61 深緑竜の力 神さまの力
実在する事がわかった深緑竜
静まり返る王城謁見の間
そこで神さまは何を語るのか
61話 はじまります
深緑竜……。
遥か太古から、広大な深緑の森の頂点に君臨するとされているドラゴン
森の中心部、濃密な魔力の渦巻く場所に住むその竜は、巨大な体躯でその力は計り知れない
強力な魔法も操るが、最大の攻撃は天地を焼き尽くすと言われるドラゴンブレス
かつて領土を広げるために森を焼き尽くそうとした国をたった1体で滅亡させた、恐怖の対象であり信仰の対象でもある伝説のドラゴン
現在ではその存在は確認されていない……。
「しかし……いるのか。」
スミス王は絞り出すように呟きます
神さまは笑顔で答えます
「はい。います。大きいですよ。頭から尾まで30メートル以上ありますからね。」
「それは……この王都を襲ってくる可能性はあるのかね?」
スミス王は聞かずにはいられませんでした
神さまは即答しました
「森に手を出さない限り、それはないです。」
「なぜそう言い切れるのかね?」
神さまは説明します
「深緑竜様は今の均衡を好ましく思っています。なので人間が森を破壊しようとすれば容赦なく相手を滅ぼします。しかしその逆もあります。少し前の話になりますが、森にいた特別に巨大なワイバーンが街を攻撃しようと森の外に向かった事がありました。あればかなり危険な個体でした。」
初めて聞いた驚愕の内容に皆、息を呑みました
しかし神さまは笑って続けます
「でも深緑竜様がすぐに追いかけて、重力魔法で一瞬でペチャンコにしちゃいました。」
はい、ウソです
やったのは神様です
そして知らん顔で神さまは続けます
「このように森に大きな被害を及ぼす者も、街に大きな被害を及ぼす者も深緑竜は許しません。今の均衡を良しとしてますので。ただし生きる為の狩りには手出ししません。これはどちらも自分達が食べる為の闘いですから。」
ここまで話を聞いたスミス王は深く息を吐き、椅子に体重を預けました
「では深緑竜様は人間に敵意を持っている訳ではないのだな?」
神様はニコニコ肯定します
「実際に森に迷い込んだジロさん達も無事ですし、森に住んでいる獣人族やエルフ族も、深緑竜様と精霊様に守護されて村を作り、平和に暮らしていますからね。」
これにはノルディカさんも大きく頷いていました
スミス王も大きく頷き
「よくわかった。貴重な情報を聞かせてくれて助かる。」
と言ってくれました
「ところで……」
まだ何か聞きたいことがあるようです
「タイヨー殿は精霊様の護衛であると聞いたが、やはりかなりの手練れかね?もしよかったら少し実力を見せてはもらえないだろうか?」
神さま自身の話でした
神さまはそうですね……と少し考えてから
「それでは先程話に出た重力魔法を少しだけお見せしましょうか。深緑竜様ほどではありませんが私も一応使えますので。何か壊してもいいような頑強な盾とか鎧とかあればお借りできますか?」
そう言うと、しばらく兵士たちが動き回って1体のフルアーマーが立て掛けられました
フルアーマーの左手には分厚いタワーシールドが持たれています
神さまは壊して良いことを再度確認し力を使いました
「それではやりますね。『重力操作』」
一瞬でした
鎧と盾は何か見えない巨大な足で踏み潰されたかのようにペチャンコになってしまいました
鎧と盾だったものは、今は厚さ5ミリ程に薄く伸ばされた、ただの金属の板になってしまいました
それはあまりに一瞬で強力な圧力をかけられた為に赤黒く焼けて煙を出しています
神さまは何もなかったかのように言います
「こんな感じです。これでおよそ深緑竜様の1パーセントくらいの力でしょうか。」
目の前の光景に、誰もが手品でも見ている気分になりました
もっとも神さまの力は深緑竜とは比べ物にならないほど遥かに強いのですが
スミス王は神さまに言いました
「王国に仕える気はないかね……。」
神さまは笑顔で答えます
「私は森の守護者である精霊様に仕えていますので。」
「そうであったな。ではせめて友好の証に何かタイヨー殿にも渡したい。何か欲しいものはないかね。」
スミス王が言いました
これには宰相さんも驚いています
いえ、特には……と言いかけたところで神さまは思いました
「失礼ながら申し上げます。私はこれから見分を広めるために、人間の世界を見て回ろうと思っています。まずはこのバートン王国の各地を旅したいと思っています。旅するうえで何か役に立つ物がひとついただければ、とてもありがたく存じます。」
それを聞いてスミス王は言いました
「なるほど。それでは王都の住民証を渡そう。それは旅先での身分証明になり必需品だ。持っていて損はないだろう。後ほどジロ殿の褒美と一緒に渡すから受け取ってくれ。」
これは予想外に嬉しい物をもらいました
「ありがたく頂戴いたします。」
こうして謁見は終了しました




