55 ジロさんの危機
獣人の村での収穫祭は大成功でした
神さまの食べることへの努力も報われました
ところで行商人のジロさんは悩み事があるようですが……
55話 はじまります
バートン王国の商店街
ここには広い通りに面して様々なお店が所せましと並んでいます
飲食店、お食事処、喫茶店、青果店、食肉店、生鮮食品店、雑貨店……お店を紹介したらきりがありません
それほどここの商店街は栄えています
ただ元々は、広い道にポツポツとお店が建ち始め、それが次々と増えていった結果出来上がった場所
どこに何が売っているのかが、とても判り難くもあります
専門店街とか集合商業施設などができるのはまだまだ未来のお話
それはさておき、その商店街にジロさんの店舗兼自宅があります
行商人なので普段店舗部分は雑貨屋さんに管理もお願いして貸しています
しかし行商から帰って来た時は、各地の珍しい物を売り出すこともあって中々繁盛していました
またジロさんが店にいる時に他の街の特産品等を注文しておけば、買い付けてきてくれるのもこのお店の人気の秘密です
さてそのジロさん、2階の自宅で頭を抱えて唸っています
「どうしよう……」
深緑竜のウロコ
あまりにも珍しすぎる一品です
正直なところ、下の店舗で扱えるような品ではありません
とはいえ持ち続けているのも不安でしかありません
どうしたものか……
「いつまでウダウダ悩んでいるんだい!」
フリッチさんに言われてしまいます
「だってこんな大層なもの扱ったことないんだよ。どうしたらいいのかわかんないよ。」
ジロさん悩み疲れてます
「とりあえず商業組合にそれとなく相談してみたらどうだい?」
フリッチさんが提案しました
ジロさんも他に考えが浮かばなかったのでしょう
「そうだね。明日行ってみるか。」
翌日、ジロさんは商業組合に行きました
ジロさんの家からは少し離れていますが、商店街の中に商業組合の建物はあります
外観も中も、それはいかにも役場といった感じです
中に入って、いくつか並んでいる受付の窓口に向かいました
空いている窓口でジロさんは尋ねました
「すみません。商品の事で伺いたいことがありまして。」
すると窓口の女性が対応してくれました
「はい、どのような事でしょうか?」
「ええっと……なんと言えば……」
ジロさん、しどろもどろです
窓口の女性は不審に思いながら聞きます
「どうかしましたか?相談事では?」
ジロはビクッとなってしまいましたが、それでもなんとか話を切り出しました
「私のですね……そう、知り合いがですね、何でもドラゴンのウロコを手にしたそうで、それをどのように販売したらいいのか悩んでいるらしく……」
ジロさん、嘘をつけない実直な人です
受付の女性はジロさんをしばらくみると提案しました
「お客様の話ではないとなるとアドバイスぐらいしかできませんが、ドラゴンのウロコなど滅多に出回るものではないので組合のオークションに出してみるのはいかがでしょうか?」
「あ、それもそうですね。戻って相談してみます。ありがとうございました。」
ジロさんは足早に商業組合を出ていきました
受付の女性は変な人だなぁとは思いましたが、次のお客様が来たのですぐに頭を切り替えました
が、その話を聞いていた男がいました
「今の男……たしか行商人だったな。あの様子……何か大物を手に入れたようだな。」
男は黒い笑みを浮かべると、近くにいた仲間らしき男に何か話してから気配を消して後を追いました
ジロさんはコソコソと身を隠すように家に向かって歩いていきます
その後ろを男が追っていきます
何者かに後を付けられてると気が付いたジロさんは、思わず走り出しました
男はまだ追ってきます
ジロさんは細い脇道に逃げ込みました
男は気付かずに通り過ぎて行きました
ジロさんはしばらく身を潜めた後、恐る恐る元の道に戻りました
するとそこでは、先ほどの男の他に仲間らしき男がひとり増えてこちらを伺っていました
ジロさんは「ヒィッ」と小さな悲鳴を上げて、また細い路地に逃げ込みました
するとその先には2人の男が道を塞いでました
男達はナイフを手に持ちました
ジロさん、絶体絶命のピンチです




