見せでした
なので旅は順調、後は王城に到着すれば終わりでした
……本来はそうだったのですが、森は広がり魔獣たちは強化されました
それはこの街道の近くも同じでした
王女達は既に魔獣の集団に、知らないうちに囲まれつつありました
そしてそれは突然行く手を阻むように現れました
10匹の大きな狼に似た魔獣
この辺りにはそれ程珍しい魔獣ではないのですが、大きさが今までに見られた物よりも一回り以上大きな体躯をしていました
しかも現れた全ての魔獣達が……。
しかし護衛達もこれで恐れをなすような事はありません
冷静に7人はその場で魔獣を威嚇、馬車は来た道を引き返すように退却し、護衛の残り3人はその馬車を守りながら追従します
しかし魔獣達はそれを見越してか、馬車の退却する方向には先程まではいなかったはずの魔獣がさらに5匹、行く手を塞いでいます
王女は馬車の中で身を固くしていました
王都の中で魔獣を目にすることはありません
旅の途中で魔獣と出会うことはあると聞いてはいましたが、それを見越しての10人の騎兵による護衛
普段なら充分な数と言えたでしょう
しかしこのような数多くの、しかも大きな狼型の魔獣が連携して襲ってくることは今までありませんでした
そしてまだ旅の経験が少ない王女
恐れるなと言うのが無理な話です
それでも震えながら、涙を流しながら、しかし声を押し殺していたのは立派と言えるでしょう
しかし事態は悪い方へと進んでいきます
馬車を守るように剣を振り戦う護衛達でしたが、後方から何匹か馬車に襲いかかってきました
後方に残り戦っていた護衛達が伐ち洩らしたか、はたまた全滅してしまったか……
どちらにしても危機的状況です
馬車は装飾よりも頑丈さを重点視して作られています
簡単に壊されることはありませんが、それでもいつまで持つか……
王女を含め全員の表情に絶望が見えてきました
そこに1台の馬車が街道をこちらに向かってやってきました
その馬車は離れたところで止まります
この大きな魔獣の群れに襲われている光景を目の当たりにしたらきっと逃げ出すでしょう
それは当然の判断です
それ程まで絶望的な状況です
しかしその馬車から少年らしき人物が現れると状況が一転します
全ての魔獣達の視線がその少年に向けられたのです
そして魔獣達は……怯えているようでした
怯えながらも少年を威嚇しているようです
結果、王女の乗る馬車には魔獣は一匹もいなくなっていました
護衛は状況を把握し静かに行動に移ります
静かに少年の馬車を背に、王女の馬車は走り出しました
そう……少年に魔獣達の意識が向いているうちに王女達は逃げ出したのです
少年の乗る馬車を囮にしたのです
そしてどうやら王女達は逃げ切りました
とても卑怯な行動でしょう
王女は深く自己嫌悪に陥ります
でも護衛達を責めることはできません
王女は助かった事に安堵もしていたのですから
しばらく進むと、先に襲ってきた魔獣を倒し、生き残った護衛達がこちらに向かってくるところでした
「王女は無事か!!?なぜ戻ってきた!!」
身を呈し王女の馬車を逃すために戦った護衛達は怒りの表情でしたが、馬車を守っていた護衛は
「理由はあとで話す……まずは急ぎ王都に向かう……」
とだけ静かに言うと、全員にその様に指揮しました
その顔は怒り苦しむ苦渋に満ちた表情で、この場を守った護衛達はそれ以上の事を今は聞くことができませんでした
残った騎兵は6人、傷付いた王家の馬車とともに王都に向かうのでした




